山口真由 リベラルという病 (2017)

2024.07.06

 日本では、アメリカの共和党のことを殆ど報道しないので、リベラルなのが民主党で、保守(コンサバ)なのが共和党くらいの知識しかありませんが、

だからといって、日本でリベラルなのが左派の立憲民主党などで、保守が、自民党や、維新や参政党のような新参政党だと考えると大間違いです。

歴史のテストで、リベラルな民主党が、アメリカの南北戦争のときの北で、保守の共和党が、南だと答えてしまうと、0点です。南北戦争で、勝利した北は、リンカーンの共和党なのですから。

南北戦争で勝利した共和党が、アメリカを主導して保守勢力となったのですが、アメリカは、キリスト教徒が大多数を占めていますので、進化論は信じない、妊娠中絶は認めない、という頑固な保守思想の国です。

こういう強硬な保守思想に対抗して、民主党がリベラルの考え方を育んできたのですが、このリベラル信仰も、それに反する人たちに不寛容な態度をとります。

その不寛容さは、ポリティカル・コレクトネスを主張するようになって、ますますひどくなり、病的になったというのが、山口さんの主張です。

日本の左派は、日本でも、ポリティカル・コレクトネス運動をしかけるのですが、日本には、戦う相手である頑固な保守は、存在しません。

日本の自民党は、保守というよりも、アメリカの民主党にほぼ匹敵するくらいのリベラルな政党です。

リベラルは、あくまで自由主義の世界での話なので、共産主義や社会主義に親近感をもつ日本の左派が、身にまとうことができるものではないのです。

このことを頭に入れて、この本を読むと、理解が促進すると思います。

 今年は、アメリカ大統領選挙の年です。
アメリカの民主党と共和党の対立関係について、理解を深めたうえで、ウォッチしたいと思います。

目次を示します。

第1章 リベラルという宗教
 「我々は、信心深い国民である」
 ペンス副大統領はクリスチャン・ライト
 「人類間の平等」という宗教
 差別主義者はすなわち異教徒
 ポリティカル・コレクトネスとは何か
 日米ポリティカル・コレクトネス格差
 あらゆる表現がやり玉に挙がる
 LGBTQQIAAPPO2Sって何?
 リベラルの不寛容 − ゼロ・トレランス
 リベラル信仰の聖地、ハーバード・ロースクール
 インテリ層の差別主義と後ろめたさ

第2章 最高裁判事という権力者
 連邦最高裁はマイノリティ最後の砦
 最高裁判事は大統領の代弁者か
 スカリア判事の死、危機に瀕したコンサバ派
 大統領選の争点となった最高裁判事
 コンサバの悪夢「ウォーレン・コートの時代」
 「分離すれども平等は違憲」:全員一致のブラウン判決
 全土で同性婚を認める:僅差のオバーゲフェル判決

第3章 揺らぐ家族像
 トニ・モリスン「青い眼がほしい」が訴えたこと
 養育費を支払わなければやがて刑務所へ
 親による子どもの支配権:トロクソ対グランヴィル判決
 男女一組の親・血のつながった子どもという理想像
 閉じられた核家族ユニット:マイケル対ジェラルド判決
 親を決める「遺伝・分娩・婚姻推定、意志・機能」
 親になる「意志」の時代 − 新しい家族像
 シュルツ論文を受け入れる:ジョンソン対カルバート判決
 同性カップルによる子育てと機能主義
 コンサバ州とリベラル州の鋭い対立
 生殖補助医療の進歩は何をもたらすか
 親という概念の根本的な変化

第4章 奇妙な日本のリベラル
 安倍首相は右翼で天皇はリベラル?
 「人生哲学」としてのイデオロギー
 政府の大小はリベラルとコンサバの分かれ道
 民主党と民進党の決定的な違い
 自ら財政の均衡を主張したリベラル民進党
 イデオロギー的核がないのは、自民党も同じ
 自民党のポジションは、アメリカでは民主党
 日本では予算の配分こそ権力の源
 財務省は「小さな政府」を目指したか
 突然変異としての「小さな政府」論者
 なぜリベラルが橋下氏と渡り合えないか
 外交・社会政策にも一貫するストーリー
 人間への「信頼」、人間への「不信」
 日本の哲学と相反するリベラル倫理観
 リベラルは再び立ち上がることができるか
 泥沼にはまる民主党
 敵失を誘うしかないのか、民進党
 アメリカ民主党も真似をして敵失誘発方式
 穏健派と穏健派を結びつける動き
 おわりに

 

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