「は」と 「が」の使い方

2015.2.21   2015.2.25

 日本語には、多数の助詞があって、日本語の表現力を高めています。

 しかし、日本語を習い始めた人達にとって、助詞「は」と「が」の違いを区別することはは、かなり難しいと思います。

 私は日本人です。 I am a Japanese.
 私が日本人です。  I am a Japanese.

 どちらの文章も、英訳すると同じ文章になります。

 人がでしゃばる様を表すときに、「私が、私が、とでしゃばる」といいます。このように、「私が」は、強い印象を与えますので、通常は、「私は」、と始めるのが普通です。

 「が」は、基本的に、主語をあらわす格助詞です。格助詞には、さらに「が」「の」「を」「に」「へ」「と」「から」「より」「で」「や」などがあります。

 「は」は副助詞で、「も」「こそ」「でも」「のみ」「しか」などの助詞と同じなかまで、取立て副助詞といわれています。

 副助詞「は」「も」「こそ」「のみ」「しか」の用法を、例文を使って説明しましょう。

通常、これらの副助詞は、他の助詞のあとに置かれて、意味を調整します。

 東京に  行きません。  I don't go to Tokyo.
 東京には 行きません。  (As for Tokyo) I don't go to Tokyo.
 東京にも 行きません。  I don't go to Tokyo either.
 東京にこそ行きません。  It is to Tokyo that I don't go.
 東京にのみ行きません。  I go anywhere but to Tokyo.
 東京にしか行きません。  I go nowhere but to Tokyo. =  I go only to Tokyo.

 ところが、格助詞の「が」につくときは、「が」は省略されてしまいます。

私が、 先生です。 I am a teacher.
私は、 先生です。 I am a teacher.
私も、 先生です。 I too am a teacher.
私こそ、先生です。 It is I that am a teacher.
私のみ、先生です。 Only I am a teacher.
私しか、先生ではありません。

 格助詞の「を」につくときも、「を」は省略されてしまいます。

肯定文 affirmative sentence
 私は、チョコを食べます。  I eat chocolate.
 私は、チョコは食べます。  (As for Chocolate) I eat chocolate.
 私は、チョコも食べます。  I eat chocolate too.
 私は、チョコこそ食べます。 It is chocolate that I eat.
 私は、チョコのみ食べます。 I eat only chocolate.
×私は、チョコしか食べます。 しか は、否定文でのみ使用します。

否定文 negative sentence
 私は、チョコを食べません。 I don't eat chocolate.
 私は、チョコは食べません。 (As for Chocolate) I don't eat chocolate.
 私は、チョコも食べません。 I don't eat chocolate also.
 私は、チョコこそ食べません。It is chocolate that I don't eat.
 私は、チョコのみ食べません。I eat anything but chocolate. 
 私は、チョコしか食べません。I eat nothing but chocolate.= I eat only chocolate.

 副助詞「は」の使い方が、一番難しいと思います。「は」は、主題の提示の役割を果たしていると説明されています。

 「私が、先生です。」の場合は、主語が強すぎるので、「私は、先生です。」のほうが、好まれて使われています。

2015.2.27

 「は」と「が」の違いを外国人に説明するときによく使われる説明法を紹介します。

 「私は、先生です。」と、「は」を使った場合は、先生のほうが、重要な情報です。先生が、情報上の焦点であるという言い方もできます。

 「私が、先生です。」と、「が」を使った場合は、私のほうが、重要な情報です。私が、情報上の焦点であるという言い方もできます。

2015.3.10

 図書館で、近藤安月子著「日本語教師を目指す人のための日本語学入門」(2008)を借りてきました。助詞のハとガの使い分けについて、1つの章をあてて説明しています。

 まず、以下の質問から始まります。

「次の例で、病気なのはだれか、仕事を休むのはだれかを考えてください。
 (1) 妹は怪我をしたので、仕事を休みます。
 (2) 妹が怪我をしたので、仕事を休みます。 」

 「妹は」は、主題を提示し、その影響範囲が広いので、怪我をしたのも、仕事を休むのも、妹ですが、「妹が」は、「怪我をした」にしかかかりません。

 しかし、(2) を、少し変形して、
   妹が怪我をしたので、仕事を休みました。
   妹が怪我をし、仕事を休みました。
とすると、「妹が」の影響範囲が、拡大したようにも感じられます。

 また、次の質問には、異議があります。

「では、ハは、主語を示すのでしょうか。次の例を見てください。
 (3) その本は買いました。
 (4) 田中さんには会いませんでした。」

 どちらも主語ではないので、「ここから、ハは主語を示すのではなく、文の主題を示していると考えます。」と結論しているのですが、それは間違いだと思います。

 ハは、主題を提示する副助詞で、「田中さんに会いませんでした」を「田中さんには会いませんでした」とすることにより、「田中さんに」を主題として提示します。「その本を買いました」の場合は、ヲが消えて、「その本は買いました」となりますが、目的格の「その本」がこの文章の主題です。「妹が怪我をした」の場合も、ガが消えて、「妹は怪我をした」となりますが、主格の妹を主題として提示しています。

 ガとハの使い分けを示す昔話の例があげられています。

(10) 昔あるところにおじいさんとおばあさんいました。おじいさん、山へ芝刈りに、おばあさん、川へ洗濯に行きました。おばあさん洗濯をしていると、川上から大きな桃流れてきました。

 これは情報の新旧による使い分けと説明することができますが、この文章を読んで、ガとハの使い分けを体得してもらうことが大切なのだろうと思います。

2016.3.2

 ほぼ1年ぶりで、このページにもどってきました。ハの使い方について、こんな説明も、考えてみました。

 

日本語の語順で

I know you are a Japanese.  私は、あなたが日本人であると知っています。

のように、英語では I knowと、主語と述語が続くのに、日本語では、主語「私は」と、述語「知っています」がきりはなされます。

口語で、「知ってるよ。あんた、日本人でしょ。」とは、言いますが、

正式な文章で、「私は知っています。あなたが日本人であることを。」とは、言いませんし、

「あなたが日本人であることを、私は知っています。」とも、言いません。

 文章を、「私は」で始めて、「私が、何々だ」ということを、言おうとしていることを、最初に、におわしておくことが必要なのです。

 

 「私が」で始めると、この役をはたすことはできません。したがって、日本語では、「私は」と「は」を使うことが多くなるのです。

 

 また、本来、「が」は、主格をあらわす格助詞ではありません。「わが本」のように所有格にも使われますし、

「英語ができる人」のように、対象を表すときにも使われます。

 本来の日本語としては、主格を表すときは、格助詞は必要なく、「われ知れり」でしたが、文章が長文化し、複雑になるにつれ、

主格を示すための助詞が必要となり、「は」とか「が」が使われるようになつたのではないかと思います。

2016.3.22

 このページの最初に、主格をあらわす格助詞ガは、取立て副助詞ハがつくと、省略される という説明をしました。

 しかし、ガも主格を表す純然たる格助詞ではないので、この説明は間違っていると思います。

 日本語は、本来、主格には助詞がいらなかったが、文章が複雑になり主語を明示する必要があるときに、

取立て副助詞ハを使うようになった ということになるのではないかと思います。

 目的格ないしは対象格をあらわす格助詞ヲに副助詞ハがつくときも、格助詞ヲは、省略されるとも書きました。

 私は、チョコを食べます。 −> 私は、チョコは食べます。

 しかし、

 私は、チョコをば食べます。  チョコをば、私は食べます。

と、ヲバ という形で残っていますので、主格を表す格助詞は、もともと無かったという説明に影響は無いと思います。

 

 2016.3.2の記事で、語順の話しをしましたが、少し説明を拡張します。

 文は、主語+述語 という語順で作られるのは、日本語も英語も同じですが、主語や述語が複雑になって、

主部、述部になったときに、日本語と英語の語順の違いが現れます。

日本語  主部(主語説明+主語) + 述部(述語説明+述語)

英語   主部(主語+主語説明) + 述部(述語+述語説明)

 例

 日本人である私は、あなたが日本人であると知っています

 I, who am a Japanese, know that you are a Japanese.

 

 

 

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