山本弘 創作講座 料理を作るように小説を書こう (2021) 

2022.10.24

 この本については、すでに、本が好き! に、書評を書きました。

   『創作講座 料理を作るように小説を書こう』の感想、レビュー(ゆっくり考えるさんの書評)【本が好き!】 (honzuki.jp)

 ここでは、別のテーマを取り上げます。

 215頁に、「どんな小説を書けば売れるんでしょうか?」 という問いに、「分かりません」と答えています。

その理由を説明している箇所を、少し引用します。

 それを示すいい例が、「ハリー・ポッター」シリーズです。

ご存じのように、第一作『ハリー・ポッターと賢者の石』以来、全世界でシリーズが5億冊も売れたという、ウルトラ大ベストセラーです。

 この小説はもともと、シングルマザーのJ・K・ローリングさんが、貧しい中、生活保護を受けて子育てを続けながら、コーヒーショップの一画でこつこつと書き続けていたものです。

当時のローリングさんは貧しさに苦しみ、心労のあまり鬱病になって、自殺も考えたことがあるそうです。

 海外では、作家は著作権エージェント(代理人)と契約し、エージェントが出版社への売りこみをするのが一般的です。

1995年、ローリングさんは完成した『ハリー・ポッターと賢者の石』の原稿を著作権代理事務所に送りました。

一軒目は断られ、二軒目のクリストファー・リトル著作権代理事務所と契約を結びました。

この会社は実は児童書を扱っていなかったのですが、たまたま原稿を読んだブライアニー・イーブンスという事務員の女性の目に留まり、気に入った彼女が社長を説得して契約させたのです。

 クリストファー・リトル社は原稿を計12社に送りつけましたが、どこの出版社でも断られました。

「こんな小説は売れない」と判断されたのです。

最終的にブルームズベリー社から出版されることになった理由は、経営者のナイジェル・ニュートンが原稿を家に持ち帰り、

8歳の娘アリスに読ませたところ、「パパ、これは今まで出したどの本よりもずっと面白い」と言ったからです。

契約金は、1500ポンド、ハードカバーの初版部数はわずか500部でした。

 「アンネの日記」も、似たような経緯があったようです。アガサクリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』などの名作も、出版社から一度は断られたことがあるそうです。

 こうした事例から分かるのは、編集者にはその原稿がベストセラーになるかどうか見抜く能力はない、ということです。

『ハリー・ポッター』や『アンネの日記』のような大ベストセラーでさえそうなんです。

もちろん作者にも、読者にも分かりません。

良いか悪いか、面白いかつまらないかまで分かっても、当たるかどうかはなかなか予想できないものなんです。

 なにが売れるかは、けっこう難しい問題です。

 歌手や役者の場合、売り出してすぐ売れることはめずらしく、何年かの下積み状態をへてから、人気がでるケースがほとんどです。

人気がでた後は、わりと安定して人気が続きます。

 作家の場合、売れるまで本を出し続けるのは、もっと難しいと思いますので、大変ですね。

芥川賞のような新人発掘の賞が、それなりの役割を果たしていると思います。

 

 さて、「本が好き!」への書評の最後にも書きましたが、山本さんは、2018年に脳梗塞を発症して、その後も、後遺症に苦しんでおられます。

 山本さんの闘病日記を、下記のサイトで読むことができます。

   山本弘の闘病日記(山本弘) - カクヨム (kakuyomu.jp)

 発症の当日の模様も詳細に書かれていて、非常に参考になりました。

 

 

 

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