山本弘 プロジェクトぴあの (2014, 2020) |
2022.11.03
山本さんのハードSFです。すでに、書評を、本が好き!に発表しました。
『プロジェクトぴあの』の感想、レビュー(ゆっくり考えるさんの書評)【本が好き!】 (honzuki.jp)
ここでは、それ以外の内容を、書きます。
山本さんは、はるか昔、あるTV番組で、某発明家がスタジオに、宇宙エネルギーなんたらかんたらといううさんくさい装置をもちこみ、ゲストのアイドルが、その話をききながらしきりに感心している場面を見て、
「アイドルの女の子がすごい天才で、この装置の科学的間違いを指摘しはじめたら面白い」とひらめいて、それが、この話になったそうです。
詳しくは、山本さんのHP「山本弘のSF秘密基地」の中に、プロジェクトぴあのの内容紹介の頁がありますので、ご参照ください。
http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/projectpiano00.html
さて、この本の中で、日付の書いてある部分を抜き出して、時間表を作成しました。
主人公の結城ぴあのは、2007年12月25日生まれで、2024年にアイドルグループのオーディションに合格し、
半年間の研修を経て、ジャンキッシュというアイドルグループのメンバーになります。
2025年7月、この物語の語り手のボク(貴尾根すばる)は、秋葉原の電気街でお嬢様と呼ばれている結城ぴあのに出会います。
2025年7月、ぴあのは、テレビで、塩沼隆亮の真空エネルギー抽出装置のインチキを見破り、一躍有名になります。
2025年の夏から2026年にかけて、ぴあのの人気はじわじわと伸びてゆきます。
2026年2月、ぴあのは、ジャンキッシュを卒業し、ソロに転向します。
2026年5月、『結城ぴあの・ジャンキッシュ卒業ライブ』を開きます。
2026年9月、秋葉原駅前のアキバ・スクエアで、メカぴあのに会います。
2027年7月、サイエンス・アイドル結城ぴあのの発明第一号、みらじぇね を開発します
2027年8月、東京シティーールのライブコンサートで、メカぴあのと対決します。
会場で参加したファンに、みらじぇねを配ります。
2028年1月、ぴあのは、インターメディアテクに行きます。
2028年4月、ボクは、スターマイン・プロジェクトに入社し、企画部に配属され、ぴあののプロジェクトの補佐をします。
2028年12月30日、有明の国際展示場でコミックマーケット(通称コミケ)が開催され、猪口裕人が、みらじぇねの謎が解けたと同人誌に発表し、ぴあのが、その証明は正しいと認める。
2029年1月、周防義昭教授をスターマイン・プロダクションに招いて、プロジェクトぴあの推進を決定する。
2031年に、ピアノ・ドライブの試験機が完成します。
2032年に、プロジェクトの実行のために、アメリカに移り、ライト・カスケード社を設立。
2035年2月、実用第一号機の組み立てが始まる。
2035年、火星に向かうロケットに、一人だけで乗って、太陽系外の旅に出発します。
このように、設定は、かなり近未来なのですが、SFのお話だけでなく、なぜか、世界情勢についてもふれているのです。
それは、こんな具合に始まります。
ここで少し、話を日本から世界に向けよう。ぴあのの人生を語るうえで、どうしても必要なことだからだ。
2029年は世界的な波乱の年だった。中国では一時は下火になりかけていた民主化を求める運動が、
前年の後半あたりから活発化し、各地でデモや暴動が発生、多くの逮捕者を出していた。
ボスニアでは民族間の対立が激化し、放火や虐殺事件が頻発していた。
オランダでは移民の排斥を訴える差別主義者の勢力がデモを繰り返し、民族の融和を求める勢力としばしば衝突していた。
ブラジルでは経済政策の失敗が原因で、現政府の退陣を求める運動が激しさを増していた。
中東ではイスラム過激派によるテロが続発していたし、ロシアでもモスクワで爆弾テロが起こり、市民を震撼させた。
しかし、何と言っても世界を驚かせた最大の事件は、アメリカでの「七州分離運動」の急速な盛り上がりだろう。
SFの中に、実際の国名で国際情勢を語るのは、かなり勇気がいることで、私としては、架空の国名にしておいたほうが、よかったのではないかと思います。
しかし、山本さんが、どうしても必要だと思ったのは、アメリカ合衆国の分離を語ることでした。
2028年の大統領選挙の論点は、進化論教育にかかる対立でした。
共和党大統領候補のバードは、インテリジェント・デザイン論(生物は進化によって生まれたのではなく、高度な知性を持つ存在によってデザインされたという説)を公立学校で教えるべきだと訴え、12月民主党候補を大差で下し、新大統領になりました。
2033年9月、議会がついに公立学校の教育にインテリジェント・デザインを取り入れると決定したとき、思想信条の自由を標榜してきたカリフォルニア州が、合衆国からの独立を宣言し、ワシントン、オレゴン、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサスも呼応して、西部七州が、西アメリカ連合の発足を宣言しました。
ライト・カスケード社は、西アメリカ連合の経済圏に属することになり、経済を活性化させる起爆剤として、プロジェクトぴあのに期待が高まりました。
山本さんが、2033年のアメリカの分離の予言を、わざわざ本書にいれた理由は、私には、まだよくわかりません。
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