佐伯 松原 実践としての統計学 (2000) 

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2020.5.1

 この本の「まえがき」は、次のように始まることに期待して、購入しました。。

 以前から、統計学に関する本の多くが、さまざまな「手法」の紹介だけに終わっており、

統計学の諸概念の意味や考え方をさまざまな観点から批判的に論じたものが

ほとんどないことに不満をもっていた佐伯と松原は、

統計について何かこれまでのものとは違う「おもしろい本」は出せないものかと話し合った。

 さて、第一章 必要とされるときの統計学 は、Statistics in need is statistics indeed. の訳で、

わかりやすさを目指しているのですが、§1.2.3 標本分布 は、以下のように始まります。

 正規分布、χ2分布、t分布、F分布がこの順序で関係する。

統計理論家の間ではかつてこの標本分布論は花形分野であった。

しかし、それは理論家の問題で、利用者にはあまり関係ないことである。

もちろんそれは全体として重要でないという意味ではない。

統計学の理論を利用者にとって難解にする最大の理由はこの分布論にある。

もともと教える側からもわかりやすく説明するのは難しい箇所である。

統計学のテキストで、これら分布そのものの説明は、もしそれが関心を削ぐものであるなら、とばしてよい。

重要点を3点挙げる。

a) 標本分布−「分布表」のことである、といって差し支えない。

 主なものは、テキストの巻末に掲載されている場合が多く、主として有意性検定に用いられる。

幸か不幸か分布表は統計学の応用の正面から消えていく運命にある。

それはコンピュータがそれを内部にもつことになったからである。

b) 分布表の使用−コンピュータが算出してくれる時代であるから、不要という考え方もある。

(中略)

c) 分布の定義−確率論の応用である。あえていえば、ユーザーからは

ここまで知らなければ統計学がわからないというものではない。

 実務的な統計学を学ぶためには、コンピュータによる統計学を学ぶことは、避けては通れないようです。

2020.5.15

 さて、私がこの本を読みたいと思ったのは、統計学におけるフィッシャーと、ネイマンの論争について

詳しく知りたいと思ったからですが、いよいよ始まりますので、その冒頭部分を引用します。

1.4.3 仮説検定のロジック

 仮説検定はもともと、いわば首実験する仮説(「帰無仮説」という)の「有意性検定」(フィッシャー)であった。

この後、「対立仮説」(ネイマン-ピアソン)という考え方が導入され、「仮説検定」と称されるようになった。

これらが同じ考え方か異なった考え方か、統計学者の間で論争があった(フィッシャー-ネイマン論争)。

今日の統計理論は「ネイマン-ピアソン理論」といわれ後者が前者を含んだ、具合のいい混合ないしは

「雑種」となっていて、教える側も習う側も違いは意識しない。

 ただし、幸か不幸か、深く考えていくとユーザーにとってもこの違いに基く混乱が問題化することがある。

これは、ユーザーの責任ではない。これについては節を改めて次に解説する。

1.5 フィッシャー対ネイマン論争と今日の統計分析

1.5.1 論争の内容と基礎概念

 統計学のユーザーや初学者が統計学にこんがらがるのは、その人々のせいではないところがある。

そこはある程度安心してよい。

いま大学で教えられている統計学である「ネイマン-ピアソン理論」は、

実は「理論」というより「派」「流派」と理解した方がスッキリする点も少なくない。

対するのが「フィッシャ派」である。

二つの流派はそれぞれよくできているが理論的には微妙なところで食い違う。

現実にはこれが大きく違ってくる実践的場合もあって、そこでユーザーが混乱に取り残されるのである。

 仮に「先生」「弟子」と呼んでおこう。

この弟子は先生の理論を発展させれば先生は喜ぶと思った。実際、発展させたと確信した。

しかるに先生は喜ぶどころか、「発展」は誤解、曲解に基くと断じ、歪曲とまで言い切った。

弟子は最初は意図を説明し説得に努めたが成らず、ついに先生との大論争に踏みきる。

ここで「先生」はフィッシャー、「弟子」はネイマン、E.ピアソン(K.ピアソンの子)である。

 

 これに続き、論争の主題である検定の目的有意性検定対立仮説サンプルサイズ・至上主義

検出力ランダマイゼーションとランダム・サンプリング について、

さながら統計学基礎用語辞典のように、詳細な解説がなされます。

 

 

     

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