立松和平 横松心平 鳩摩羅什 (2017) |
2018.11.16
立松和平さんが、2010年1月に動脈瘤破裂で、急逝されて、執筆中、連載中の多数の著作が影響を受けました。
立正佼成会の月刊機関誌「佼成」に連載を開始したばかりの『羅什 法華経の来た道』も、その一つで、
2010年の1月〜3月の3回分発表されたところで、連載が休止となってしまったのですが、
立松和平さんの息子の横松心平さんが、連載を引き継ぐことになり、
1年後の2011年4月に再開して、2015年12月まで、足掛け5年、計60回の作品となり、
2017年に単行本『鳩摩羅什 法華経の来た道』と題して、佼成出版社から刊行されました。
さて、本のタイトルは、鳩摩羅什なのですが、立松さんが書いた3回分に、鳩摩羅什は登場しません。
3回とも、現代の話で、第1回には、主人公の水野幹夫と言う青年が、観世音寺の井上薬山和尚のもとで、
書写行をする場面から始まります。
幹夫は、生まれながらに腎結核という病気をもち、働くことが出来ず、高校を卒業しても就職できない状況で、
親をうらみ、荒れた生活をしていたところ、和尚に会い、お寺に通うようになり、書写行を始めたのでした。
写経は、法華経の長者窮子の場面で、長者が、捜していた昔別れた子供を見つけたのですが、
窮乏していて心が卑しくなっていたので、名乗らず、家で、糞尿の汲み取りの仕事で雇うこととし、
20年間続けて、無欲で謙遜な人間に成長したことを知り、死の床で、息子に全財産を譲ることを宣言します。
息子は、突然に、財産を得たのですが、
幹夫も、写経していた難しい漢字の意味を知って、まるで突然財産をもらった気分になります。
和尚は、幹夫に、公園のトイレ掃除を10か所命じます、
幹夫は、20年間便所の汲み取りをした息子のことを思いながら、その困難な修行を、続けてゆきます。
立松和平さんが書いた3回は、ここまでです。息子の心平さんは、1年間考えて、続編の執筆を始めます。
幹夫の話を、続けながら、第8回の鳩摩炎 から、鳩摩羅什の物語も、始めます。
鳩摩羅什は、インドのカシミールの王子の鳩摩炎を父親とし、
タクラマカン砂漠の北へりの亀茲(きじ)というオアシス都市の王の妹の 耆婆(きば) を母親として生れ、
幼い時から、サンスクリット語で、仏教を学び、有名になりますが、亀茲が滅ぼされたあと、
いろんな王の下で捕虜生活をおくりますが、その困難な生活にもめげず
東方の中国に仏教を伝えることを目指して、経典の漢文への翻訳を行います。
鳩摩羅什が漢訳した妙法蓮華教は、日本に伝わり、1600年たった今なお、そのままの形で読み継がれています。
ホームページアドレス: http://www.geocities.jp/think_leisurely/
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