詩吟 全国吟詠コンクール 指定吟題 2022 

2022.05.15 更新2023.01.10

 令和4年度の指定吟題 10曲です。

漢詩原文読み下し文、と、現代語直訳、のあとに、

詩吟の読みをひらがなで示し、

譜付けの一例を、下記の数字記号で示します。

 ラ シ ド レ ミ ファ ラ シ ド
 乙 1 2 2゚ 3 3゚ 5 6 7

 

●1 宿生田 生田に宿す(いくたにしゅくす) 菅茶山(かん ちゃざん)

千歳恩讐両不存  
千歳(せんざい)恩讐(おんしゅう)両(ふた)つながら存(そん)せず
千年が経ち、恩を受けた人(味方)も仇(敵)も、両方とも存在しない

風雲長為弔忠魂  
風雲(ふううん)長(とこしな)えに為(ため)に忠魂(ちゅうこん)を弔(とむろ)う
風や雲が永久に、ために、楠公の忠魂を弔っている

客窓一夜聴松籟  
客窓(かくそう)一夜(いちや)松籟(しょうらい)を聴(き)く
旅館の窓に、一夜、松風の音を聴く

月暗楠公墓畔村  
月(つき)は暗(くら)し楠公(なんこう)墓畔(ぼはん)の村
月は暗い、楠公の墓のほとりの村は

2゚3゚3゚3゚〜|33゚3゚__3゚〜33゚3|5666667653゚3|23゚3゚3〜3゚321乙
せんざい〜|おんしゅう〜〜〜〜|ふたつながら〜〜〜〜〜|そんせず〜  

乙111〜21乙|233333_23゚3〜3゚3|3゚__5555〜653゚3|23゚3゚3〜
ふううん〜〜〜〜|とこしなえに_ために〜〜〜|ちゅうこんを〜〜〜〜〜|とむろお〜

3777〜676|576〜765|56666〜7653゚3|23〜3゚321乙
かくそう〜〜〜〜|いちや〜〜〜〜|ショおらいを〜〜〜〜〜〜|きく〜

乙21〜乙11〜21乙|3゚333〜3゚3|3゚555〜653゚3〜|23〜3゚3
つきは〜くらし〜〜〜〜|なんこう〜〜〜|ぼはんの〜〜〜〜〜〜|むら〜〜〜

 

●2 春暁 春暁(しゅんぎょう) 日柳燕石(くさなぎ えんせき)

花気満山濃似霧  
花気(かき)山(やま)に満(み)ちて濃(こま)やかなること霧(きり)に似(に)たり
花の気配が山に満ちて、その濃密さは、霧に似ている

嬌鴬幾囀不知処  
嬌鴬(きょうおう)幾囀(いくてん)処(ところ)を知(し)らず
愛嬌のある鴬の声がいくらか鳴いているが、場所はわからない

吾楼一刻価千金  
吾(わ)が楼(ろう)一刻(いっこく)価(あたい)千金(せんきん)
私の楼上からの眺めは、一刻価千金である

不在春宵在春曙  
春宵(しゅんしょう)に在(あ)らず春曙(しゅんしょ)に在(あ)り
春宵に在るのではなく、春曙に在るのです

説明 蘇軾(蘇東坡)の春夜の起句に、春宵一刻値千金とあるのですが、
   清少納言は、春はあけぼのと讃えました。燕石も、春曙を讃えました。

53゚_3゚53゚_3゚33〜3゚3|23゚333゚333|566〜7653゚3|3゚3〜3゚321乙
かき_やまに_みちて〜〜〜|こまやかなること|きりに〜〜〜〜〜〜|にたり〜

乙111〜21乙|3゚333〜3゚3|2665〜653゚3|233〜3゚3
キョおおお〜〜〜〜|いくてん〜〜〜|ところを〜〜〜〜〜|しらず〜

7676〜76|5666〜765|566〜7653゚3|2333〜3゚321乙
わがろう〜〜〜|いっこく〜〜〜〜|あたい〜〜〜〜〜〜|せんきん〜

乙1111〜21乙|3゚333゚3|6_555〜653゚3|3゚3〜
シュんショおに〜〜〜〜|あらず〜〜|シュんショに〜〜〜〜〜|あり〜

  

●3 出郷作  出郷の作  佐野竹之助(さのたけのすけ)

決然去国向天涯  
決然(けつぜん)国(くに)を去(さ)って天涯(てんがい)に向(む)こう
決然と心を決めて故郷(水戸)を去り、天の果てに向かおうとしている

生別又兼死別時   
生別(せいべつ)又(また)兼(か)ぬ死別(しべつ)の時(とき)
これは生き別れであるが、また、死に別れの時を兼ねている

弟妹不知阿兄志   
弟妹(ていまい)は知(し)らず阿兄(あけい)の志(こころざし)
弟や妹は、おにいちゃんの志を知らない

慇懃牽袖問帰期   
慇懃(いんぎん)袖(そで)を牽()ひいて帰期(きき)を問う
慇懃に(親しく)袖を引っ張って、いつ帰るかを問う

2゚3゚3゚3|3゚555__3゚3〜3゚3|56666〜7653゚3|233〜3゚321乙
けつぜん|くにをさって〜〜〜〜|てんがいに〜〜〜〜〜〜|むこお

乙111〜21乙|233゚3〜3゚3|3゚555〜653゚3|23〜3゚3
せいべつ〜〜〜〜|またかぬ〜〜〜|しべつの〜〜〜〜〜|とき

37777〜676|5776765|7666765653゚3|233333゚321乙
ていまいは〜〜〜〜|しらず〜〜〜〜〜|あけいの〜〜〜〜〜〜〜〜|こころざし

乙111〜21乙|233233〜3゚3|655〜653゚3|3゚3〜
いんぎん〜〜〜〜|そでをひいて〜〜〜|ききを〜〜〜〜〜|とお

 

●4 蘇台覧古 蘇台覧古(そだいらんこ) 李白(りはく)

旧苑荒台楊柳新    
旧苑(きゅうえん)荒台(こうだい)楊柳(ようりゅう)新(あら)たなり
古びた庭園、荒れた高台、楊柳(ヤナギ)だけが新しい

菱歌清唱不勝春    
菱歌(りょうか)清唱(せいしょう)春に勝(た)えず
菱の実の摘み歌の清らかな歌声が聞こえ、春の感傷に堪えられない

只今惟有西江月     
只今(ただいま)惟(ただ)西江(せいこう)の月(つき)のみ有(あ)り
今現在は、ただ、西江の月だけがある

曾照呉王宮裏人  
曾(かつ)て照(て)らす呉王(ごおう)宮裏(きゅうり)の人(ひと)
(その月は) かつて呉王の宮中にいた人(西施)を照らしていた

2゚3゚3゚3゚|33゚3゚3゚〜33゚3|5666〜7653゚3|3゚333゚3〜3゚321乙
キュうえん|こおだい〜〜〜〜|よおリュう〜〜〜〜〜〜|あらたなり

211〜21乙|2333〜3゚3|655〜653゚3|23゚3
リョおか〜〜〜〜|せいショお〜〜〜|はるに〜〜〜〜〜|たえず

3766〜76|76〜765|3゚3333_56767653゚3|3゚3〜3゚321乙
ただいま〜〜〜|ただ〜〜〜〜|せいこおの_つきのみ〜〜〜〜〜〜|あり〜

211_乙2〜21乙|3゚33〜3゚3|6555653゚3|23〜3゚3
かつて_てらす〜〜〜〜|ごおお〜〜〜|キュうりの〜〜〜〜〜|ひと〜

 

●5 秋思 秋思(しゅうし) 劉禹錫(りゅう・うしゃく)

自古逢秋悲寂寥   
古(いにしえ)より秋(あき)に逢(お)うて寂寥(せきりょう)を悲(かな)しむ
古くから、秋になると、寂寥を悲しむといわれているが

我言秋日勝春朝   
我(われ)は言(い)う秋日(しゅうじつ)春朝(しゅんちょう)に勝(まさ)ると
私は言う、秋の日の方が、春の朝よりも勝っていると、

晴空一鶴排雲上   
晴空(せいくう)一鶴(いっかく)雲(くも)を排(はい)して上(のぼ)る
よく晴れた秋空に、一羽の鶴が、雲を押し分けて登っている

便引詩情到碧霄   
便(すなわ)ち詩情(しじょう)を引(ひ)いて碧霄(へきしょう)に到(いた)る
するとすぐに、人の詩情が、かきたてられて、青空高く上昇する

2゚3゚3゚3゚3゚3|53゚3゚3゚33〜3゚3|6666〜7653゚3|23゚3゚3〜3゚321乙
いにしえより|あきにおおて〜〜〜|せきリョおを〜〜〜〜〜〜|かなしむ〜

211乙1〜21乙|2333〜3゚3|3゚5555〜653゚3|23゚33〜
われはいう〜〜〜〜|シュうじつ〜〜〜|シュんチョおに〜〜〜〜〜|まさると

777676|5777〜6765|3゚33_76667653゚3|233〜3゚321乙
せいくう〜〜〜〜|いっかく〜〜〜〜〜|くもを_はいして〜〜〜〜〜〜|のぼる

乙21121乙|23_33233〜3゚3|3゚5555〜653゚3|23゚3
すなわち〜〜〜|しジョおをひいて〜〜〜|へきショおに〜〜〜〜〜|いたる

 

●6 望湖楼酔書  望湖楼酔書(ぼうころうすしょ)  蘇軾(そしょく)

黒雲翻墨未遮山    
黒雲(こくうん)墨(すみ)を翻(ひるがえ)して未(いま)だ山(やま)を遮(さえぎらず)
黒い雲が墨を覆したかのように空に広がっているが、まだ、山を覆い隠してはいない

白雨跳珠乱入船    
白雨(はくう)珠(たま)を跳(おど)らして乱(みだ)れて船(ふね)に入(い)る
真っ白なにわか雨が、大粒の珠を躍らせ、乱れ打って、船に降り込む

巻地風来忽吹散    
地(ち)を巻(ま)き風(かぜ)来(きた)って忽(たちま)ち吹(ふ)き散(さん)ず
地面を巻き上げて、強風が吹いてきて、たちまち、黒雲を吹き飛ばしてしまった

望湖楼下水如天    
望湖楼下(ぼうころうか)水(みず)天(てん)の如(ごと)し
望湖楼の下で、(西湖の)水面は、天を映している

2゚3゚3゚3゚〜|3゚53゚_2゚3゚3゚333〜3゚3|233_576〜7653゚3|23゚3゚3゚33゚321乙
こくうん〜|すみを_ひるがえして〜〜〜|いまだ_やまを〜〜〜〜〜〜|さえぎらず〜

211〜21乙|23゚323333〜3゚3|23゚33_655〜653゚3|233゚3
はくう〜〜〜〜|たまをおどらして〜〜〜|みだれて_ふねに〜〜〜〜〜|いる〜

7656|56576〜76|5666〜7653゚3|23゚3゚33〜3゚321乙
ちをまき|かぜきタッて〜〜〜|たちまち〜〜〜〜〜〜|ふきさんず〜

23゚3゚3゚33〜3゚3|23_655〜653゚3|3゚33
ぼおころおか〜〜〜|みず_てんの〜〜〜〜〜|ごとし

 

●7 応制天橋立   応制(おうせい)天(あま)の橋立(はしだて)  釈希世(しゃく・きせい)

説明 応制は、天皇の命に応じて作った詩の意

碧海中央六里松   
碧海(へきかい)の中央(ちゅうおう)六里(ろくり)の松(まつ)
青海原の中央に、松が六里も続いている

天橋絶景是仙蹤   
天橋(てんきょう)の絶景(ぜっけい)是(こ)れ仙蹤(せんしょう)
この天橋立の絶景は、仙人の足跡である

夜深人待出龍燈   
夜(よる)深(ふこ)うして人(ひと)は龍燈(りゅうとう)の出(い)ずるを待(ま)つ
夜がふけて、人は、龍宮の灯火が灯るのを待っている

月落文殊堂裏鐘   
月(つき)は落(お)つ文殊堂裏(もんじゅどうり)の鐘(かね)
月が沈んて、文殊堂の裏の鐘の音が聞こえる

2゚3゚3゚3゚3゚|33゚3゚3〜3゚3|5766〜7653゚3|3゚3〜3゚321乙
へきかいの|チュうおお〜〜〜|ろくりの〜〜〜〜〜〜|まつ〜

乙11111〜21乙|2333〜3゚3|65〜653゚3|2333〜3゚3
てんきょおの〜〜〜〜|ぜっけい〜〜〜|これ〜〜〜〜〜|せんショお

76_5766676|566〜76565|23333 5766〜7653゚3|3゚3〜3゚321乙
よる_ふこおして〜〜〜|ひとは〜〜〜〜〜〜|リュうとおの_いずるを〜〜〜〜〜〜|まつ

乙21|2121乙|3゚33_3゚3|6555〜653゚3|23〜3゚3〜
つきは|おつ〜〜〜〜|もんジュ〜〜〜|どおりの〜〜〜〜〜|かね〜

 

●8 書懐  書懐(しょかい)  篠原国幹(しのはら・くにもと)

有雨有烟又有雲
雨(あめ)有(あ)り烟(けむり)有(あ)り又(また)雲(くも)有(あ)り
雨が降り、霞がたちこめ、また、雲がでている

四百餘州乱紛々
四百餘州(しひゃくよしゅう)乱(みだ)れて紛々(ふんぷん)
日本全国、反乱で乱れて、紛々としている

腰間秋水今方試
腰間(ようかん)の秋水(しゅうすい)今(いま)方(まさに)試(こころ)みん
私の腰にさす名刀 秋水を今、まさに、試みてみよう

掃了妖邪謁国君
妖邪(ようじゃ)を掃了(そうりょう)して国君(こっくん)に謁(えっ)せん
邪悪な妖怪を退治して、天皇に謁見しよう

53゚3゚3|3゚5553゚〜33゚3|23_76〜7653゚3|3゚3〜3゚321乙
あめあり|けむりあり〜〜〜〜|また_くも〜〜〜〜〜〜|あり〜

乙11|3゚33〜3゚3|3゚655〜653゚3|2333〜3゚3
しヒャく|よシュう〜〜〜|みだれて〜〜〜〜〜|ふんぷん〜

37777〜676|5777〜6765|3゚3_766〜7653゚3|23゚3゚3゚3〜3゚321乙
よおかんの〜〜〜〜|シュうすい〜〜〜〜〜|いま_まさに〜〜〜〜〜〜|こころみん〜

211_1〜21乙|233323〜3゚3|3゚5555〜653゚3|23゚3゚3〜
よおジャを〜〜〜〜|そおリョおして〜〜〜|こっくんに〜〜〜〜〜|えっせん〜

 

●9 八陣図 八陣の図(はちじんのず) 杜甫(とほ)

功蓋三分国    功(こう)は蓋(おお)う三分(さんぶん)の国(くに)
諸葛孔明の功績は、魏・呉・蜀に三分する策を圧倒する

名成八陣図    名(な)は成(な)る八陣図(はちじんのず)
その名声は、八陣の図(石を積んで作った陣形)を作ったことで成っている

江流石不転    江(こう)流(なが)るるも石(いし)転(てん)ぜず
長江が流れても、石は転がらなかった

遺恨失呑呉    遺恨(いこんなり)呉(ご)を呑(の)むを失(しっ)す
残念です、呉を併合することに失敗したことは

53゚3゚2゚3゚3〜3゚3|56666〜7653゚3|23〜3゚321乙
こおはおおお〜〜〜|さんぶんの〜〜〜〜〜〜|くに〜

乙1_3゚3〜3゚3|3゚5555〜7653゚3|3〜3゚3
なは_なる〜〜〜|はちじんの〜〜〜〜〜〜|ず〜

7657766〜765|56〜7653゚3|23゚3゚3〜3゚321乙
こおながるるも〜〜〜〜|いし〜〜〜〜〜〜|てんぜず〜

21121〜233゚3|65655〜653゚3|233〜3゚3
いこんなり〜〜〜〜〜|ごをのむを〜〜〜〜〜|しっす〜

 

●10 漢江 漢江(かんこう) 杜牧(とぼく)

溶溶漾漾白鷗飛
溶々(ようよう)漾々(ようよう)として白鷗(はくおう)飛(と)ぶ
漢江が、盛んにそしてゆったりと流れていて、白鷗が飛んでいる

緑浄春深好染衣
緑(みどり)浄(きよ)く春(はる)深(ふこ)うして好(よ)し衣(ころも)を染(そ)むるに
緑がきよらかで、春は深く、衣を染めるのに都合がいい

南去北来人自老
南去(なんきょ)北来(ほくらい)人(ひと)自(おのずか)ら老(お)ゆ
人は、南へ北へと往来し、自然と老いてゆく

夕陽長送釣船帰
夕陽(せきよう)長(とこしなえ)に送(おく)る釣船(ちょうせん)の帰(かえ)るを
夕日が、いつまでも、釣り船が帰るのを見送っている

2゚3゚3゚3゚〜|3゚55552゚3゚33゚3|5666〜7653゚3|23〜3゚321乙
よおよお〜|よおよおとして〜〜〜|はくおお〜〜〜〜〜〜|とぶ〜

211211〜21乙|3゚3_23゚323〜3゚3|3゚3_3゚555〜7653゚3|2333〜3゚3
みどりきよく〜〜〜〜|はる_ふこおして〜〜〜|よし_ころもを〜〜〜〜〜〜|そむるに〜

766〜76|5666〜765|23_56666〜7653゚3|3゚3〜3゚321乙
なんキョ〜〜〜|ほくらい〜〜〜〜|ひと_おのずから〜〜〜〜〜〜|おゆ〜

乙111〜21乙|233333_233〜3゚3|3゚5555〜653゚3|3゚333〜
せきよお〜〜〜〜|とこしなえに_おくる〜〜〜|チョおせんの〜〜〜〜〜|かえるを〜

 

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