オズの魔法使い について

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2017.1.25

 子供のときに読んだ、オズの魔法使い が、今、手元にないので、どの翻訳で読んだかがわからないのですが、

オズの魔法使いには、たくさんの翻訳があります。子供向けに、短く、リトールドされたものが、沢山ありますが、

岩波少年文庫や、新潮、角川、ハヤカワなどの文庫ででているものは、完訳版と思います。

 手元に本がない人も、ウェブの「プロジェクト杉田玄白」というサイト http://www.genpaku.org/ で、

2006年11月に「オズの魔法使い」の翻訳が、加わりましたので便利です。http://www.genpaku.org/oz/wizoz.html

 

 さて、オズを英語で読もうとして、若いころから、買い集めた本が、手元に、いくつかあります。

Ballentine Books社の、Del Rey Book版が、4冊あります。

Book 1 The Wizard of Oz

Book 2 The Land of Oz

Book 3 Ozma of Oz

Book 9 The Scarecrow of Oz

 1979年から、1980年ころに出版されたものなので、アメリカに留学中に、購入したのだろうと思います。

Del Rei 版は、挿絵が、沢山入っていて、楽しく出来上がっています。原本にかなり忠実なのだと思います。

 また、Armada版のも、3冊あります。

Book 1 The Wizard of Oz

Book 2 The Marvellous Land of Oz

Book 14 Glinda of Oz

 これらは、1970年代前半に印刷されたもので、多分、アメリカで入手したと思います。

 今、オズのシリーズパンを入手しようとすると、Dover Children's Classics になるでしょうか。

 キンドル版では、0円か100円で、全巻が、入手できます。

 

 オズの続編の日本語訳は、Book 2 の「オズの虹の国」が、1975年に、ハヤカワ文庫で出版されたのが、最初のようです。

Book 2 は、Del Rei 版が、The Land of Oz, Armada版が、The Marvellous Land of Oz となっていて混乱の元なのですが、

両者を比較して、中味は、一緒のようです。

 オズ シリーズの翻訳としては、ハヤカワ文庫版に続いて、復刊ドットコムが、全15巻を出版しました。

第2巻のタイトルは、オズのふしぎな国 となっています。

 また、キンドル版で、 望林社完訳文庫が、Book 1-3 の3冊、出ています。

 

 さて、ここから、オズ シリーズを読む上での、豆知識を、さらに、書き連ねていきたいと考えています。

 

 まず、最初に、宮坂宏美さんが訳した、復刊ドットコム社の第2巻、オズのふしぎな国 を、図書館で借りてきたのですが、

その「訳者あとがき」に、次の豆知識が載っていました。

 ボームの 「オズの魔法使い」は、デンスロウという人の挿絵で出版し、大成功を収めて、演劇好きだったボームは、

舞台化してミュージカルにしたのですが、その収益の分配などで、二人は仲たがいしてしまったため、

第2巻以降の挿絵は、ニールという人に代わったのだそうです。

 

 二人の挿絵は、比較してみると、かなり趣味が異なりますが、基本的に、第1作が、最も有名なため、

オズの挿絵としては、デンスロウの挿絵の方が、有名です。

 

 オズは、かかしや、ブリキ男が、動いてしゃべる という、ロボットの発想で書かれています。

第1作では、かかしも、ブリキ男も、もともと生きていて、そこにドロシーがやってきて、動けるようにしてあげて、

一緒に旅をすることになっていて、何故、生きているのか、説明していないのですが、

第2作では、カボチャ男も、のこぎり馬も、命の粉をふきかけるという魔法によって、生命を得るというお話にしています。

 

2017.1.29

 オズの不思議な国 の翻訳が、半分終わったところです。

 図書館で、復刊ドットコムの、オズの魔法使いの 第1巻を、借りてきました。

 原著のタイトルは、The wonderful Wizard of Oz と、wonderful が付いたタイトルになっています。

Wikipedia のオズの項に、1900年の初版本の表紙の写真が載っていますが、wonderful が付いています。

1902年のミュージカルや、1939年の映画では、The Wizard of Oz というタイトルが使われたため、

書籍のタイトルにも、wonderful が付いたり、付かなかったりすることになってしまったと思われます。

 著者のボームは、1900年に、最初の本を書いたあと、続編の希望にこたえて、1904年に、第2巻を出版し、

ボームの亡くなった翌年の1920年に、第14巻が出版されました。

 第1巻の訳者後書きによると、ボームの死後も、同じ出版社から、トンプソンという作家により19冊、

第2巻以降の挿絵を描いたニールによって3冊、ほか、3名の作家によって4冊、続編が出版されたそうです。

 また、2000年代に入ってからも、ボーム財団の公認のもと、シャーウッド・スミスという人が、2冊続編を書いた

というので、Amazon で調べると

  The Emerald Wand of Oz,  2005  Sherwood Smith

   Trouble Under Oz   2006   Sherwood Smith

 の2冊に続いて、

 Sky Pyrates over Oz   2016    Sherwood Smith

と、つい最近、3冊目が出版されて、3部作が完成したとなっていました。

  3冊目は、キンドル版が、400円と安くなっていますので、購入しておきました。 いつか、読んでみます。

それぞれ、独立でも、読めると、わざわざ、解説してあります。

  

 アメリカでは、このように人気が高く、沢山、続編が出版されているのですが、日本では、第1巻のみで、

過去に、佐藤高子さんの訳で、早川書房から、全14巻のシリーズが出版されましたが、それも、絶版のため、

復刊ドットコムから、全15巻が、それも、新訳で、2011年から、約2年かけて、出版される運びとなったわけです。

 漢字には全部、振り仮名が付いていて、小さい子供にも読みやすい仕上がりになっています。

図書館などで、この本をみつけて、読み始めることのできた子供たちは、幸せだなと、羨ましく思います。

 

 さて、私は、今、第2巻の翻訳をしていますが、これは、もう少し、大きくなった子供に、

原書を英文で読んでもらうための翻訳ですので、、英文を読んで意味がわかるような直訳をしていて、

なるべく意訳は避けて、英単語の本来の意味を使って翻訳するよう、努力しています。

 日本語を直訳した英語を、英語をしゃべる人に話しても、うまく伝わるとは、限りません。

逆も同じです。英語の直訳は、英文の構造を理解するための、日本人のための翻訳です。

 

 第2巻の翻訳が、半ばとなり、他の巻の翻訳にすすむべきかどうか検討中です。

第3巻も、第2巻とは、雰囲気がかなり異なっていて、良い候補なのですが、

第6巻も、かなり強烈に面白そうなので、復刊ドットコムの巻を、図書館から、借りてきました。

 ボームは、この巻を最終巻にしようと思って書いたので、かなり、特徴のある仕上がりとなっています。

とりあえずは、この本を読んで、子供としての喜びを味わってみます。

 

 第6巻の「訳者あとがき」に、オズ・シリーズ翻訳チームが、フェイス・ブックに、「オズの国の名言集」を

展開していると紹介していましたので、覗いてみました。

 https://www.facebook.com/OzBooks15?sk=wall   復刊ドットコム公認 とうたってあります。

 2011年11月17日から始まったようです。

 https://www.facebook.com/OzBooks15/posts/200960989981281

 

 最初の名言は、第2巻の オズマ姫の言葉

「しかも、そのゆたかさは、持っている価値のあるただひとつのゆたかさよ -- 満足という名のね!」

でした。

 「満足という名のね!」については、私の翻訳では、「中味のゆたかさ なのよ!」 としました。

  

2017.2.3

  図書館で、ポプラ社の世界名作文庫版の「オズの魔法使いと虹の国」1985年 守屋陽一訳 を借りていました。

 この文庫でも、オズ シリーズが、6冊刊行されています。

 完訳ではなく、簡易訳ですが、読みやすくなっていると思います。

 例えば、出だしは

 オズの国の北のほうにある、ギリキン人の国に、チップという、ひとりの少年が住んでいました。

 チップは、ごく小さなころから、モンビというおばあさんに育てられていたので、両親のことは、なにもおぼえていませんでた。

 そして、このモンビというおばあさんは、魔法をすこしつかうというので、近所では、あまり評判がよくなかったのです。

と、平易にはじまりますので、子供に読み聞かせても、すんなり、わかるのではないかと思います。

 

 守屋陽一 (1930-1999) さんは、ウィキペディアによると、英米文学者として、多数の翻訳をされていましたが、

50歳をすぎてから、株式投資の入門書を沢山書かれ、同時に、「オズの魔法使い」シリーズを翻訳されたようです。

 

 巻末の解説で、守屋さんは、バウム (英語発音ではボーム) の特徴の一つは、センス・オブ・ヒューマーだとして、

カボチャ頭のジャックが、王様のかかし男に、通訳を要求した場面をあげています。

 守屋さんの簡易版訳で、少し、引用してみましょう。

 まず、王様のほうが、最初に口をきりました。

「あなたは、いったいどこからきたのですか?」

「失礼ですが、私には、陛下のおっしゃることが、よくわからないのです。」 と、ジャックがいいました。

 実際には、話が通じているのに、通じないとして、会話が進められていきます。

 そして、ジェリアという女の子が、通訳をするのですが、馬鹿げた役をやらされると分かっているので、

ハチャメチャな通訳をします。

 「では、まず第一に、ジャックに聞いてみてくれないか? なんの用でエメラルドの都にきたのか、とね。」

ところが、ジェリアは、かかしの王様の言った言葉を伝えるかわりに、

「あなたってとてもすてきだわ? だれに作ってもらったの?」 と、ジャックにむかって言いました。

「チップぼっちゃんに作ってもらったんです。」

「今、なんと言ったのかな? 私はどうも聞き間違えたようだ。」 と、かかしの王様が尋ねました。

「陛下の頭は、すこしボケてきたのではないか、と言っておいでになります。」  その少女は、すました顔でこたえました。

 かかしの王様は、玉座の上で、おちつかない様子で体を動かしながら、左手で自分の頭にさわってみました。

「2つの違った言葉がわかるのは、本当に素晴らしいことだ。その人に聞いてみてくれ。

エメラルドの都の王様を侮辱したという理由で、牢屋にいれられることに異存(いぞん)があるかどうか、とね。」

と、かかしの王様は、溜息をつきながら言いました。

「私は、侮辱なんてしてませんよ!」 と、ジャックは、腹だたしげに抗議しました。

「ジェリアが、私の言葉をちゃんと通訳するまで、待っていなきゃダメじゃないか。

そんなにせっかちに口をだしたんでは、何のために通訳がいるのか、わからなくなってしまう。」

と、かかしの王様は、ジャックに注意しました。

「わかりました。待つことにしましょう! お嬢さん、陛下の言葉を訳して下さい。」

と、カボチャ頭のジャックは、つっけんどんな口調でいいました。

「陛下は、おなかがすいていないか、と聞いていらっしゃいます。」

「すいてなんかいませんよ! 私は、ものを食べることができないんです。」 ジャックは、前よりは愛想よく答えました。

「私と同じじゃないか。今、このひとは何と言ったのかね?」 と、かかしの王様が言いました。

「陛下は、陛下の一方の目が、もう一方の目よりも大きく描かれているのを知っているか、と聞いていらっしゃいました。」

と、少女は、いたずらっぽく言いました。

「陛下、この少女の言っていることを信じてはいけません。」 と、ジャックが叫びました。

「信じてなんかいない。」

 まだまだ続きますが、引用は、このあたりで、止めましょう。

  

 私は、こういうジョークが大好きです。

 言葉を使った、このような遊びの世界は、慣れないと、重たいかもしれません。

しかし、こういう世界を楽しく感じられることは、頭のよい子を作ることに、大いに、役立つのではないかと、私は、信じています。

   

 不思議の国のアリスとか、ドリトル先生とか、ガリバー旅行記のように、上等に構成された奇想天外な物語を、

子供時代に読むことの大切さを、訴えたいと思います。

  

追記 2017.2.4

 私は、漫才を聞いて、大笑いするのが、大好きですが、あれも、頭の働きをよくする働きをもっていると思います。

日本人は、結構、優秀な娯楽を持っているのだなと、痛感します。

2024.03.22

 久しぶりに オズを読みました。アメリカ留学時代に買った本は、2017.1.25 の記事に書きましたが、

上記の記事を書いた頃に、ハヤカワ文庫版の翻訳書4冊と、英語版の The Emerald City of Oz を購入しましたので、

今回は、後者の英語版を読んでみました。

 ハヤカワ文庫版では、「オズのエメラルドの都」 (佐藤高子訳) というタイトルになっています。

 The Emerald City of Oz は、Dover 版で、オリジナルの Jno.R.Neil のイラスト付きです。

 この巻は、オズ シリーズの6巻目で、ボームさんは、これを最後の巻にしようと考えました。

そこで、エメラルド・シティが、悪の連合軍に攻撃される設定にします。

エメラルド・シティのオズマ姫は、戦わないと宣言し、ある方法で、窮地を解決します。

そして、オズの国の最も強力な魔女のグリンダは、今後、二度と攻められることがないように、

オズの国を、透明にして、誰にも見つからないようにしてしまいます。

そして、ご丁寧にも、著者のボームさんは、ドロシーから、お別れの手紙をもらいます。

You will never hear anything more about Oz,
あなたは、二度と聞かないでしょう、これ以上何も、オズについて、

because we are now cut off forever from all the rest of the world.
なぜなら、私たちは、今、遮断されているからです|永遠に|世界の他のすべての地域から|。

But Toto and I will always love you and all the other children who love us.
でも、トートーと私は、ずっと愛しています|あなたと、私たちを愛してくれる子供たちみんなを|。

                                   Dorothy Gale  ドロシー・ゲイル

 しかし、ここまで設定したにもかかわらず、続編を読みたいという希望が絶えなかったため、

幸いなことに、オズの物語は、まだまだ続くことになりました。

 この巻も、素晴らしい出来だと思いました。子供の時に、読めなかったことが、残念です。

 

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