松本淳 日本漢文の世界 

2019.4.4

 日本漢文の世界 という立派なサイトがあります。   https://kambun.jp/

 著者は、松本淳さんで、日本漢文とは、日本人が書いた漢文学作品のことで、

現在は、頼山陽の日本外史の紹介を進めておられます。

 トップ頁の目次を見ると、日本漢文へのいざない というコーナーがあります。

その内容は、以下の通りです。

第一章 漢文と日本文化

第二章 漢文と中国語

第三章 日本漢字音と字音かなづかい

第四章 漢文訓読法について

第五章 読解のための漢文法入門

 ここでは、第五章について、内容を紹介したいと思います。

第五章の詳細目次は、以下のとおりです。

第一節 漢文法へのいざない

 (1.1) 漢文法と訓読

 (1.2) 漢文の特徴

 (1.3) 漢文の基本句式

 (1.4) 三つの基本句式

 (1.5) 無主句について1

 (1.6) 無主句について2

 (1.7) 複句について

第二節 詞と短語

 (2.1) 詞(単語, word)について

 (2.2) 詞類(品詞, prats of speech)について

 (2.3) 複合詞(compounds)について1

 (2.4) 複合詞について2

 (2.5) 短語(phrases)について

 (2.6) 定中短語

 (2.7) 状中短語1

 (2.8) 状中短語2 否定句と介賓状語

 (2.9) 述賓短語1 賓語(目的語)のいろいろ

 (2.10) 述賓短語2 形容詞の意動賓語

 (2.11) 述賓短語3 注意すべき賓語

 (2.12) 述賓短語4 比較の表現

 (2.13) 述賓短語5 謂詞・賓語の倒装

 (2.14) 双賓短語1 二重の目的語

 (2.15) 双賓短語2 第二賓語が処所賓語の場合

 (2.16) 聯合短語

第三節 主謂短語(ネクサス)

 (3.1) 主謂短語(ネクサス)

 (3.2) 主謂主語句(ネクサス主部)

 (3.3) 主謂謂語句(ネクサス述部)

 (3.4) 之字短語(定中短語)の構成要素としてのネクサス

 (3.5) 之字短語がネクサスとなる場合

 (3.6) 之字短語がネクサスとなる場合2 「於」の用法

 (3.7) 之字短語がネクサスとなる場合3 主謂主語+主謂謂語

 (3.8) 之字短語がネクサスとなる場合4 介詞+主謂主語

 (3.9) 主謂賓語(ネクサス目的語)について

 (3.10) 主謂賓語(ネクサス目的語)による使令句(使役文)

 (3.11) 有無句の主謂賓語(ネクサス目的語)

第四節 特殊な短語

 (4.1) 者字短語

 (4.2) 者字短語2 名詞+者

 (4.3) 者字短語3 長い短語+者

 (4.4) 者字短語4 者字短語の否定形

 (4.5) 所字短語1

 (4.6) 所字短語2 所字短語が賓語を取る場合

 (4.7) 所字短語3 ネクサスとしての所字短語

 (4.8) 所字短語4 ネクサスとしての所字短語2

 (4.9) 所字短語5 所字短語による被動句

 (4.10) 所字短語6 「所謂」(いわゆる)

 (4.11) 所字短語7 所以(ゆえん)

 (4.12) 所字短語8 所者短語1

 (4.13) 所字短語9 所者短語2 所謂と所以

 最終頁の公開日は、2007年11月11日ですが、まだ、未完です。

 

 (1.2) 漢文の特徴 で、漢文は、口語ではなく、文語として発達したという重要なことが指摘されます。

漢文は、話言葉ではなく、文章として書き記しておくための言語なのです。

 (1.3) 漢文の基本句式 における は、 のことで、現代中国の文法家の用語だそうです。

 以下、中国での文法用語が用いられますので、対応する日本語を示しておきます。

  句式 = 構文

  主語 = 主部   無主句 とは、主語の無い文

  謂語 = 述部

  賓語 = 目的語

  詞   = 単語

  定語 = 連体修飾語   例  高山 の 高  高い山

  状語 = 連用修飾語   例  軽視 の 軽  軽く視る

  複合詞 = 二つの詞が結合したもの 二字のものが多い  例 高山 氷解

    組合式 (ジャンクション)  首品(中心詞)に修品(修飾詞)が結合したもの  例 高山

     ジャンクション定中式  定語+中心詞  例  高山=高い山、流水=流れる水、賢母=賢い母

     ジャンクション状中式  状語+中心詞  例  馬食=馬を食う、軽視=軽く視る

     ジャンクション聯合式  中心詞+中心詞 例  父母、弱小=弱く小さい

     ジャンクション述賓式  例  読書=書を読む

    連系式 (ネクサス)     首品に述品(述部)が結合したもの   例 氷解

     ネクサス主謂式     主語+謂語 例 氷解 日没

  短語(phrases) 複合詞よりも詞同士の結びつきが自由な組

    定中短語  定語+中心詞  例 眉山市井人 in  太初眉山市井人也 (太初は眉山の市井の人なり)

    状中短語  状語+中心詞  例 甚美 in 花甚美(花、甚だ美し) 美甚 in 花美甚(花美なること甚だし)

    述賓短語  述語(動詞・形容詞)+賓語   例 汲水 水を汲む

    双賓短語  述語(動詞・形容詞)+賓語+賓語  例 問之年 in  或問之年(或る人、之に年を問う)

    聯合短語  例 

    主謂短語  例 

      主謂主語  主謂短語が主語となる場合

      主謂謂語  主謂短語が謂語となる場合

 

 (1.5)(1.6) 無主句について では、漢文には、主語のない句、すなわち、無主句 が多い事が指摘されます。

   例 有尊客 (尊客有り) は、主語のない、謂語だけの文章です。

 (3.4) から(3.8)で、之 の字が使われる例 を取り上げています。

 (3.4) 之字定中短語  例 余至扶風之明年。   余、扶風に至るの明年。

               例 天下畏皐陶執法之堅。  天下、皐陶が法を執るの堅きを畏る。

 (3.5) 之字主謂短語  例 人之生也柔弱  人の生まるる也(や)柔なり弱

 (3.6) 之字主謂短語  例 父母之於子、人倫之極也  父母の子に於けるや、人倫の極み也

 (3.7) 之字主謂主語+主謂謂語  例 章懿之崩、李淑護葬  章懿の崩ずるや、李淑、葬を護る

 (3.8) 方の字が付いた之字短語 例 方秦之未得志也、使復有一孟子、則申韓為空言

  秦の未だ志を得えざるに方(あた)りてや、復ひとりの孟子有ら使めば、則ち申・韓は空言と為りしならん

 (3.9) 主謂短語が賓語である主謂賓語の場合

  例 余愛其語有理 余は、其の語の理が有るを愛す。

 (3.10) 主謂賓語による使役句 例 王使妓吹笛 王は、妓をして笛を吹かしむ

 (3.11) 有無句の主謂賓語 例 有朋自遠方来、不亦楽乎  朋の自遠方より来る有るは、亦楽しからずや

  この文は、朋有り、遠方より来たる、亦楽しからず乎 とも読み下されます

 (4.1)から(4.4)は、者の字を使う例です。

 (4.1) 時を表す場合があります。 例 古者=むかし、昔者=むかし、今者=いま

 (4.2) 名詞+者 の場合。 例 封建者、争之端而乱之始也  封建なる者は、争いの端にして乱の始めなり。

  封建者 は、封建とは封建は、と読むこともあります。

 (4.3)は、長い短語+者の場合 例 今天下屯聚之兵、驕豪而多怨、陵圧百姓而邀其上者、何故

   今、天下屯聚の兵は、驕豪にして怨み多く、百姓を陵圧して其の上(かみを邀(さえ)ぎる者は、何故ぞや

 (4.4)は、者字短語の否定形で、不ではなく、非を用います。

  例 此非孟之困於周郎者乎   此れ孟の周郎に困しめられし者(ところ)に非ずや

 (4.5)から(4.13)は、所の字を使う例です。

 (4.5) 所字短語は、後ろにくる動詞、形容詞と一体化て、名詞性短語になります。

   例 所忍=忍ぶ所、我慢すること、

 (4.6) 所字短語が賓語を取る例  例 所見人物、皆吾画笥也  見る所の人物は、皆吾画笥也

 (4.7)は、名詞+所字短語が主語となり、謂語を伴って、ネクサス主謂式となる例です。

  例 周文武所封子弟同姓甚衆 周の文武の封ずる所の子弟は、同姓甚だ衆(おお)し

 (4.8)は、之字を伴う所字短語の例です。

  例 時非聖人之所能為也  時は、聖人の能く為(つく)る所に非ざる也

 (4.9)は、所字短語が、動詞「為」の賓語となるとき、受身の文を形成します。

  例 或為鳥鵲所啄。 或は鳥鵲の啄ばむ所となる=鳥鵲に啄まれる。

  例 此木不為人所喜。此木は、人の喜ぶ所とならず=人に喜ばれない。

 (4.10)は、所謂(いわゆる)を用いる慣用的用法の例です。

  例 此臣所謂大患也。 此れ臣の所謂、大患也。 これは私のいわゆる大患です。

  例 此所謂忠厚之至。 此れ、いわゆる忠厚の至りなり。 

 (4.11)は、所以(ゆえん)を用いる慣用的用法の例です。

  例 此其所以為子房歟。 此れ、その為子房(た)る所以なる歟(か)。

  例 然鹿之所以美、未有絲毫加於煮食時也。然るに鹿の美なる所以は、未だ絲毫も煮食の時に加うる有らざる也。

 (4.12)は、者字短語と所字短語がセットになった短語の例です。

  例 所不見者、独鬼神耳。 見ざる所の者は、独り鬼神のみ。

  例 蓋公之所能者、天也。  蓋し公の能くする所の者は、天なり。

 (4.13)は、所謂短語と者字短語がセットになった短語の例です。

  例 此所謂不能為時者也。 此れいわゆる時を為(つく)る能わざる者也。

 

    

 


 

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