「齋藤孝 呼吸入門 角川新書 (2015) |
2017.7.5
気功の勉強のために、鎌田茂雄・帯津良一共著『気と呼吸法』を読んでいると、116頁で、次の文章にでくわしました。
1991年5月から1年間にわたって早稲田大学で、『呼吸の人間学』の研究会が開かれたことがあるんですが、この時のメンバーで、当時、東京大学の教育学部の大学院生であった齋藤孝さんという人が「息の現象学」と題して発表したなかで、
吸気に意識を集める。例えば、吸うときに『吸うぞ!』と意識し、吐くときは知らん顔している。また、吸うぞ! 知らん顔、と繰り返していると、だんだん興奮してくる。
反対に、吐くときに『吐くぞ!』、吸うときに知らん顔すると、だんだん落ち着いて、リラックスしてくるということを言っていたんです。
この『息の現象学』というのは、彼の博士論文の一部と聞いたようなおぼえがありますから、きっと活字になっていると思うんですが、どちらにしましても、吸気で自律神経のうちの交感神経が興奮し、呼気で副交感神経が興奮するということを示していると思うのです。
この齋藤さんは、マスコミによく登場するあの明治大学の斎藤さんと、同一人物でした。そこで、早速、本書を購入しました。
帯に、顔写真が載っていますので、間違いありません。累計15萬部突破とも、書かれています。
本書は、もともと、2003年に出版され、2008年には、角川文庫にもなったのですが、今回、「はじめに」を追加して、新書版となったとのことです。
2003年に、斎藤さんは43歳で、呼吸法とは、より強い自分になるための技法でしたが、それからほぼ10年がたち、鍛えるだけでは疲れるようになってきたそうです。
そこで公案したのが『ほぐし呼吸』で、高齢者の多い講演会などでは、これを実演するので、すでに何万人という人が体験しているとのことです。
ほぐし呼吸の詳細は、この本には、記載されていませんが、簡単に言うと
軽くひざの屈伸を使い、ハッハッと息を吐きながら、体を揺すって肩甲骨を軽く動かす
ということのようです。
高齢者は、呼吸する筋肉が縮こまっていて、息を大きく吸ったり、フーッと長く吐いている途中でむせてしまったりすることが多く、ほぐしが、必要なのです。
ほぐし呼吸の次に、3秒吸って、2秒止め、15秒かけて吐く 齋藤式呼吸法に進みます。
齋藤さんは、高校時代から長息法の練習をしており、長く息が続く事と、集中力が持続することが、深い関係にあることを実感していて、
また、大勢の小学生を教えた経験からも、勉強の得意な子、集中力のある子たちは、息を長く吐くことが得意で、
反対に、集中力のない子は、すぐにプハッとなってしまうそうです。
さて、はじめに に続く、本論は、以下の章からなっています。
第一話 なぜ「息」を考えるのか
第二話 呼吸力とは何か
第三話 息と心の関係
第四話 日本は息の文化だった
第五話 教育の基盤は息である
第六話 危険な呼吸法・安全な呼吸法
第七話 息を感じて生きる
少し内容紹介すると、第三話では、
呼吸の仕方は、脳神経系に直接影響を与えます。
息を長くゆるく吐き続けることによって、セロトニン神経系という攻撃衝動を抑える神経系がうまく動き出すのです。
意識的なリズムを刻む運動によってセロトニン神経が活性化するのだそうです。
もう一つ、意識的なリズムにより、人間のセロトニン神経系が働きだすようにする一番手近な方法は、歩くことです。
歩いている時は、呼吸は意外に乱れません。むしろ調っていきます。呼吸と動作が連動しているからです。
気持ちがこもって鬱々した気分になった時、あるいは集中力が持続できなくなってきた時、手っ取り早くからだや気持ちを目覚めさせる方法は、空気を入れ替えることです。
窓を開けて部屋の空気を入れ替えるのと同じように、からだからも息をどんどん吐き出して、リフレッシュさせる。
私がとても効果的なやり方だと思っているのは、「シェイキング」です。
からだを揺さぶり、息をハッハッとどんどん吐く方法です。とても簡単で、どこででもできます。
膝をゆるめて立ち、足の裏を床面から離さない程度に、膝の屈伸を使って軽くジャンプします。脚が床からはっきり離れるほど跳び上がらなくてもいいのです。
第六話では、斎藤さんの若い模索の時代に、気功や呼吸法の団体を巡ったときの体験が、たくさん書かれています。
一か所だけ引用すると、
気の世界と呼吸の世界は、ものすごく近い。しかし、呼吸のことをよく知りたいからといって、気の世界にはまり込むことで世界が深くなるとは考えないことです。
気の世界を知ること自体は悪いことではないのですが、そこに深く沈潜していくことは、さまざまな危険性をはらんでいます。
ホームページアドレス: http://www.geocities.jp/think_leisurely/
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