宇山卓栄 宗教で読み解く世界史 (2020)

2021.08.13

 宗教は、人の心をとりこにする強力な力を持っており、善の力にも、悪の力にもなります。

この本の序文のタイトルは、宗教地政学 −宗教勢力の攻防が歴史の本源 です。

16頁の 宗教は公然性を伴った工作と支配のツール と題する節の出だしを、少し引用します。

 キリスト教の宣教師たちは世界各地で布教を行ない、信徒を協力者(内通者)にして情報を得たり、内乱を起こさせたりしていました。

宣教師は布教によって人を救済するという建前を説いていましたが、実質的に、侵略の先兵として工作活動を公然と行ないました。

 続いて、次の節 中国、東アジアの宗教地政学 の出だしを引用します。

 凶悪な侵略性を有していたのはキリスト教だけでなく、中国の儒教ももちろん、そうでした。

儒教は中華思想と結びつき、その受容を対外的に強制しました。

そうした宗教侵略に、最も侵されて、中国の属国になっていたのが朝鮮でした。

 朝鮮各地に、儒林(ユリム)というものがありました。

儒林は表向きは儒学者たちが集う儒教研究機関でしたが、その実態は中国(明・清王朝)の出先機関でした。

儒林は中国のスパイを養成し、中国文化を賛美するように洗脳教育を人々に施しました。

 李氏朝鮮時代に、儒林の数は増え続け、19世紀には、全国に680の儒林が存在していました。

中国の後ろ楯をもつ儒林は各地において、事実上、地方行政を取り仕切っていました。

そして、朝鮮の支配者層は儒教的な価値観に基づいて、中国に従属することこそが美徳であるとする事大主義に拘泥していました。

 韓国の歴史ドラマを見ていると、儒学生達が大勢集まって、座り込み、王に諫言する場面が、しばしは登場します。

彼ら、儒学生は、中国を後にしているから、力があるのですね。

現代においても、孔子学院という組織が、儒林と同様の使命があるのかもしれません。

 

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