小川榮太郎 約束の日 安倍晋三試論 (2012) 

2021.10.01

 この本は、第一次安倍政権が成立してから、無念の辞職に至るまでをカバーしています。

出版された時は、まだ、第二次安倍政権に、返り咲いていませんでした。

タイトルの「約束の日」は、安倍さんが目指した「戦後レジームからの脱却」という約束を果たす日

という意味で、安倍さんの返り咲きを待望するという意味です。

 「はじめに」で、政治評論家の三宅さんから訊いた話が紹介されます。

 朝日新聞の論説主幹の若宮啓文(よしぶみ)と会った時にね、

「朝日は安倍というといたずらに叩くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか?」

と聞いたら、若宮は言下に「できません」というんですよ。

で、「何故だ?」と聞いたら「社是だからです」と。

安倍叩きはうちの社是だと言うんだからねえ。社是って言われちゃあ・・・・。

 小川榮太郎さんは、この発言の確認は当人達に確認していない と断っていますが、

ウィキペデイアの若宮啓文の項では、「若宮は三宅に電話したところ「確かに言った」と返され

三宅は訂正には応じなかったと田原総一朗との対談で語っている」と説明されています。

 

 若宮については、さらに53頁で、週刊文春が平成24年5月17日号でとりあげた疑惑を紹介していますが、

続けて、

更に問題なのは、不正な経費で出張した、その理由である。若宮の出張は、

中国人民外交学会が主催する自身の著書の出版記念パーティーに出席するためだったが、

その学会は、事実上、中国外務省の別働部隊だというのである。

中国には言論の自由はなく、中国政府の諜報活動は極めて活発だ。

若宮は、露骨な親中、親韓の論陣を張ることで有名な人物である。

よく知られているのは、竹島を韓国に譲れという2005年3月27日付のエッセーだろう。

  例えば竹島を日韓の共同管理にできればいいが、韓国が応じるとは思えない。

  ならば、いっそのこと島を譲ってしまったらと、夢想する。

 外国政府と内通して日本の世論を誘導しているようにしか見えないこの記事は、さすがに問題になった。

だが、世論の糾弾を受けることなく、若宮は朝日新聞の主筆という頂点に上り詰めている。

 

 第3章は、教育基本法改正です。

 安倍政権は、組閣後、まず、教育基本法改正 に取り組み、小泉内閣でも実現できなかった改正を、

高速で実現しました。

 安倍内閣が提出した改正案に、朝日新聞と読売新聞が行なった世論調査では、

「愛国心規定」賛成が56%(朝日)、基本法改正賛成66%(読売)と、高い支持率だったのですが、

野党は、反対に回りました。

66頁で、小川榮太郎さんは、以下のように語ります。

朝日新聞も、反対運動を70件掲載する一方、賛成派の動きを伝える記事はたった3件しか掲載しなかった。

教育基本法改正は、朝日も含む各社世論調査で、共通して、2/3前後の国民の賛同を得ていたのだ。

朝日の報じるように、連日反対運動のみが多発していたはずはない。

 しかもこれには、朝日が報道しなかった裏があった。

 

 日教組 教基法改正阻止に3億円投入、デモ参加15000人

 日教組の反教育基本法改正運動への支出が3億円に上ることが24日、分かった。

教師が平日も国会前でのデモに参加していることに対し、自民党幹部からは

「高い給料をもらいながら政治活動していいのか」(中川昭一政調会長)と批判がでているが、

日教組は「授業代行を他の教師に頼み、年休を取って活動している」(組織局)と

組合費支出や運動の正当性を強調している。

 関係者によると今年4月〜10月、教育基本法改正反対運動のため日教組が主催した

国会前デモ行進や都内での集会などは7回行なわれ、組合員延べ15000人が動員された。

ほとんどが現役の教職員で、交通費や宿泊費、食費は日教組が負担した。

さらに、25日には東京都千代田区の日比谷公会堂で3000人規模、12月8日には1万人規模の反対集会を予定。

ビラ作成や新聞への意見広告掲載費も組合費から支出しており、反対運動への支出は約3億円に達する見込みだ。

  日教組は10月26日、同法改正に反対し31年ぶりに「非常事態」を宣言しており、「近年にない取り組み」(連合関係者)という。(産経11月25日付)

 

 つまりこういうことだ。本来国民による自発的な反対運動などはなかった。

たかが15000人を動員するために、3億円も投じなければならぬほど貧弱な日教組中心の「運動」を、

朝日新聞は、その仕組みを隠し、広範な国民運動であるように誇張して、報道し続けたわけである。

 安倍総理は、7ヶ月後に参議院選挙を控える大切な時期に、マスコミを敵に回す政治を平然と敢行してしまいます。

小川さんは、以下のように語って、第3章を締めくくります。

 小林秀雄はエッセー「ヒトラーと悪魔」(『考えるヒント』所収)の中で、ヒトラーの大衆操作術を次のように要約している。

   大衆が、信じられぬほどの健忘症であることも忘れてはならない。

  プロパガンダというものは、何度も何度も繰り返さねばならぬ。

  それも、紋切り型の文句で、耳にたこが出来るほど言わねばならぬ。

  但し、大衆の眼を、特定の敵に集中させて置いての上でだ。

 反安倍勢力は、このヒトラーの方法論に従った。

 教育基本法そのものを叩いて成果を上げられなかった彼らは、

スキャンダル叩きに方向を転じ、「紋切り型」の集中砲火を浴びせ始める。

 それは、親教育基本法が成立した12月15日の直後に始まった。

(中略)

 チンピラの虚勢ではなかったのである。年明けと共に、安倍官邸も安倍内閣も、

さながら焼夷弾の嵐に見舞われたように、みるみる廃墟となっていく。

しかし安倍は決して闘いをやめようとはしなかった。

 

 

 

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