中島義道 加賀野井秀一 うるさい日本を哲学する (2007) 

2016.7.5

 中島さんは、日本の公共空間に流れる案内放送が大嫌いです。

電車に乗っても、「駆け込み乗車は・・・・・、携帯電話は周りのお客様の・・・・、降りましたら電車から離れて・・・・、席をつめて一人でも多くの・・・・、暑くなってきましたので、窓際の人は・・・・」という放送だらけ。

銀行に行っても 「お待たせしました。○番の番号札をお持ちの方○番の窓口へどうぞ。(中略)」 という「音」を何十回も聞かねばならない。

 このような「音」に非常な不快と怒りを覚え、「うるさい日本の私」という本をかかれました。

 中島さんは、これらの音を騒音と感じ、憎しみすら覚えられるのですが、中島さんにとって残念なことに

日本人の殆どは、これらの音を騒音とは感じていません。

 私も、その一人です。電車内では、車内放送で目的の駅が近づいてくるのを確認しながら、基本的に目をつむって、何かを考えています。

電車の乗り換えの案内は、英語では、Please change here for 〜 なのですが、山の手線などの案内の声はクリステル・チアリという人で、

かなりなまっていて、そのように聞こえないので、聞くたびに、彼女の発音を楽しんでいます。

 

 そういうこともあって、中島さんの本を読むつもりはなかったのですが、今回とりあげる本は、加賀野井さんとの共著です。

加賀野井さんは、「日本語は進化する」という本を書かれていて、共感する内容でしたので、私のホームページで取り上げたことがあります。

幸い、図書館にあったので、読んでみました。

 

 さて、中島さんは、音が大きくてうるさいのではなく、話されている内容に我慢ができません。

成田空港で、2007年3月から機内持ち込み手荷物に入れられる液体が100cc以下で、

検査時に透明なビニール袋にいれて見せなければならないというルールになったため、

手荷物検査の前にできた行列に向かってメガフォンで、「液体は100cc以下です。それを透明な・・・」 と説明している若い係員に、

中島さんは、「やめなさい。」と怒鳴りつけ、かくかくの理由であなたの言っていることはまるで伝わらないと告げ、

責任者を呼ぶように訴え、でてきた上司が 「それでも間違える人がいますので」 と弁解すると

「そういう人に合わせることはないでしょう」

「でも、知らなかったと苦情を言われますので」

「こんなにビラが壁一面に貼ってあるし、それでもわからない人は馬鹿なんです。そんな客に何で迎合するんですか、

そういうあなた方の態度によって、自分でよく調べてわかっている客もまた、何十回もばかばかしい告知を聞かねばならないことになるんです」

というような問答を繰り返します。

 

 確かに、何十回も聞かされたくはありませんが、緊張していて、数回アナウンスしたくらいでは気が付かない乗客も結構いますので、

多くの人はしかたないと思っているのですが、気に障って、我慢できない人もいるのですね。

 

 中島さんは、女性が電車の中で化粧するのも大嫌いで、「化粧、やめてください。」と注意するのですが、

注意しても止めない人がいたので、まん前の席に移動して写真を撮ろうとしたら、突然立ち上がって降りたので、

自分も降りて、おっかけていき、取り押さえて、「なんであなたは私の言うことをきかないんですか。」と問うと、

「イヤフォンのため聞こえませんでした」という返事だったそうです。

 

 さて、加賀野井さんも、中島さんと同じく、ずけずけと文句を言うという「日本人離れした行動様式」を持つ方でした。

エピソードを一つ紹介します。

 私の「注意」歴は30年ぐらいになりますか。何だかんだとうるさいことを言ってきましたが、もうこの年になると体がもたない。

そこで、ついにこの間、自分の中で準則をつくることにしました。

多少、目に余ることがあっても、自分のごく近くの人にしか注意しないことに決めたんです。

以前は、電車の中でも、車両のむこうの方で、ヘッドホンのシャカシャカ音を流している人間がいると、

いちいち注意しに出かけていたのですが、もうやめることにしました。

 そんな宣言をすると、息子たちに「そいつはよかった。それにしても、お父さん、今まで30年もそんなことをやってきて、

よく刺されないですんだね」と言われました。まあ、刺されそううなときも何度かあったのですが、

それをなんとか回避できたのは、経験の中でいろいろ学んできたからなんでしょうね。

 

 私も、息子さんたちの意見に賛成です。世の中には、むしゃくしゃしていて、何でもよい、ぶっ壊してやりたいと思っている人がいます。

また、やさしそうで弱そうな顔つきをしている人は、特に気をつけましょう。

中島さんの別の本で、中島さんのように人に注意したら、殴られたという若者の話がありました。

 

 騒音問題といえば、私が、一番気になっているのは、幼稚園や保育園の新設が町内会の反対で、認められなかったり、

高い塀で囲んでやっと認められるというような問題です。

 嫌煙権が認められるまでに、長い時間がかかりました。音については、どのように進展していくでしょうか。

 

         

ホームページアドレス: http://www.geocities.jp/think_leisurely/


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