ギルバート・山岡 朝日新聞との対決全記録 (2018)

2022.03.28

 ケント・ギルバートと、山岡鉄秀さんは、2018年7月6日に、賛同者10411名の署名とともに、

朝日新聞英語版の『慰安婦』印象操作中止を求める有志の会」という名前で、

朝日新聞に4項目の申入れ書を出しました。

 朝日新聞は、2018年7月23日に、広報部長 後田竜衛の名で、回答しました。

 本書は、その巻末に、申入れ書や回答書の全文を、資料として掲載しています。

 朝日新聞の回答は、4項目に対する回答の形をとっていて、資料として明解なので、その部分を引用します。

1. (「物理的な強制で性行為を強いられた」という印象を受ける forced to provide sex という表現を使用しないこと) について

 ●記事を書く際は事実関係を十分に調べたうえで、ふさわしい表現を選ぶよう心がけています。

記事でどのような表現を使うかについては、個々の状況や文脈に応じて、その都度、判断してまいりたいと考えています。

●今回ご指摘の英語表現に似た「forced to provide sexual services」という表現は、

「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)のサイト

「デジタル記念館 慰安婦問題とア゛ア女性基金」の英語版ページ

( http://www.awf.or.jp/e1/facts-00.html ) の冒頭で使われています。

日本語版のページでは「いわゆる『従軍慰安婦』とは、かつての戦争の時代に、

一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たちのことです」

と定義されています。( http://www.awf.or.jp/1/facts-00.html

(中略)

●1993年8月4日に発表された河野官房長官談話では、「慰安婦の募集については、

軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、

本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、

官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。

また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」

と記されています。( https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html )

●菅義偉官房長官は2014年6月20日の記者会見で「河野談話作成過程に関する検証作業」について述べた際、

「河野談話を見直さない、平成19年に閣議決定した政府答弁書であるとおり、

これを継承するという政府の立場はなんら変わりありません」と発言しています。

( https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201406/20_p.html )

●慰安所の生活で「強制的な状況」があったとする記述を含む河野談話の内容は、

現在の安倍政権まで日本政府が継承してきた立場といえます。

朝日新聞が慰安婦問題を報じる際は、こうた日本政府の立場も踏まえつつ、

今後もさまざまな立場からの視点や意見に耳を傾け、多角的な報道をめざしていく所存です。

 

2. (吉田証言が虚偽であり、記事を撤回した事実を改めて英文で告知すること) について

●朝日新聞が吉田清治氏の証言を虚偽と判断して記事を取り消したことについて、

新聞紙面では2014年8月5日付朝刊の特集記事で伝えました。

「朝日新聞デジタル」では、現在も、下記のURLで紙面を掲示しています。

( http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014080516.pdf )

●英語版の紙面は現在発行していませんが、2014年8月5日付記事の英語版は

「朝日新聞デジタル」で2014年8月22日に掲載し、現在も下記のURLで全文閲覧できまか。

( https://www.asahi.com/articles/SDI201408213563.html )

●また、「朝日新聞による慰安婦報道を検証する第三者委員会報告」の要約版の英訳を、

国連本部、同広報センター、米国議会、在日米国大使館、韓国大使館、米国グレンデール市などに送付しています。

 

3. (forced to provide sex が軍隊による物理的強制連行や性奴隷化を意味しないと主張するなら、

具体的にこの表現が何を意味するのか明確に説明すること) について

●慰安婦とされた女性の訴えは人によって、あるいは時期や場所、戦況によって大きなばらつきがあり、

個々の状況全体を総合して具体的に説明するのは困難です。

「1について」の回答で紹介した「河野談話」で「強制的な状況」への言及があり、

また「アジア女性基金」サイトの説明で「性的な奉仕を強いられた」との説明がありました。

また中国や東南アジアなど、戦時中に日本の占領下にあった地域で、

日本軍の一部部隊が現地女性などを強制的に連行し、慰安婦にしたことを示す供述や調査結果が、

戦犯裁判記録や連合国の政府調査報告などで明らかになっていることも踏まえています。

●また、「forced to provide sex」という表現について、英語ネイティブスピーカーが読めば、

「軍隊による物理的な強制で性行為を強いられた」という印象を受けると指摘されていますが、

当該表現は「意に反して性行為をさせられた」という意味です。

 

4. (今後慰安婦の説明的表現を追加するなら、comfort woman who worked

in brothels regulated by the military authorities などの表現を使用すること) について

●記事を書くたびに、国内外のさまざまな立場の意見や歴史研究の蓄積などを考慮しながら、

人権に配慮し、個々の状況や文脈に応じて、その都度ふさわしい表現を使うように努めてまいりたいと考えています。

 

●以上から、英語表現に関する申し入れに応じることはできません。

 

 さて、朝日新聞は、申入れ1の回答で、アジア女性基金での説明文章を根拠の一つにしていますが、

これは予想されていましたので、申し入れ書に、以下のコメントが書かれていました。

また、朝日新聞社は、類似した表現がアジア女性基金のサイトにて使用されていることを挙げて

当該表現の使用を肯定していますが、外務省は国会にて杉田水脈衆議院議員の質問に対し、

鯰参事官が「外務省の見解は必ずしもアジア女性基金の見解と同一ではなく、

国連女子差別撤廃委員会における、慰安婦強制連行、性奴隷化を否定する

杉山審議官(当時)の発言を公式見解とする」旨を明言しており (平成30年3月28日)、

アジア女性基金サイトの表現は御社の表現を肯定する根拠となりません。

 しかし、朝日は、このコメントを無視したようです。

 参考までに、杉山審議官の発言は、以下のサイトで、読むことができます。

   https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/rp/page24_000733.html

 重要部分を再録すると、

●書面でも回答したとおり、日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治・外交問題化した1990年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行ったが、日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるものはなかった

「慰安婦が強制連行された」という見方が広く流布された原因は、1983年、故人になった吉田清治氏が、「私の戦争犯罪」という本の中で、吉田清治氏自らが、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」という虚偽の事実を捏造して発表したためである。

この本の内容は、当時、大手の新聞社の一つである朝日新聞により、事実であるかのように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えた。

しかし、当該書物の内容は、後に、複数の研究者により、完全に想像の産物であったことが既に証明されている。

●その証拠に、朝日新聞自身も、2014年8月5日及び6日を含め、その後、9月にも、累次にわたり記事を掲載し、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪している

 これが、日本政府の公式見解です。

 有志の会は、日本政府の公式見解の指摘を含め、2018年7月26日2回目の申入れ書を出しましたが、

2018年8月3日付の広報部長後田さんからの回答は、以下の通りでした。

今回いただいた質問には、基本的に前回お送りした回答で意を尽くしていると考えております。

 

 有志の会の3回目の申入れ書は、2018年3月22日付です。一つ目の質問は、英文記事の

Comfort women refers to those who were forced to provide sex to wartime Japanese troops.

Many were from the Korean Peninsula, a Japanese colony from 1910 to 1945.

という文章の、manycolony に関するものです。

many を使う根拠についての回答は

 慰安婦の総数や民族、人種別の人数を示す公式記録はなく、研究者の推計にはさまざまな数字があります。

アジア女性基金のサイトには「各種の資料を総合して言えることは、朝鮮人慰安婦は多かったが、

絶対的多数を占めるにはいたっていないということです。日本人慰安婦も多かったといえます」と書かれています。

でした。あまり、根拠はないようです。

もし、「多くは、何々でした」という文章を書いて、多数ではないではないかと反論を受けた場合には、

朝日新聞のこの記事を示して、免責を主張しましょう。

 また、朝鮮は、植民地かどうかについては、回答項目に含めなかったので、回答はないのですが、

試験で、朝鮮を植民地と解答して、×をもらったら、朝日新聞のこの記事に、colonyと書いてあったと主張しましょう。

素晴らしいですね。 

 しかし、2022年の時点で、上記英文記事の公開は、終了したようです。

Diplomacy alone cannot resolve ‘comfort women’ issue, says Moon
https://www.asahi.com/ajw/articles/AJ201808150038.html

 関連情報は、下記サイトをご覧ください。

2019.08.17
驚愕:朝日新聞英語版は今も悪意の誤報を出し続けている
https://agora-web.jp/archives/2040982.html

 

 申入れの2つ目は、朝日新聞の謝罪の英文記事に、noindex, nofollow, noarchive 等のタグが付けられていて、

検索にひっかからないように設定していた問題です。

 この問題は、正確に説明するのは難しいので、ここでは深入りしません。

以下の2つの産経新聞の記事を紹介するに留めます。

2018.08.24
朝日新聞、慰安婦報道取り下げ英文記事で検索回避の設定 指摘受け解除、「作業漏れ」と説明
https://www.sankei.com/article/20180824-2M64C6QOLJIGRDUB6NBSU6H36Q/

2018.09.09
朝日、日本語版の慰安婦ネット記事も検索回避 後で設定変更「操作誤る」
https://www.sankei.com/article/20180909-TIEPAU3OUBMSDLYLKJN36ZWWIY/

 

 山岡さんの 山岡鉄秀 日本よもう誤るな! の紹介記事で、、朝日イブニングニュースについて、

ふれましたが、こちらの本では、ジャパンタイムズ に関する記事があります。

少し、引用します。

ケント 朝日系列の英字新聞「ジャパンタイムズ」も、2016年1月18日の自社の記事で

「性奴隷(sex slaves) との表現は妥当である」と正式に明記していました。

「第二次世界大戦前、および大戦中に日本の軍隊に強制的に性行為を行なわされた女性たちのことを

『性奴隷』と表現するのが妥当だというのがジャパンタイムズの方針である」と明言していたのです。

これに対し、心ある日本の方々が抗議を申し入れるなどしていましたが、全く改まらなかった。

2017年6月下旬頃に売却されてオーナーが変わってからも、

慰安婦を性奴隷と表現してきたジャパンタイムズですが、

2018年11月30日付の紙面で、大きな方向転換を公表しました。

 

山岡 「編集部からのお知らせ」と題して、次のように発表したのです。

「過去、ジャパンタイムズは誤解を招く可能性がある表現を用いてきました。

第二次世界大戦前と戦中に日本企業に雇用された労働者について

『強制労働』という言葉が使われていました。

しかしながら、労働環境や、雇用の経緯が多様である為、

今後はそれらの労働者を『戦時労働者』と表現することにします。同様に、

『慰安婦』は、『第二次大戦前と戦中に、日本軍に性行為を強要されていた女性達』と表現していましたが、

慰安婦の経験は戦争中、地域によって大きく異なるため、本日より、

『慰安婦』を『自ら望まなかった者も含み、戦時下の娼館で日本兵相手に

性行為を提供していた女性達』と表現することにします。

 

 ジャパンタイムズは、2020年3月20日に、また意見を変えました。

The Japan Times: To our readers (2020)
https://think0298.stars.ne.jp/Japan_Times_to_our_readers.html

を、ご参照ください。

 

 

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