高橋洋一・石平 経済原理を無視する中国の大誤算 (2022)

2024.06.15

 経済原理を無視した中国の大誤算により不動産バブルがはじけようとしています。

このバブル崩壊が、中国だけの崩壊で済むのか、それとも、アジアや世界を巻き込んだ不況に拡大するのか、予断を許さない状況です。

 共産主義の掲げる計画経済は、経済発展しないシステムにおいては、楽に運営できるのですが、経済発展して社会が変化するときは、経済音痴の共産主義者が運営すると破綻してしまいます。

 中国の中央政府の税収の主要部は、消費税なのですが、その収入は、地方政府には回らないそうです。

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石平 中国のいちばん大きな税収の財源は増値税で、これは中国版の消費税です。消費者からではなく企業から徴収し、ほとんどは中央政府が持っていきます。中央政府は増値税を軍事費や治安費の財源にしているのです。
 ところで、中国の治安費は軍事費よりも多い。これも異常なことですが、中国をよく表している。
 一方、中国の地方財政にはほとんど財源がありません。税収が入ってこないので、90年代から「お前たち、土地を売れ」ということになった面もある。以来、土地を売るといっても所有権ではなく使用権を、中国の地方政府は売ってきたのです。

こうして、中国に不動産産業が誕生しました。

地方政府の不動産産業への依存度が、異常に高いことにご注意ください。

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石平 1990年代以前は中国には不動産という概念も不動産市場もなかったのです。だから中国の都市部でみんなが住む家は全部、中国政府から配給されたものです。大学の教員だった私の両親も大学を介して中国政府から配給された家に住んでいた。
 1990年代に入ってから当時の朱鎔基(ようき)首相の指導下で、家の配給制度が徐々に廃止されていきました。言うまでもなく、需要の創出のためです。それによって都市部だけでも何億もの人々が一斉に自分たちの家を買わざるをえなくなった。
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石平 中国の不動産開発がどこまで膨らんできたかというと、2020年の中国の不動産投資総額は約14兆1400億元。日本円で約254兆円。日本の名目のGDPは約500兆円ですから。その約半分以上にも相当する。
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石平 中国の場合、地方政府のトップは2〜3年で交代します。地方政府のトップはみんな在任中に一生懸命に土地を譲渡する。つまり、次のトップには何も残すつもりはないということですから、遠からず中国の地方財政も限界を迎えます。
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石平 中国では多くの地方政府の財政は完全に土地頼りです。地方財政における土地の譲渡金への依存度を数字で見ると、北京が29.2%、上海が27.8%で、これらはまだ依存度が低いほうです。天津は56.3%であり、財政の半分以上を土地譲渡金に頼っています。しかしそれでもまだましなくらいで、なんと西安は99.5%、広州は100%なのです!
 金額の実例では、2020年に上海は2955億元(5兆3100億円)の土地譲渡金の収入がありました。これは日本の防衛費に相当する金額です。

 ところが、とうとう、不動産不況が始まってしまいました。

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石平 不動産開発業者がこれから不動産をつくらないなら、地方政府から土地を譲渡してもらわなくてもよくなります。
石平 不動産開発業者が不動産をつくらなくなったのには、別の側面もあります。地方政府が土地の使用権を譲渡するとしても、不動産開発業者がほしいのは都市部とその周辺の土地の使用権なのです。さすがに山のなかの土地はいらない。不動産開発業者のほしい土地については大半の使用権の譲渡が終わってしまったのではないでしょうか。

土地は国有のまま、使用権だけを譲渡するというアイデアは、まさに、打出の小槌(こづち)で、地方政府にとって大当たりの宝くじだったのですが、あっというまに使い果たしてしまったようです。

 バブル崩壊は、避けられないと思います。

 

 

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