田母神俊雄 日本の敵 (2017) 

2022.08.15 

 私が、最初に読んだ田母神さんの本は、「なぜ朝日新聞はかくも安倍晋三を憎むのか」です。

安倍晋三や、日本の足を引っ張るのは、国内外の左翼勢力だけでなく、アメリカもそうだということも

わかりやすく語ってくれるいい本だと思いました。そして、2冊目に買った本が、この本です。

 しかし、この本は、まるで小説を読んでいるかのように、こう始まります。

 2016年3月7日朝8時頃、エントランスのチャイムが鳴った。私は恒例の朝のジョギングに出かけようとしていたところだった。こんな朝早く誰だろうと思って応答すると東京地検特捜部だった。すぐに10人を超える捜査官たちが家に入ってきて令状を提示して家宅捜査が始まった。電話もパソコンもスマホも使えなくなった。私に対する容疑は政治資金の横領だと言う。廣田能英という主任検事がまるで殺人犯を見るような目つきで私に向かって「証拠は挙がっていますから」と言う。横領などまったく身に覚えのない私は何を調べてきたのだという気持ちだった。

 田母神俊雄さん(1948年生)は、防衛大学卒業後、航空自衛隊に入隊し、2007年に航空幕僚長に昇りつめました

 2008年に、アパグループ主催の「真の近現代史観」懸賞論文に応募し最優秀賞をとった「日本は侵略国家であったのか」という論文の主張が政府見解と異なるということで、航空幕僚長の職を解かれ、同年末に、定年退官しました。

 2009年に、株式会社田母神事務所を設立し、講演活動等を開始します。「田母神塾」という本も出版します。

 2010年に、日本文化チャンネル桜社長の水島総らと共に政治運動団体「頑張れ日本!全国行動委員会」を結成し、会長に就任し、田母神事務所は解散しました。

 2014年に、東京都知事選に立候補します。水島総さんは、日本文化チャンネル桜の社長をやめて、選挙対策本部長をつとめます。2月9日の投票で、61万865票という大量得票を得ますが、4位落選となります。

 同年8月に、頑張れ日本!全国行動委員会の会長を辞任し、太陽の党代表幹事ならびに国民運動本部長に就任しますが、直後、太陽の党は、次世代の党に合流します。

 同年11月、次世代の党公認で2014年衆議院議員選挙に東京12区より出馬すると表明しますが、東京12区は連立与党公明党の太田昭宏国土交通大臣の活動区域なので、田母神さんは、「公明党をぶっつぶせ」をスローガンとして、選挙戦を戦います。

 同年12月14日の総選挙で、次世代の党は惨敗し、田母神さんも、落選します。

 2015年2月、都知事選選挙対策本部の会計責任者だった鈴木新が、田母神の政治資金1億数千万円のうち約3000万円を、私的に使い込んでいたと発表する。

 同年3月10日、田母神さんは、警視庁に会計責任者に対する業務上横領罪の告訴状を送付する。

 2016年3月、都知事選で選対本部長を務めた水島総の告発を受け、東京地方検察庁特別捜査部(以下「東京地検特捜部」)が、政治資金を私的に流用した疑いで田母神の事務所などを捜索する。

 このような事情から、冒頭の小説まがいの特捜捜査の場面につながります。冒頭の文章は、
次のように進みます。

 それから約1ヵ月半に渡り任意の事情聴取が行われた。政治資金の横領は取り調べを進めるうちに検察があきらめたのか、次第に公職選挙法違反に容疑が移っていった。都知事選終了後に私が事務局長や会計責任者と共謀して、運動員に対してお金を配ったというものであった。
 そして忘れもしない同年4月14日朝、任意事情聴取のため東京地検から出頭要請があり、30分ほどの事情聴取ののちに午前10時、私は逮捕された。逮捕理由は当初の業務上横領ではなく、公職選挙法違反であった。

 3月7日は、在宅のときに、政治資金横領の疑いで家宅捜査が入り、その後、任意で事情聴取が行われたわけですが、政治資金横領での立件は難しいとの判断で、公職選挙法違反での取り調べが行われました。

 4月14日に、東京地検に出頭が要請され、その場で、公職選挙法違反の疑いで逮捕されたわけです。同日に、2度めの家宅捜査も行われたようです。

 7月1日に、政治資金横領の疑いに関しては、嫌疑不十分ということで、不起訴となりました。

 9月29日に、公職選挙法違反の疑いで有罪となりますが、執行猶予付きで、保釈金600万円で釈放となります。拘留期間は、169日でした。

 田母神さんは、衆議院総選挙敗北のあと、2016年6月22日公示、7月10日投票予定の第24回参院選挙に出馬予定で、出馬準備を進めているところでした。参議院選挙の3か月前に逮捕され、選挙には出馬できませんでした。

 田母神さんは、以下のように語ります。

 これが何を意味するのか。
 じつは私にも本当のところはわからない。むしろ、賢明な読者の皆さんのほうがおわかりになるのではないかと思う。

 さて、この裁判は、田母神さん選挙対策本部長だった水島さんが、田母神さんを訴えたという不思議な裁判です。

また、公職選挙法違反についても、元陣営幹部と共謀して、選挙運動の報酬を配ったとする判決理由に対して、田母神さんは、共謀はなかったと主張しています。

 裁判の内容については、別の本が出版されていますので、そちらで、検討したいと思います。

 

 以前、山口敬之さんの本を読もうとしたときに、伊藤詩織さんと裁判中ということで、時間をかけて裁判内容を検討しました。田母神裁判にも、いろんな思惑がみえかくれしています。

 山口-伊藤裁判にしても、山口さんが伊藤さんをレイプしただけの話であれば、国会で取り上げるまでの事件にはなりませんでした。

 山口さんの逮捕状を、警視庁刑事部長の中村さんが、執行寸前に取り消したのは、山口さんが、安倍首相と特別の関係にあるので、政治的に配慮したからに違いないという疑惑が持ち出されたからです。

 しかし、山口さんが、安倍首相と近しい関係であることが周知されるようになったのは、この事件の直後に、山口さんが出版した「総理」という本が、有名になったからです。

 この時点では、山口さんは、安倍さん関係の政治記者の一人でした。

 中村さんは、こんな立件の難しい事件で、マスコミ関係者を逮捕するのはまずいという判断で、逮捕状を止めたのだと説明しています。実際、本件は、嫌疑不十分で、不起訴となりました。

 いまだに、伊藤さん支持のマスコミ等は、中村さんに、本当のことを話せと、疑惑追及を止めません。この追及は、中村さんが、配慮したと言わない限り、終わることはないでしょう。

 また、山口さん自身も、日本に戻ってきたときに、逮捕状がでていることは知らなかったと証言しています。知らなかった人が、安倍首相に頼んで、逮捕状の執行を止めてもらったという疑惑には、無理があります。

 こういう明白な事件を、裁判所で、何年もかけて審理している日本の現状に、不思議さを覚えています。

 

 

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