山岡鉄秀 バーサス・チャイナ (2021) 

2022.02.21

 副題は、第三次世界大戦は、すでに始まっている! です。

表表紙裏には、さらに強烈な言葉が踊っています。

このまま座して中国の自治区となることを許すのか、
それとも立ち上がって自ら戦う道を選ぶのか、
私たち日本人の”覚悟”が今、問われている!

 戦争の相手は、世界覇権を目指す中国です。

中国は、建国100周年の2019年までに、経済的にも、軍事的にも、アメリカを追い越し、

世界のナンバー1になろうとしています。このまま、何も対策を取らないと、

中国は、確実に世界一の大国になって、世界に号令をかけようとしています。

はじめに から、少し引用します。

 最近になってやっと、中国の脅威が一般国民の間でも認識されるようになってきたと感じます。

何しろ、目の前で香港の民主主義が無慈悲に粉砕され、

ウイグル人などの非漢人民族(彼らは必ずしも小数民族ではない)が強制収容所に送られ、

思想改造されたあげくに強制労働に従事させられている事実が

白日のもとに晒されるに至って、世界も無視できなくなりました。

平和ボケしきった日本人の耳にも、警鐘の鐘が鳴るようになりました。

しかし、まだまだ十分ではありません。日本人の多くは、これらを自分の問題として捉えていません。

(中略)

いつの間にか経済力と軍事力を蓄えて覇権国となった中国の脅威に世界が気づいたとき、

中国はすでに国境内部に深く入り込んでいました。

それは、人体に例えるならば、外傷というよりも、内臓をじわじわと蝕むガン細胞のような脅威だったのです。

つまり、中国は内なる「目に見えぬ」敵だったのです。

(中略)

 中国を経済的利益の観点からしか見られない経済人、特に日本の企業人たちは、

人権問題に背中を向けてでも利益を優先することに恥じない傾向があります。

(中略)

 事実上、我々はすでに第三次世界大戦に突入しています。

しかし、今回の21世紀の戦争には大きな、そして極めて危険な特徴があります。

それは、いつ始まっていつ終わるのか、不明確な戦争だということです。

(中略)

 日本はこの、戦後最大の危機を乗り越えることができるでしょうか?

それはひとえに、国民の覚醒にかかっています。

国民が危機に目覚め、危機の本質を理解し、政治家や官僚を動かしていかねばなりません。

受け身の態度でいれば、完全に手遅れになってしまいます。

 本書は、そのような危機感に駆られて、日ごろ特に国際情勢や国際政治に関心を持っていない方や、

高校生や大学生にも読んでもらいたいという願いを込めて上梓されました。

ぜひ、ご一読の上、周囲の方々にもお勧めいただき、

今そこにある国家的危機に対する国民的認識を高めていただけましたら幸甚です。

それが、この日本という素晴らしい国を守り、子孫に残していくために必要不可欠で、

かつ急を要することなのです。

 日本の企業のなかには、中国の脅威に気づいたけれど、すでに突っ込んた足を抜くことができずにいます。

これは、産業の転換期に、現在の形態でまだ利益をあげている企業が、新しい形態に乗り換えることができず、

結局、新しく参入してきた後発の企業に市場を奪われてしまうケースによく似ています。

 山岡さんは、211頁で、こんな例を紹介しています。

 2012年12月、青山議員は再登板が決まったばかりの安倍さんとレストランで待ち合わせをした。

安倍さんはめずらしく遅れてきて、それもめちゃくちゃ怒っていた。

「どうしたんですか?」と聞いたら「さっき経団連の会長と会ったとき、

『あなたは第一次安倍政権のときのように、中国に厳しいことを言っちゃ駄目だ。

二度とああいうことを言わないと、中国の言うことを聞くというのが、

再登板の安倍政権の支持の条件だ』と言われた」 と。

 このときの経団連会長は、住友化学の会長だった、故・米倉弘昌です。

ウィキペディアによれば「中日友好使者称号(2015年5月)、大連市名誉市民称号(2012年9月)、

北京大学名誉博士号(2014年7月)とあります。

 彼は、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化と、中国における暴力的な反日活動について、

次のように発言しています。

「経済界として困惑している。日本サイドの行動で引き起こされたことは非常に遺憾だ」(時事通信社2012年10月9日)

 このように、完全に中国を擁護する発言をしています。

 このような親中派経済界のドンたちの圧力に、安倍首相も抗しきれなかったようです。

 政治も、同様です。193頁の記事です。

 1989年6月4日の天安門広場における虐殺事件。民主化を求める学生たちを、人民解放軍の戦車がひき殺しました。

そして、国際社会で孤立し、窮地におちいった中国に救いの手を差し伸べたのが、日本でした。

(中略)

 先日、時事通信社が、秘密指定を解除された当時の外交文書を入手して、そこに書かれていたことを報道しました。
(「対中国『人権より大局重視』 民主化弾圧も『温かく見守る』−天安門事件外交文書」 JIJICOM, 2020年9月20日)

 そこにはなんと、日本は西側諸国による対中共同制裁に反対し、

中国を「息長く、かつ、できるだけ温かい目で見守っていく」と記してあったのでした。

 記事には 「事件5日後の6月9日、北京の日本大使館は外相宛の大至急電報で

『諸外国の対中圧力』は『逆効果となり(中国は)ますますその対外態度を硬直化する危険がある』と指摘。

『中国政府のせん動により、国民の間に排外思想が広がる可能性すら考えられる』と意見具申した」とあります。

(中略)

「同22日に作成された極秘文書『わが国の今後の対中政策』には、

『わが国が有する価値観(民主・人権)』より『長期的・大局的見地』を重視し、中国の改革・開放政策を支持すべきだと明記。

その上で『今次事態の衝撃がなるべく小さくなるように対処』するとともに、

『西側が一致して対中非難等を行なうことにより中国を孤立化』することは

『得策ではない』と基本的考えを記していた」

 なんと、民主主義や人権は後回しでよい、と明言しているのです。

明確に、自国民を戦車でひき殺す独裁国家への支持を打ち出していました。

 そして、2018年10月に安倍首相が訪中して、習近平国家主席と首脳会談を開くのですが、

山岡さんは、これは大失敗だと言って、次のように語ります。161頁

 日本政府がこのとき中国政府と合意した通貨スワップの再開について、

外務省と日銀は「日本企業支援のため」と説明していました。

なぜ、5年間凍結されていたスワップを再開して、日本企業を支援する必要があったのでしょうか?

 それは、日本企業が「今から中国企業と一緒になって一帯一路で金儲けしたい。

でも、不安だから政府がバックアップしてねということです。

一帯一路が世界中で頓挫しているから、日本がテイクオーバー(奪取)してやろう、というのではなくて、

中国企業の下請けになって金を稼ごうということです。

決済は元だから、万が一、元が底をついたら日銀から供給してもらうというわけです。

 この場合、日銀は元の調達のために、中国の通過当局に円を差し出しますから、

実質的には米ドルを供給するのと同じです。

最高3兆4000億円といえば、やっと停止することになった、40年間にわたる対中ODAに匹敵する金額です。

 トランプ政権が「いまつぶさないとやられる」とダメージ覚悟で中国との貿易戦争を開始し、

世界中で一帯一路の帝国主義的正確が明らかになって非難が沸き起こっている最中に、

日本がこんなことをするわけですから、当然、世界を驚かせました。

 しかし、当時の中西経団連会長以下500人あまりの経済人は、安倍首相に同行して、

新たな商談を結ぶことに嬉々としていました。

 そして、2019年になって、習近平国家主席を国賓として日本に招くという話がもちあがるのですが、

山岡さんは、習近平主席を天皇陛下が笑顔で迎えるという写真がとられたら、万事休すとの考えから、

安倍首相に、絶対反対の書簡を送り、その内容が、本書に紹介されています。

 幸い、2021年4月に新型コロナの第四波が日本を襲い、習近平国家主席の来日は延期になりました。

 山岡さんは、以下のように語ります。

 日本政府は新型コロナの感染が拡大中にもかかわらず、

ぎりぎりまで習近平国賓来日を実現しようとしていました。

その結果、中国からの全面入国禁止もなかなか実施しませんでした。

ある国会議員から聞いた話では、自民党内では「早く中国からの入国を全面的に止めろ!」

という声が多かったのですが、執行部が応じず、議事録に書くことすら拒否されたそうです。

 

 もう1ヶ所、引用します。209頁

 中国では連日のように、反日映画がテレビで放映されています。

日本軍が寺院に押し入り、尼さんたちを強姦して殺害し、鍋料理にしておいしそうに食べる、

などというシーンが、繰り返し出てくるとのことです。

まず、こうしたことをやめさせなければなりません。

 

 日本政府は、以下のように要求すべきなのです。

「尖閣諸島への侵入をやめてください。また、国民への反日教育をやめてください。

海外で活動する反日プロパガンダ団体を解散させてください。

それなくして日中友好は成り立ちません」

 

 

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