全日本漢詩連盟 

2020.4.18

 全日本漢詩連盟は、我が国の漢詩愛好家のための団体で、平成15年に発足しました。

会長は、石川忠久さんで、会員数は、平成21年1月1日時点で、1671名でした。

 ホームページは、http://zenkanren.sakura.ne.jp/ にあります。

 さて、漢詩を作るには、それなりの作法があります。

 連盟のホームページ内にも、その作法の解説があり、

初級者編は、連盟理事の岡崎満義さんが、神奈川新聞に連載した「漢詩への誘い」を用いています。

しかし、新聞記事の切り抜き画像を張り付けていて、極めて、読みにくい作りになっていますので、

その内容を、以下に、表示しなおすことにしました。

連盟の許可は、とっていませんので、引用等される場合は、連盟のオリジナル頁を

ご参照ください。  http://zenkanren.sakura.ne.jp/newpage71.html

漢詩の作り方

 漢和辞典のほか、太刀掛重男著「詩語完備 だれにでもできる漢詩の作り方」(2000円、有隣堂ルミネ横浜店で買えます)が必須。

後者は、平字と仄字の印付きで2字と3字の熟語を季節や事象別に2万数千語収録。

七言絶句は各句が2・2・3字の言葉から成るので、自分のイメージに合わせて、一定のルールに従って、パズル感覚で言葉を組み合わせていくのが第一歩です。

まず、1、2、4句の7字目の韻を踏みましょう (掲出詩は、成・精・明が「八庚」韻です)。

掲出詩1 悼丸谷才一先生 (丸谷才一先生を悼む) 岡崎 満義 作

●●○○●●◎
博学奇才意豁然 博学奇才、意豁然たり
博学奇才で、気持ちは豁然である(広々としている)

○○○●●○◎
風流三昧筆如椽 風流三昧、筆椽の如し
風流三昧で、筆は、椽のように堂々としている

○○●●○○●
文宋最愛湾星隊 文宋 最も愛す湾星隊
文宋先生の最も愛す湾星隊(ベイスターズ)

○●○○●●◎
金港薔薇捧墓前 金港の薔薇 墓前に捧げん
金港(横浜)の薔薇を、墓前に捧げましょう

  参照 ブルーライト漢詩5

漢詩の作り方

 平仄(ひょうそく)の整え方を説明します(以下、平字を○、仄字を●と表示)。

ヽ洞腓裡音目と4字目が○●の組み合わせとなる (二四不同)

■音目と6字目が○○か●●になる (二六対)

4字目の○は●で挟まれてはいけない (孤平不可)

ぃ・3・5字目は○●どちらでもいい (一三五不論)。

掲出詩で確かめてください。

なお、◎の字は平字の中の「先」韻です (「1・2・4句の7字目は韻を踏む」ルールでしたね)。

漢詩豆知識

 すべて漢字は、平字(ひょうじ)と仄字(そくじ)に分類される。

平は高く平らかな音、仄は下がったり、はねたりする音。

この区別は漢和辞典 (かなり分厚くてしっかりしたもの) で調べるしかない。

平字はさらに30のグループに分かれており、同一グループの字を使って初めて「韻を踏んだ」ことになる。

中国人は詩をまず耳で楽しんだ。ちなみに上掲詩の香・傍・房は陽韻。

漢詩の作り方

 前回紹介した「二四不同」「二六対」「一三五不論」「孤平不可」のほかにも、漢詩の決まり事はあります。

使う言葉が2・2・3文字から成ることもそのひとつ。

さらに「下三連は除く」という原則があり、下3字が〇〇〇または●●●は不可です。

七言絶句を作る場合、結句の下3字 (掲出詩では恃先生)から作るか、

起句の上2字 (扶桑) から作るかすることが多いですが、あとは上述のルールを適用し、

必然的に詩の形 (各句の平仄の配置) が決まります。

掲出詩2  次海江田万里先生瑤韻(海江田万里先生の瑤韻に次す) 岡崎満義 作

〇〇〇●●〇◎
扶桑天晦朔風鳴 扶桑天晦(くら)く朔風鳴る
扶桑(日本)、天は暗く、朔風(北風)が鳴る

〇●〇〇●●◎
東北深憂興未成 東北の深憂興未だ成らず
東北の深憂、復興は未だ成らず

〇●●〇〇●●
南海近来多外患 南海近来、外患多し
南海(地震)は近く来る 外患も多い

●〇〇●●〇◎
済民経世恃先生 済民経世 先生に恃まん
経世済民を、先生に頼もう

   参照 ブルーライト漢詩6

漢詩の作り方

 漢詩の平仄(ひょうそく)の並べ方には2タイプある。

起句(1句目。以下、順に承句・転句・結句)の2字目を○とするのが「平起句」。

二六対、二四不同、孤平不可、一三五不論」のルールを適用すると、

△〇△●●〇〇/△●△〇△●〇/△●△〇〇●●/△〇△●●〇〇

(△は平仄どちらでも可)。

今回は、大魔神(●〇〇)を結句の下3字に使いたかったので「平起式」。

同じ韻の秘球人(●〇〇)、真絶倫(〇●〇)を考え、上4字の平仄も案配した。

「仄起式」は起句2字目が仄字で、残りの平仄も反対となる。

掲出詩3 大魔神佐々木主浩投手に贈る 岡崎満義 作

〇〇●●●〇◎
懸河百尺秘球人 懸河百尺 秘球の人  懸河百尺=落差の大きい

●●〇〇〇●◎
躍動身躯真絶倫 躍動する身躯は真に絶倫たり

●●〇〇〇●●
緬想横浜優勝日 緬(はる)かに想う横浜優勝の日

〇〇●●
熱狂民祀大魔神 熱狂する民 大魔神を祀る

  参照 ブルーライト漢詩7

漢詩の作り方

 今回は結句の下3字に「温雅声」=平仄は●◎=を使いたかったので、

逆算して起句2字目が●の仄起式の配置になった。

七言絶句は起承転結をやかましくいわれる。

起承転結の好例として挙げられる俗謡が

「京都三条の糸屋の娘/姉は18、妹は16/諸国大名は弓矢で殺す/糸屋の娘は目で殺す」。

三段跳びでいえば助走とホップが起・承、ステップとジャンプが転・結。

転句で場面が大きく転換して結句に着地するわけだが、実際の詩作では"着地点" (結句の下3字)を先に詠むことが多い。

掲出詩4 中山清先生を憶(おも)う  岡崎満義 作

●●〇〇〇●◎
博学多才前半生 博学多才の前半生

〇〇●●〇◎
近年金港盛詩名 近年、金港 詩名 盛んなり

〇〇〇〇〇
春風駘蕩平生態 春風 駘蕩し 平生の態

●●〇〇〇●◎
耳底猶留温雅声 耳底 猶(なお) 留む 温雅の声

    参照 ブルーライト漢詩8

漢詩の作り方Α  参照 ブルーライト漢詩9

 漢詩を作るとき気をつけなければならないのは、日本でだけ通用する漢字熟語をうっかり使ってしまうことだ。

これを「和習=和臭」という。例えば「人間」。日本では「ヒト」の意だが、中国では「俗世間」。

仲間が最近調べてくれた和習例を挙げる (後半が中国での意味)。

故人 (死んだ人/旧友)、野望 (大それた望み/遠く野づらを眺める)、仰天 (びっくりする/天を仰ぐ)・・・。

上掲詩の「民主・人権」も李白杜甫時代にはなく和習的な言葉だが、現代中国でも使われているので、使った。

夏目漱石の漢詩にも和習があるといわれるが、中国人には評価が高いという。

漢詩の作り方А  参照 ブルーライト漢詩10

 漢詩のルールの一つに、詩の中に同じ字を使わない (同字不出) というのがある。

七言絶句 は28字、ここで同字を使うのは もったいない、ということだ。

上掲詩でいえば、ハーモニカを 吹くのだから「一吹」「三吹」 でもいいはずだが、ルールに従 い「弄」と「吹」にした。

しか し同字不出は割とゆるやかで、王維の「鹿柴」では「空山不見人/但聞人語響」。

李白の有名な「山中にて幽人と対酌」は「両人対酌山花開/一杯一杯復一杯」、実に豪快だ。

ルールを破っても、その理由が納得できれ ば許されるようだ。

漢詩の作り方    参照 ブルーライト漢詩11

 漢詩の平仄(ひょうそく)ルールの「孤平不可」。

4字目が○ならその前後を● (○は平字、●は仄字) にしてはいけない、

文字通り「平字を孤立させてはいけない」という意味だ。

上掲詩の起句で、4字目の敲は○。

「閑敲」の閑は静と同じ意味だが、閑は○、静は●。

静を使うと「静敲一」●○●となり、敲が孤平になってしまうから、静は使えない。

どうしても静を使いたいのであれば、5字目の一●を難○とすれば、●○○となり孤平は免れる。

平仄のルールの中で、この「孤平不可」が最もうっかり間違えやすい。

漢詩の作り方    参照 ブルーライト漢詩12

 漢詩の平仄(ひょうそく)のルールは厳しい。

7字目の韻字グループを考えているうちにうっかり「下三連(各句の最後の3文字の平仄が○か●でそろう)は不可」を失念することが多い(○は平声、●は仄声)。

例えば上掲詩の下3字は起句●○○、承句● ●○、転句○●●、結句●○○。

作詩ではまず結句の下3字を決めると作りやすいとい われる。

 今回は、結句の下3字「水潺潺」は酒井さんの句 から借りたので、「潺」と同 じ「先韻」の中から「妍」と「川」を探し出した。

漢詩の作り方    参照  ブルーライト漢詩13

 大正天皇の漢詩は風雅でユーモアがあり、詩的センスも抜群で、少しでもあや かりたいと思う。

今回は清張先生の「腰」を押したことをぜひうたいたかったので、韻は腰の蕭韻で決まり。 ドイツのバイエルン州はビールとワインの村が多く、 野山にブドウ畑が広がっていた。

同じ蕭韻の「遥でそれを表そう。詠みたい風景を思い浮かべながら、使うと決めた韻字の下3字の 言葉を詩語集から選び出す。

「遥」には「一天遥」「一 水遥」などの例があったので、「田野遥」と置き換えた。

漢詩の作り方    参照  ブルーライト漢詩14

 漢詩作りの要諦は「多読多作多商量(考える)」といわれる。

多商量は「よく推敲(すいこう)する」ということだ。

考えすぎ、いじりすぎて詩が悪くなることもあるが、推敲は欠かせない。

上掲詩は最初 「百花丘上海風涼/霧笛橋辺 聳学堂/金港雅茵新進集/忘年相語鼓詩腸」だった。

「学堂」と「雅茵」がダブりに思 えていろいろ考えるうちに、涼・堂・腸の陽韻を変えたらとひらめいた。

詩語集で「毎回新」と「放詩神」を見つけ、新・親・神の真韻で作り替えた。よくなったか、どうか…。

漢詩の作り方    参照  ブルーライト漢詩15

 漢詩作りを独学で行うのはなかなか難しい。

できれば漢詩教室で仲間とともに先生について習うのが一番だ。

「一字の師」という言葉がある。

七言絶句で28字中の1字を直されただけで、見違えるような詩になることがある。

上掲詩で、転句は最初『絶技命名其白井』だったが窪寺貫道先生に直された。

「名」と「其」しか残っていない。

私にとって一字の師どころか「五字の師」である。

われわれ生徒の提出する作品には、しばしば 「意不通」「アア、ソウデスカ!!」「単なる説明!」と朱が入って返される。

漢詩作りは奥深い。

漢詩の作り方    参照  ブルーライト漢詩16

 「漢詩は転・結句から作るのがいい」と言われるが、上掲詩の場合、まず承句ができた。

正月の箱根駅伝の往路3区(と復路8区)は湘南南海岸沿いの道路で、海はサーファーたちでにぎわう。

たすきを掛けたランナーと黒いウエットスーツのサーファー、2種の若者を詠もうとおもったのだ。

両者を「走路人」「滑瀾人」とし、あえて同字重出で「人」を使ったので、韻は真韻で決まり。

”新年の富士山” から「新」を起句に、”元気 な青春”から「春」を結句に置き、韻を整えた。

漢詩の作り方    参照  ブルーライト漢詩17

 シュートが決まると5人が輪になりペコリと頭を下げるパフォーマンスで人気の「スマイルジャパン」。

最も地味なゴールキーパーを詩にしてみたいと思っ た。

鎧兜(よろいかぶと) と見まがう約20々舛發遼俵颪鮹紊韻秦手が、マスクを 外すとかれんな乙女の顔になるのが何とも面白い。

 承句の「風」は、押韻し た「雄」「躬」「童」と向じ 東韻だ。

脚韻以外の場所で 同じ韻を使うのは「冒韻」 として禁じられていたが、最近はあまり厳しくいわな くてもよい、というルールになった。

漢詩の作り方    参照  ブルーライト漢詩18

 漢詩の世界には今、3種類の字がある。当用漢字と旧字、それに中国の簡体字だ。

例えぱ上掲詩で使った「海辺」のは当用漢字、が旧字、が中国簡体字だ。

全日本漢詩連盟の漢詩大会では、詩は旧字、読み下し文では当用漢字を使う決まりだが

「これから漢詩を始めようという若い人のため、すべて当用漢字を」 という声もでている。

現在中国で刊行される詩集は、李白も杜甫もすべて横書きの簡体字。

雲→云、陰→阴 … など、実に読みにくい。

 

 

     

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