目に見えぬ侵略 見えない手 副読本 (2021) |
2022.01.13
奥山真司さんの翻訳した「目に見えぬ侵略」と「見えない手」を、今、じっくり読んでいます。
中国共産党が、調略により進めているオーストラリアでの浸透工作を解明する本なのですが、
調略された人を実名で暴くことで、オーストラリアの人達を目ざめさせました。
日米欧をも震撼させたこの2冊のベストセラー本の副読本として、奥山さんがこの本をまとめました。
実名で暴かれた人の顔があらわな写真が満載されていますので、
オーストラリアのことを知らない私達にも、現実感が増大します。
「はじめに」から、少し引用します。
中国共産党は、中国政府が望むような発言をして、中国の利益になるように働く「友人」たちを、
各国のエリートやリーダー層の中に多数育ててきた。
具体的には外国の識者や有力な(元)政治家、メディア関係者を代弁者にして
「アメリカ一強時代は終わった」「中国の勢いは止まらない」「中国に歯向かう愚をやめて良好な関係を保とう」
「西側は中国のやり方を見習おう」と宣伝させている。
また同党は、経済関係の悪化を脅しに使い、中国に対する批判的な意見を封殺することに成功している。
外国のマスコミが北京を怖がり批判を抑えるように仕向け、メディア資本を買収して支援額も増やしている。
反政府活動を弾圧して治安を確保するハイテク監視システムを途上国に輸出している。
さらには「共同研究」や「共同プロジェクト」の名のもとに各国の大学や研究機関に近づき、
知的財産やハイテク技術を根こそぎ奪っている実態を、全篇にわたって実名で告発した。
さて、この2冊の著者のハミルトンさんは、2017年頃に1冊目の草稿を書き終えたのですが、
出版を後押ししていた大手の出版者が、印刷直前になって、北京からの報復を懸念して出版を取りやめました。
欧米の大手出版社は、本の印刷を中国国内の工場に委託しているため、圧力がかかるのを恐れたことと、
中国系の富豪が負けるとわかっていても、あえて名誉棄損の訴訟を起こし、版元や著者に大きな負担をおわせたり、
版元のサイトへの中国からのサイバー攻撃に怯えたなどの理由です。
3社に断られたのですが、無事に、ハーディ・グラントという出版者から刊行されました。
ハミルトンさんは、こう述べています。
「もしアメリカやトランプを強硬に批判する本を書いたら、出版者は喜んで出版したはずだ。
彼らはワシントンではなく、北京を恐れている。
そけは北京が支配する世界がどんなものか、先取りして味あわされた経験だった。」と。
さて、中国共産党の浸透工作に無防備だったオーストラリアが、過去4年間に完全に変化した経緯は、
まず、2016年夏にダスティヤリ上院議員が、中国系の富豪から多額の献金を受けていたことが発覚し、
議員辞職においこまれたことがきっかけだそうです。
そして、中国系資本によるオーストラリアの送電インフラや土地、港湾の買収が、問題視されだした2018年に
「目に見えぬ侵略」が出版され、世論が気付いたのだそうです。
報道機関の論調もかわり、中国共産党の活動を暴き、警戒する報道が増えたそうで、奥山さんは、
「同様の懸念がありながらほぼ何の対策もできず、主要メディアは相変わらず
中国びいきの報道を続けている日本から見れば、うらやましい限りだ。」 と嘆いておられます。
「見えない手」には、補論 日本は「目に見えぬ侵略」にどう対処するか が追加されているのですが、
そこで、ハミルトンさんは、以下のように述べています。
「私の希望は、日本でも私のような研究者が「日本版・目に見えぬ侵略」を執筆することです。
日本で何が起きているか、中国共産党が何をしているのか、データを基に説明する。
中国に妥協し、膝を屈するように説いているのは誰か。
政治や実業界、メディアで中国共産党の効果的な影響力のエージェントとなっているのは誰なのか
を暴くことが非常に重要だと思います。日本の誰かが書いてくれるのを期待します。」
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