呉善花 反目する日本人と韓国人 (2021) |
2023.09.07
呉 善花(オ・ソンファ、1956年 - )さんは、韓国生まれで、1983年に訪日、上野の韓国系ホステスクラブで働きました。
そのときの源氏名の呉善花を、ペンネームとし、その経験で、日本で働く韓国人ホステスを題材とした『スカートの風』『続 スカートの風』『新 スカートの風』を執筆し、デビューします。
呉さんは、日本に来た時に、日本が大好きになるのですが、二三年して、逆に日本が大嫌いになります。
そのことは、彼女のいくつかの本に書かれているのですが、
この本に、一番たくさん、まとまって書かれていると思います。
以下に、少し、ご紹介します。
25頁
まず、来日1年目。韓国人は、日本人にとても良い印象を持ちます。なぜなら、韓国では、強烈な反日教育が行われていて、日本人イコール野蛮人・未開人として教えられているからです。でも実際に付き合ってみると、みんな親切で思いやりがあって、とっても爽やかで、そして街並みはとても清潔です。
(中略)
そして来日2、3年目。表面的な付き合いだけではなくて、内面的な付き合いをしていくことになります。1年目は、日常会話さえできればよかったのですが、2年目、3年目ともなると、以前より一歩踏み込んだ付き合いに入っていくようになります。
このころから、日本人のことを知れば知るほど、日本人のことが分からなくなっていきます。日本人の考え方や価値観が、韓国人とはまるで逆であることに気がつくからです。
具体的にいえば、韓国の常識が通じないことを知るのです。韓国では「白」とされることが、日本では「黒」とされる。習慣や美意識、人間関係のあり方、何もかもが韓国と違う。そのため、多くの韓国人はひどく落ち込み、悪くすると「ウツ的」な状況に苦しんでしまいます。
問題は、この2、3年目の時期で立ち止まってしまう人、そこでぶつかった壁を乗り越えることを諦めてしまう人がかなり多いということです。そのことは、今の日本と韓国との間の大きなギャップを象徴していると思います。
呉さんが、最初にぶつかったのは、敬語の使い方の違いです。韓国は、儒教社会なので、敬語の使い方が日本と真逆になるのです。
20頁
例えば、私にとっては、家族、お母さん、お父さんがとても大切、ですから、外から電話がかかってきたときなどは、「うちのお父様におかれましては、今いらっしゃいません」という言い方をします。
来日したばかりのころ、敬語の使い方について、カルチャーショックを受けたことがありました。アルバイトの会社から、とある会社に電話をかけ「鈴木社長様はいらっしゃいますか」と訊ねたところ、相手の女性が「鈴木は席を外しております」と答えました。「鈴木」と呼び捨てなのです。私は、「この鈴木社長は、社員の女性に舐められているに違いない」と思ってしまいました。
それからしばらくして、「日本人は身内のことを外の人に言うとき、敬語を使わない」ということを知り、社長が舐められているわれではない、とわかったのですが・・・・。
この敬語の使い方の問題は、お互いに、自分の使い方の方が正しいと思っているだけでなく、相手の使い方の方が間違っていると思うので、かなり深刻な問題ですね。
日本の飲み会で、日本人女性がお酒を注いで回ることがありますが、韓国では、これは水商売の女性の仕事です。女性は、自分のお父さんと旦那以外の男性にお酒を注いだりしないそうです。
また、靴の脱ぎ方や、座り方も違うようです。
40頁
家の中に入り、靴を脱ぐときにも、イヤな思いをします。日本でも韓国でも、部屋に上がるときは靴を脱ぐ、という習慣があるため、安心して靴を脱ぎ、部屋に入ります。しかし、日本人は、韓国人が脱いだ靴を、わざわざ揃え、つま先を外側に向けて置きます。
これを見たとき「なんて窮屈な国なんだ・・・・」と思うのです。韓国人は、靴の向きも乱れるも気にせず、脱いだまま部屋に上がるのが普通だからです。
座り方もそうです。「床に座布団を置く」という習慣は韓国にもありますが、日本人が当たり前のようにする「正座」は、韓国ではしません。(中略)
では、韓国ではどう座るのかというと、左足はあぐらをかき、右足は膝を立てて座ります。これが、日本の正座に当たります。伝統的なチマチョゴリの裾が長いことから生まれた座法です。
しかし、チマチョゴリを着なくなったいまもされている座法なので、ミニスカートを穿いた女性が立て膝を立てている様子をみて、日本人男性はびっくりします。最近では、立て膝ではなく、あぐらをかいて座るのが主流です。
いちいち靴を揃えるのは、窮屈だという感覚は、たとえば、外で、ゴミをポイ捨てするのはだめで、持ち帰りなさいと言われたときに、窮屈だと反発するのを許してしまったら、街はいつまでも清潔にならないので、なんとかして欲しいですね。
こういう慣習の違いは、若い世代が、付き合っていくなかで、時間をかけて、解消してもらいたいと考えています。
また、美意識にも、大きな違いがあります。
呉さんは、韓国のステンレス製の食器は、日本人は品がないと感じているのを知って、ショックを受けたそうです。
近代以前、上流の人達は高価な真鍮で造った金色に輝く食器を使っていました。銅の成分が多くて磨かないと錆びるのですが、磨けばキラキラと光るので、庶民たちのあこがれの的でした。
104頁
一般庶民は近代に入ってもなお、このキラキラ輝く真鍮製の食器にずっとあこがれ続けてきたのですが、戦後にある企業が開発して磨かなくてもキラキラと輝く食器を考え出したのです。それがステンレス製の食器なのです。
磨かなくても美しく輝くステンレス食器、これが普及したのは私が子どものころでしたが、あっという間にどの家庭にも行き渡っていきました。どの家の台所をみても、ステンレスの食器でピカピカ輝いている。子ども心ではありながら、「ステンレスの食器はなんと美しく品があるのだろう」と思っていて、日本に来る20代後半まで、この食器に品がないなどと思ったことはありませんでした。
そのため、ステンレス製の食器に品がないと言っていた日本人に、「では日本で品のある食器とは何ですか」と聞いたところ、非常に大事そうに見せてくれたのが茶器でした。おそらく備前焼か信楽焼だったと思います。(中略)
彼は「物によっては1蔓延のものもあれば、100蔓延するものもある」と話していたのが忘れられません。
私の眼には、いくら見ても品がなく、まるでペットの犬用の茶碗のようにしか見えなかったからです。私からするとまったく良いと思えないものが、日本では品があると思われている。どうしても理解できませんでした。
呉さんは、しかし、日本に長く滞在するにつれ、日本の食器の良さを理解するようになったそうです。現代の韓国人は、ステンレス製の食器のことを、どう思っているのでしょうか?
目次
第1章 カルチャーとコミュニケーションの行き違い
小さな違いが大きな誤解につながっている
反日感情はなくならない?
付き合えば付き合うほど悩む
夫婦関係から垣間見える文化の違い
日本より北朝鮮のほうが好き?
「日本人は人間ではない」と書いた韓国人女性ジャーナリスト
噛む音を出さないと飢え死にする!?
日本人は「あぐら」にびっくり、韓国人は「正座」にびっくり
勝手にコーヒーを入れることが友達の証
腕組みをかわされると寂しくなる
「間」をとる日本と「間」をとらない韓国
徐々に距離を詰めていく日本人
分かってほしいから馴れ馴れしくする
謝っても謝っても、許してくれない理由
謝罪は感情的でなければ意味がない
感謝のニュアンスもかなり違う
多情な韓国人、社交辞令の日本人
仲良くなるほどもらいたくなる
上から与えることが助ける
第2章 「美」に対する感性の差異
自然的なものと人工的なもの
日本人は「満開の花」は好まない
韓国では20代が一番美しい。日本では中高年のほうがきれい?
派手な色彩で輝いていることが好ましい
満月だけが美しいのか?
バランスを保ちたいという感覚
「かわいい」と「ずらし」
韓国のステンレス製のお茶碗は、日本人にとつて「品がない」
「もっと食器を集めたい」と追い求める
今やおいしく感じられる日本の伝統的なコーヒーカップ
日本人には美人が少ない?
きれいな目に厚い化粧をするというポイント
「美人」よりも「かわいい」が褒め言葉
第3章 男と女と、家族の在り方
日本で再ブームの韓国ドラマ
いたるところで男性が女性を誘う
コーヒーショップは口説きに最適
気に入った女性を逃すのはみっともない行為
「冬のソナタ」てせも誘い方がしつこい
日本人女性は韓国人男性にモテる?
警察に連れていかれても付きまとう男
韓国では女性から惚れるとうまくいかない
結婚後、男性の態度は一変する
息子を産むことが嫁の使命
離婚する夫婦は増え、出生率も急減
「1人出産するならば、男の子がいい」と考える韓国人
今でも行われている未婚者の「死後の結婚」
永遠に死なずに済む方法
未婚のまま死んだ人は地域を呪う
第4章 韓国独自の歴史観
日本に対する優越感
「おかげさまで」の精神は、日韓で真逆
日本に「与えてあげた」という感覚
「日本は韓国だった」というトンデモ本
文大統領の言葉に沸く YouTuber たち
韓国人の根底にあるのは「恨(ハン)」
夫に抱く「怨讐(ウォンス)=敵」という感情
怨恨を残して死ぬと、この世に不幸を撒き散らす?
日本人の性質は「もののあわれ」と「潔さ」
男女の別れ、諦めるか引きずるか
「不老長寿」が一番大切な韓国人
「自分は被害者でありたい」と願う人々
今でも愛される「恨(ハン)」の歌
韓国人は、ユダヤ人の境遇に自分を投影する
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