古田島洋介 湯城吉信 漢文訓読入門 (2011) |
2020.4.22
本書は、基本、漢文の教科書ですが、開いてみて、少し、感じが違います。
漢文の文化・歴史的な側面にはふれず、言語学的な歴史に、話をしぼったからかもしれません。
私は、漢文の日本語訓読だけでなく、漢音音読みについて、考察するために、この本を選びました。
【定義】 漢文とは、古典中国語の文語文すなわち書き言葉を用いた文章を指す。
【定義】 訓読とは、古典中国語の語順を返り点によって日本語の語順に変換し、
それぞれの語句に日本語の音読み・訓読みを当てはめて読解してゆく方法をいう。
古典中国語を、日本では、訓読によって読みますが、中国では、現代中国語に翻訳して読むしかありません。
論語の言葉を、現代中国語に翻訳した例が載っているので、引用します。
論語 子路篇
原文 子路曰 衛君 待子 而 為政子将奚先 子曰 必也正名乎
訓読 (書き下し文)
子路曰く、「衛の君(きみ) 子を待ちて (而して) 政(まつりごと)を為さば 子 将に 奚(なに)をか先(さき)にせんとする。」と。
子曰く、「 必ずや名を正さんか」と。
現代中国語訳
子路説 「衛国国君等老師去替他幹政治、老師打算先做什麼?」
孔子説 「那我一定要先糾正一切不当的名義!」
原文を日本語に直訳すると
子路曰く 「衛の君主が子(先生)を招いて政治を行うとすれば、子(先生)は何を最初に行いますか?」
孔子曰く 「必ずや、名を正しますよ」
くらいの意味ですが、現代中国語も、かなり言葉を置き換え、追加して翻訳せざるを得ないことが分かります。
古典中国語の文法解釈は、日本の書き下し文にこそ、明確に表れていると思います。
【定義】 漢字の音読みとは、古典中国語の発音が日本風に訛ったものである。
日本には、中国から、呉音、漢音、唐音の三つの音種が伝わり、今に、残っています。
行 は、呉音では、ギョウ 例 修行。 漢音では、コウ 例 行進。 唐音では アン 例 行灯(あんどん)
呉音は、仏教の伝来と共に伝わり、現代でも、お経は、呉音で唱えられています。
漢文の音読には、漢音が使われるのですが、厳密ではなく、呉音が使われることもあります。
門 は、呉音で、モン。漢音で、ボン ですが、入門 は、ニュウモンと発音します。
情 は、呉音で、ジョウ。漢音で、セイ ですが、漢文では、ジョウと読みます。
輸 は、呉音・漢音ともに、 シュ なのですが、日本では慣用的に ユ と発音します。 例 輸入
一日 は、呉音でイチニチ、。漢音で、イツジツ ですが、漢文では、イチジツ の混ざって読みます。
【定義】 再読文字とは、一つの文字でありながら二度にわたって発音する文字をいう。
これは、漢文を、その語順のまま、日本語として読むための工夫です。
例
未 未知 未だ知らず
将 将来 将に来たらんとす
且 引酒且飲之 酒を引きて且(まさ)に之を飲まんとす
当 黄天当立 黄天当(まさ)に立つべし
【定義】 置き字とは、発音しない文字をいう。
例
順接の而 学而時習之 学びて時に之を習う
寂説の而 視而不見 視れども見えず
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