島田裕巳 浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (2012) |
2016.3.16
親鸞の教えが、現在、浄土真宗においてどのように説かれているのかを知ろうと、この本を手にとったのですが、
本のタイトルとは異なり、この本には日本の仏教の各宗派の成立過程や特徴が簡潔に解説されていて、その意味では参考になりました。
そして、この本の「おわりに」が「浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか」と題されていて、肝心の説明がありました。
浄土真宗には西本願寺の本願寺派と、東本願寺の大谷派以外にもいくつかの派がありますが、
信徒の総数は1200万人を超え、日本の人口の約1割にあたります。
一時は、創価学会の会員を含んだ日蓮正宗のほうが多い時期もあったそうですが、現在は、仏教宗派の中で最大です。
明治になった頃には、日本全体の3分の1が、浄土真宗だったという話しを聞いたことがあるそうです。
これは、ひとえに、浄土真宗が庶民の信仰であったからです。
日蓮宗が、京都や江戸において町衆や町人の信仰を集めたのに対し、
浄土真宗は、北陸や広島周辺の「真宗地帯」を中心とした地方の農民や漁民、職人などを信徒としたのだそうです。
浄土真宗では、「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えることが極楽往生に結びつくとされ、
日蓮宗では、「南無妙法蓮華経」の題目を唱えることで「利益」がもたらされるとされているのですが、
他の宗派には、この念仏や題目に相当するものが無いのだそうです。
浄土真宗の教えは、「他力本願」の教えで、弥陀の計らいにすべてを委ねることが信仰の究極のあり方で、
その本願を信じて念仏を唱えさえすれば、極楽往生がかなうというシンプルなものです。
これは、近代、現代における信仰のありかたとして、あまりにも単純すぎるという批判もありうるのですが、
島田さんは、以下のように解説します。
「 ところが、浄土真宗の各派ではそれほど重視されていないが、近代には『歎異抄』の再発見ということが起こった。
この書物に示された親鸞の宗教者としてのあり方は、近代社会においても十分に通用するものとして、
とくにインテリ層から高い評価を受けてきた。それで浄土真宗の門徒が増えたというわけではないにしても、
仏教教団の近代化という難しい事柄を解決する可能性が示唆されたことは大きい。
また、『歎異抄』の存在は、宗派の外にいる人間の関心を集めることにもつながったのである。」
2016.3.18
「おわりに」の最後に、もう一度、仏教全体の話にもどります。
葬式仏教という言葉が示すように、日本の仏教はお葬式をおこなうという役割を果たしています。
都市部を中心に葬式の簡略化が進んでいますが、団塊の世代が老年化し、
死亡者の数が増加するという傾向は、しばらく続きます。
しかし、団塊の世代が消滅し、葬儀の簡略化が一層と進んだころに。本格的な葬式仏教の危機が訪れます。
その時、仏教はどうなるか。著者は、今の時点でそれを予想することは難しいと結びます。
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