親鸞仏教センター 現代語歎異抄 (2008) |
2016.9.21
私の別のページで、歎異抄の原文の言い回しを、文法的に正確に読んで、唯円や親鸞の肉声を読み取ろうとしていますが、
歎異抄は、宗教の書物ですので、宗教的な背景を理解して、教義に沿った読み方をすることも肝要です。
そんななか、図書館で本書をみつけました。親鸞仏教センターというのは、京都の東本願寺を本山とする
浄土真宗大谷派が、2001年7月に、東京に立ち上げた学事施設で、その当初の研究活動の一つとして、
歎異抄の現代語訳を行う研究会をたちあげ、センターの機関紙で発表してきた成果が最終的に、本書として出版されました。
本書は、原文と、用語の註と、現代語訳、に加え、「教えを読み解く」の欄があり、それが主体となっています。
この欄には、研究会で討議された内容が、四人の発言者の意見として、展開されています。
これから、「教えを読み解く」の欄の内容を、少しご紹介しようと思いますが、すばらしいことに、
本書の、原文と、用語の註と、現代語訳、の部分は、親鸞仏教センターのホームページでも、読むことが出来ます。
web番のほうが、原文と、現代語訳が、左右に対置されていて、比較しやすいので、便利に使わせてもらっています。
序 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn01.html
第一条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn02.html
第二条その一 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn03.html
第二条その二 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn04.html
第三条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn05.html
第四条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn06.html
第五条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn07.html
第六条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn08.html
第七・八条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn09.html
第九条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn10.html
第十条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn11.html
第十一条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn12.html
第十二条その一 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn13.html
第十二条その二 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn14.html
第十二条その三 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn15.html
第十三条その一 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn16.html
第十三条その二 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn17.html
第十四条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn18.html
第十五条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn19.html
第十六条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn20.html
第十七・八条 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn21.html
後序 http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03.html
本書の翻訳の特徴は、例えば、第一条に出てくる「往生」という言葉を、「新しい生活の獲得」と翻訳するところにあります。
往生とは、極楽に往生するという意味ですが、極楽往生といわれても、どういう意味かわからない人は大勢います。
それどころか、現代、往生という言葉は、「うまくいかないことがあって、往生した」と、「とても困る、どうしようもない」という意味だったり、
「あの人も往生した」と、「死ぬ」という意味だったりと、暗いイメージがあります。
しかし、往生という言葉を、新しい生活の獲得と言い換えて、往生という言葉を使わないことにすると、他力などの
他の言葉の理解に影響を与えてしまいそうな気がします。
2005年5月27日の研究会に、東大名誉教授の脇本平也さんをお招きしたときの報告がのっています。
http://www.shinran-bc.higashihonganji.or.jp/report/report03_bn0a.html
その中で、往生を、新しい生活の獲得と言い換えてしまうことに対する、先生の注文が掲載されていますので、
興味のある方は、ご参照ください。
一方で、第三条の、有名な、「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」では、
善人と悪人は、言いかえをせず、そのまま使っています。
この文章は、意味内容が深く、解釈が非常に難しいため、一般には、
善人は、自力で善をなして、自分は善人であると思っている人のことで、
悪人とは、自分が悪人であることを自覚して、他力の教えにすがろうとしている人のこと
であると説明されます。
しかし、善人ですら往生できる。悪人が往生できるのは、当然である。と、読むときに味わうインパクトは強烈で、
だからこそ、日本人にとって、忘れられない言葉となっているのだと思います。
この後に続く、「しかるを、世のひとつねにいわく、悪人なお往生す。いかにいわんや善人をや。」も、
逆説の用法として、有名です。
しかし、私は、世の人は、「善人は、極楽に往生する。悪人は、地獄におちる。」と思っているのではないかと思っていて、
上記の逆説が、いまいち、ピンときていません。
以下に、もっとゆっくり、内容について、ご紹介したいと思っています。
ホームページアドレス: http://www.geocities.jp/think_leisurely/
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