吉本隆明 日本近代文学の名作 (2001,2008)

2026.11.05

 この本は、吉本隆明さん(1924-2012)が、2000年4月から2001年3月まで週1回、

毎日新聞文化面に連載した「吉本隆明が読む近代日本の名作」に基づいたものです。

毎日新聞の重里徹也さんと、大井浩一の二人が月二回ほど本駒込のご自宅にお邪魔し、

うかがったお話しをもとに構成するという「聞き書き」の方式をとられたとのことです。

 選ばれた作家と作品は、夏目漱石 こころ、高村光太郎 道程、森鴎外 高瀬舟、

芥川龍之介 玄鶴山房、宮沢賢治 銀河鉄道の夜、江戸川乱歩 陰獣、横光利一 機械、

川端康成 雪国、保田與重郎 日本の橋、吉川英治 宮本武蔵、中野重治 歌のわかれ、

谷崎潤一郎 細雪、小林秀雄 無常といふ事、坂口安吾 白痴、太宰治 斜陽、

柳田國男 海上の道、折口信夫 日琉語族論、中原中也 在りし日の歌、

荻原朔太郎 月に吠える、岡本かの子 花は勁し、志賀直哉 暗夜行路、田山花袋 田舎教師、

島崎藤村 春、二葉亭四迷 平凡の24名24作品です。

 「はじめに」で、吉本さんが、「作の個々の作品と作者は両氏の選択されたもので、

わたしのわがままで落としていただいた項目は一つある。」と書かれていて、

落としたのは何かと気になったのですが、構成者後記で、重里さんが、

「どんな質問をしても応える人。それが、私が吉本隆明さんに抱いていた印象だった。

前に福岡で、講演の題目は都市論だったが、二次会では、明石家さんまから開高健のことまで、さまざまに質問した。

今回も、織田作之助、司馬遼太郎、小川国夫について繰り返し尋ねたのをはじめ、

話題は政治家論から吉本さんの生い立ち、日本の歴史から海外の思想家たち、関西と関東の芸人の違いにまで及んだ。

司馬さんに関しては『空海の風景』を読んでくださり、感想をうかがうこともできた。

これまで論じたことのない吉川英治や江戸川乱歩を対象にすることも、快く応じて下さった。」

と語っていて、落とした項目とは、司馬遼太郎の空海の風景かもしれないと思いました。

 「聞き書き」方式の出来について、吉本さんは、

「これほど啓蒙量の多い文章を数枚で書き、しかも自分らしさを失わないという課題に挑んでみたのは初めてで随分勉強になった。

成功したとは言えないとしても、この程度に出来たのは両氏の協力と労力の賜だと思う。」

と評価されています。

 

 最初の夏目漱石のところで、冒頭が

明治以降の近代文学の中で、夏目漱石と森鴎外は飛び抜けた、超一流の文学者という感じがする。

資質も作品の傾向も違うが、世紀に一度とか二度しか出てこない作家だ。

という宣言で開始します。

 私も、この二大巨頭が大好きなので、この宣言を、快く聴きました。

 

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