詩吟 全国吟詠コンクール 指定吟題 2023

2023.01.13 更新2023.02.06

 令和5年度の指定吟題 10曲です。

漢詩原文読み下し文、と、現代語直訳、のあとに、

詩吟の読みをひらがなで示し、

譜付けの一例を、下記の数字記号で示します。

 ラ シ ド レ ミ ファ ラ シ ド
 乙 1 2 2^ 3 3^ 5 6 7

 

●1 題常盤抱孤図 常盤(ときわ)孤(こ)を抱(いだ)くの図(ず)に題(だい)す
  
 梁川星巌(やながわ せいがん)

説明 常盤=常盤御前 源義朝の妾、頼朝・義経の母、孤=みなしご

雪灑笠檐風捲袂
雪は笠檐(りゅうえん)に灑(そそ)いで、風 袂(たもと)を捲(ま)く
雪が、(常盤の) 笠檐(編み笠のひさし)に灑(そそ)いで、風が、袂(たもと)を捲(ま)きあげる

呱呱覓乳若為情  
呱呱(ここ) 乳を覓(もと)むるは 若為(いかん)の情(じょう)ぞ
赤子の泣き声が、乳を求めているのは、一体どんな心情であろおか

説明 若為情 は、赤子と常盤のどちらの気持ちがわからないとするのか、両説あります 

他年鉄枴峰頭嶮
他年(たねん) 銕枴峰頭(てっかいほうとう)の嶮(けん)
後年(こうねん)、(一の谷の合戦で)銕枴峰(てっかいがみね)の険しい頂(いただ)きで

説明 銕枴山。兵庫県神戸市に位置し、六甲山地の西南端にあり、隣接する鉢伏山(はちぶせやま)
とともに急傾斜で須磨浦に臨む。 北側に鵯越(ひよどりごえ)を控え、南側に一ノ谷がある。標高237m。

叱咤三軍是此声  
三軍(さんぐん)を叱咤(しった)するは是(こ)れ此(こ)の声(こえ)
大軍(たいぐん)に叱咤激励するのは、まさに、この声である

3^53^〜|3^ 5555 2^3^3^3〜3^3|23 5776〜7653^3|23〜3^321乙
ゆきは〜|りュうえんに そそいで〜〜〜|かぜ たもとを〜〜〜〜〜〜|まく〜  

21〜21乙|23^3 23^3^33〜3^3|3^555〜653^3|2 33〜3^3
ここ〜〜〜〜|ちちを もとむるは〜〜〜|いかんの〜〜〜〜〜|じョおぞ〜

377〜676565|5666 56666〜7653^3|3^3〜3^321乙
たねん〜〜〜〜〜〜|てっかい ほおとおの〜〜〜〜〜|けん〜

乙1111〜21乙|3^ 3233〜3^3|65〜7653^3|23 53^3
さんぐんを〜〜〜〜|しッたするは〜〜〜|これ〜〜〜〜〜〜|この こえ〜

 

●2 舟中聞子規 舟中(しゅうちゅう)子規を聞く 城野静軒(きの せいけん)

説明 子規、杜鵑 ともに、ほととぎす

八幡山崎春欲暮 八幡(やわた)山崎 春暮れんと欲し
(船の中で)京都の八幡山崎あたり、春が暮れようとしている

杜鵑啼血落花流 杜鵑(とけん)血に啼(な)いて 落花(らっか)流(なが)る
ほととぎすが、血を吐くように鳴いているいて、(川面には)落花が流れている

一声在月一声水 一声(いっせい)は月に在り 一声は水
ある一声は、月からしていて、ある一声は、水面からしている

説明 藤原実定の「ほととぎす鳴きつるかたを眺むればただありあけの月ぞ残れる」を受けて、
   瓢水が詠んだ「さてはあの月が啼いたかほととぎす」という句を踏まえています

声裡離人半夜舟 声裡(せいり)の離人(りじん) 半夜の舟
声裡(愁裡、愁いに満ちた)の離人(旅人)が、夜半の舟に乗っている

2^3^3^ 3^53^3^〜33^3|3^3 5666〜7653^3|233〜3^321乙
やわた やまざき〜〜〜〜|はる くれんと〜〜〜〜〜〜|ほッす〜

乙11〜21乙|3233〜3^3|655〜653^3|23^3〜
とけん〜〜〜〜|ちにないて〜〜〜|らっか〜〜〜〜〜|ながる〜

37777〜676|576 76〜565|5 666〜7653^3|23〜3^321乙
いっせいは〜〜〜〜|つきに あり〜〜〜〜|いッせいは〜〜〜〜〜〜|みず〜

2111〜21乙|233〜3^3|6555〜653^3|3^3〜
せいりの〜〜〜〜|りじん〜〜〜|はんやの〜〜〜〜〜|ふね〜

  

●3 辞世  辞世(じせい)  吉田松陰(よしだ しょういん)

吾今為国死 吾(われ)今 国の為に死す  
私は、今、国の為に死ぬ(命を捨てる)

死不負君親 死して君親に負(そむ)かず   
死んでも、君や親への忠孝の道に背いてはいない

悠悠天地事 悠悠たり天地の事   
天地の事は悠々としている

鑑照在明神 鑑照(かんしょう)明神(みょうじん)に在(あ)り   
霊験あらたかな神は、すべてをご照覧される

53^  3^3〜3^3|566576〜7〜653^3|3^3〜3^〜321乙
われ  いま〜〜〜|くにのために〜〜〜〜〜〜〜|しす

211〜21乙|23333〜3^〜5〜3^3|23^3^3〜
しして〜〜〜〜|くんしんに〜〜〜〜〜〜〜|そむかず〜

377776〜565|7666〜7653^3|233^321乙
ゆうゆうたり〜〜〜〜〜〜〜|てんちの〜〜〜〜〜〜|こと〜〜

乙11 1〜23〜3^3|3^5555〜653^3|3^3〜
かんしョお〜〜〜〜〜〜|めいしんに〜〜〜〜〜|あり〜

 

●4 涼州詞 涼州詞(りょうしゅうし) 王之渙(おうしかん)

黄河遠上白雲間 黄河(こうが)遠(とお)く上(のぼ)る白雲(はくうん)の間(かん)    
黄河をはるか遠くに上って、白雲のたなびくあたりに

一片孤城万仭山 一片(いっぺん)の孤城(こじょう)万仭(ばんじん)の山
一つの孤城が万仭の山に囲まれている

羌笛何須怨楊柳 羌笛(きょうてき)何ぞ須(もち)いん楊柳(ようりゅう)を怨(うらむを)     
羌族の吹く笛の音が、「折楊柳」の曲を悲しく奏でているが、どうしてそんな必要があるのか(そんな必要はない)

説明 「折楊柳」は、春の柳の芽吹く頃の別れを歌う曲

春光不度玉門関 春光(しゅんこう)度(わた)らず玉門関(ぎょくもんかん)  
春の光は、ここ玉門関には、渡ってこないのだから

53^3^〜|355 33^3^〜33^3|56666〜7653^3|3^3〜3^321乙
こおが〜|とおく のぼる〜〜〜〜|はくうんの〜〜〜〜〜〜|かん〜

乙2211〜21乙|3^3 3〜3^3|3^5555〜653^3|23〜3^3
いっぺんの〜〜〜〜|こじョお〜〜〜|ばんじんの〜〜〜〜〜|やま〜

3 777〜676|766 5776〜765|566 66〜7653^3|23^33〜3^321乙
きョおてき〜〜〜〜|なんぞ もちいん〜〜〜〜|よおりュうを〜〜〜〜〜〜|うらむを〜

乙 111〜2乙|2333〜3^3|3^ 665653^3|3^3〜
ュんこお〜〜〜〜|わたらず〜〜〜|ぎョくもん〜〜〜〜〜|かん〜

 

●5 春夜洛城聞笛 春夜(しゅんや)城(らくじょう)に笛を聞く 李白(りはく)

誰家玉笛暗飛声 誰(た)が家の玉笛(ぎょくてき)か 暗(あん)に声を飛ばす
誰の家の玉笛なのか 暗闇の中に美音を飛ばしている

散入春風満洛城 散(さん)じて春風(しゅんぷう)に入(い)って 洛城(らくじょう)に満つ
音は広がって春風に乗り、洛陽の街を満たしている

此夜曲中聞折柳 此(こ)の夜(よ)曲中 折柳(せつりゅう)を聞く
この夜に、曲の中に、折揚柳の曲を聞いた

何人不起故園情 何人(なんびと)か 故園(こえん)の情(じょう)を 起こさざらん
誰が故郷への情を起こさずにいられようか

53^ 33^3^ 2^_3^3^3^3^〜33^3|3^33 76〜7653^3|233〜3^321乙
たが いえの ぎョくてきか〜〜〜〜|あんに こえを〜〜〜〜〜〜|とばす〜

2111〜21乙|2 3333 233〜3^3|3^55555〜653^3|3^3〜
さんじて〜〜〜〜|しュんぷうに いって〜〜〜|らくじょおに〜〜〜〜〜|みつ〜

77676|5 66 6〜76565|566 667653^3|23〜3^321乙
このよ〜〜〜〜|きョくちュう〜〜〜〜〜〜|せつりュうを〜〜〜〜〜〜|きく〜

乙111121乙|3^333〜3^3 3^ 55〜653^3|23^3^3^33
なんぴとか〜〜〜〜|こえんの〜〜〜 じョおを〜〜〜〜〜|おこさざらん

 

●6 尋胡隠君  胡隠君(こいんくん)を尋(たず)ぬ  高啓(こうけい)

渡水復渡水 水を渡り 復(また)水を渡り
川を渡り、また、川を渡って

看花還看花 花を看(み) 還(また)花を看(み)る
花を見て、また、花を見る

春風江上路 春風(しゅんぷう) 江上(こうじょう)の路(みち)
春風が川のほとりの道に吹く

不覚到君家 覚えず 君が家に到(いた)る
知らないうちに、君の家に到着した

2^3^3^ 33^3^〜33^3|23 566〜7653^3|233〜3^321乙
みずを わたり〜〜〜〜|また みずを〜〜〜〜〜〜|わたり〜

乙21 1〜21乙|23〜3^3|3^65〜653^3|3^3〜
はなを み〜〜〜〜|また〜〜〜|はなを〜〜〜〜〜|みる

3 777676565〜|566 66〜7653^3|23〜3^321乙
しュんぷう〜〜〜〜〜〜〜〜|こおじョおの〜〜〜〜〜〜|みち

乙211〜21乙|233〜3^3|365〜653^3|23^3
おぼえず〜〜〜〜|きみが〜〜〜|いえに〜〜〜〜〜|いたる〜

 

●7 絶命詩 絶命(ぜつめい)の詩(し)  黒沢忠三郎(くろさわ ちゅうざぶろう)

呼狂呼賊任他評 狂(きょう)と呼び賊(ぞく)と呼ぶも 他の評(ひょう)するに任(まか)す
自分たちの事を狂と呼ぶか、賊と呼ぶかは、他人の批評するに任せる

幾歳妖雲一旦晴 幾歳(いくさい)の妖雲(よううん)一旦(いったん)晴(は)る
長年にわたる妖雲は、たちまち、晴れたのだ

正是桜花好時節 正(まさ)に是(こ)れ、桜花(おうか)の好時節(こうじせつ)
まさに、これ、桜の花の好時節だ

桜田門外血如桜 桜田門外、血は桜の如(ごと)し
桜田門外の血しぶきは、桜の花びらのようである

5 3^3^33^ 3^652^3^3〜3^3|3^3 5 7766〜7653^3|23^3〜3^321乙
きョおとよび ぞくとよぶは〜〜〜|たの ひョおするに〜〜〜〜〜〜|まかす〜

乙1111〜21乙|2333〜3^3|3^555〜653^3|3^3〜
いくさいの〜〜〜〜|よおうん〜〜〜|いったん〜〜〜〜〜|はる

7667676565|7666〜7653^3|23^3^33〜3^321乙
まさにこれ〜〜〜〜〜〜|おおかの〜〜〜〜〜〜|こおじせつ

乙2222111〜21乙|233^3|3^555〜653^3|3^33〜
さくらだもんがい〜〜〜〜|ちは〜〜〜|さくらの〜〜〜〜〜|ごとし〜

 

●8 九段桜   九段の桜  本宮三香(もとみや さんこう)

至誠烈烈貫乾坤 至誠(しせい)烈烈(れつれつ) 乾坤(けんこん)を貫く
至誠(まごころ)は、はげしく、天地をも貫く

忠勇誉高靖国門 忠勇(ちゅうゆう)の誉(ほま)れは高し 靖国の門(もん)
忠勇の誉れが高い靖国神社の門

花満九段春若海 花は九段に満ちて 春(はる)海の若(ごと)し
桜の花が九段(地名)に満ちて、春は、海のようである

香雲深処祭英魂 香雲(こううん)深(ふか)き処(ところ) 英魂(えいこん)を祭る
花霞の奥深い所に、英魂を祭っている

53^3^ 2^3^3^3^〜33^3|56666〜7653^3|23^3^3〜3^321乙
しせい れつれつ〜〜〜〜|けんこんを〜〜〜〜〜〜|つらぬく〜

乙 1111〜21乙|2333 3^33〜3^3|3^5555〜653^3|3^3〜
ちュうゆうの〜〜〜〜|ほまれは たかし〜〜〜|やすくにの〜〜〜〜〜|もん〜

376〜76 7666766〜7656765|3^3766〜7653^3|3^33〜3^321乙
はなは〜〜〜 くだんにみちて〜〜〜〜〜〜|はるうみの〜〜〜〜〜〜|ごとし〜

乙111〜21乙|23^32333^3|3^5555〜653^3|233〜3^3〜
こおうん〜〜〜〜|ふかきところ〜〜〜|えいこんを〜〜〜〜〜|まつる〜

 

●9 絶句(両箇黄鸝) 絶句(両箇(りょうこ)の黄鸝(こうり)) 杜甫(とほ)

両箇黄鸝鳴翠柳 両箇(りょうこ)の黄鸝(こうり) 翠柳(すいりゅう)に鳴き
二羽のウグイスが、緑に茂った柳の木で鳴いている

一行白鷺上青天 一行の白鷺(はくろ) 青天に上る
一列のシラサギが、晴天を昇っている

窓含西嶺千秋雪 窓に含む西嶺(せいれい) 千秋の雪
窓から西の峰の万年雪がみえる

門泊東呉万里船 門に泊(はく)す東呉(とうご) 万里(ばんり)の船
門前には、東呉からはるばるやって来た船が停泊している

5 3^3^3^〜 3^33〜3^3|566 66〜7653^3|23〜3^321乙
りョおこの〜 こおり〜  |すいりュうに〜〜〜〜〜〜|なき〜

乙1111〜21乙|3^33〜3^3|3^5555〜653^3|233〜3^3
いっこおの〜〜〜〜|はくろ〜〜〜|せいてんに〜〜〜〜〜|のぼる〜

766576〜65|5666〜76565|566 66〜7653^3|23〜3^321乙
まどにふくむ〜〜〜|せいれい〜〜〜〜〜〜|せんしュうの〜〜〜〜〜〜|ゆき〜

211 乙21〜21乙|3^33〜3^3|6555〜653^3|3^3〜
もんに はくす〜〜〜〜|とおご〜〜〜|ばんりの〜〜〜〜〜|ふね〜

 

●10 江楼書感 江楼(こうろう)にて感(かん)を書(しょ)す 趙嘏(ちょうか)

独上江楼思渺然 独(ひと)り江楼(こうろう)に上(のぼ)れば 思い渺然(びょうぜん)たり
一人で川辺の高楼に登ると、思いは果てしなく広がる

月光如水水連天 月光 水の如く 水 天に連(つら)なる
月光は水のように清く澄みわたり 川の水は流れて空に連なる

同来翫月人何処 同(とも)に来(き)たって月を翫(もてあそ)びし 人は何処(いずこ)ぞ
一緒に来て月を楽しんだ人は、どこに行ったのか

風景依稀似去年 風景(ふうけい)依稀(いき)として 去年(きょねん)に似(に)たり
景色はかすかに去年に似ている

3^53^ 3^5555 2^3^3^3〜3^3|576〜7653^3|2 3333^3〜3^321乙
ひとり こおろおに のぼれば〜〜〜|おもい〜〜〜〜〜〜|びョおぜんたり〜

乙111〜21乙|233 3^33〜3^3|3^5 655〜653^3|23^3^3〜
げっこお〜〜〜〜|みずの ごどく〜〜〜|みず てんに〜〜〜〜〜|つらなる〜

377〜676|67 6〜765|23^3 577766 576〜7653^3|3^333〜3^321乙
ともに〜〜〜〜|きたッて〜〜〜〜|つきを もてあそびし ひとは〜〜〜〜〜〜|いずこぞ〜

乙111〜21乙|3^3323〜3^3|6 555〜653^3|23^3〜
ふうけい〜〜〜〜|いきとして〜〜〜|きョねんに〜〜〜〜〜|にたり〜

 

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