門田隆将 吉田調書を読み解く (2014)

2023.09.15 

 「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を書いた著者が、吉田所長を貶める朝日新聞の報道に対して、詳しく反論した本です。

 朝日新聞は、最後まで、原発に残り、決死の対策を試みた東電社員を、以下のように貶めました。

26頁 朝日新聞デジタル
 福島第二原発への所員の大量離脱について、東電はこれまで、事故対応に必要な人間は残し事故対応を継続することは大前提だったと、計画通りの行動だったと受け取られる説明をしてきた。
 外国メディアは残った数十人を「フクシマ・フィフティ」、すなわち福島第一原発に最後まで残った50人の英雄たち、と褒めたたえた。
 しかし、吉田自身も含め69人が福島第一原発にとどまったのは、所員らが所長の命令に反して福島第二原発に行ってしまった結果にすぎない

朝日新聞5月20日付朝刊2面
 吉田調書が残した教訓は、過酷事故のもとでは原子炉を制御する電力会社の社員が現場からいなくなる事態が十分に起こりうるということだ。(中略) その問いに答えを出さないまま、原発を再稼働して良いはずがない。

 多分、朝日新聞では、社内で何か事故が起きた時、社員は殆ど逃げ出すので、このような考え方を持つのでしょうが、東京電力は、違いました。

42頁
 部下たちを2Fに退避させたフクシマ50の一人は、私にこんなことを語ってくれた。
「あの時、実際の退避があった時からどのくらい前だったかわかりませんが、内々に2Fに退避させる人間を"選別しろ"という指示がありました。私は、自分の班では3人だけが残って、あとは2Fに行ってくれ、と指示を出したんです。(中略)
しかし、やはり自分も残ります、と譲らないやつがいました。(中略)
 どうしても残る、と言い張ってきかない連中のことを思いだすと、今でも涙が出そうになります。でも、それを振り切って、"もし俺に何かあったら、お前が来て、ここでやんなきゃいけないんだぞ"と言って、やっと退避させました。その部下たちが、朝日新聞の報道では、"所長命令に違反して2Fに逃げた人間"とされてしまいました。彼らに申し訳ないという思いと、記事に怒りを覚えました」

 朝日新聞のスクープを受けて、海外メディアも、姿勢を一変させました。

「2011年、パニックに陥った作業員たちは命令にもかかわらず、福島原発から逃げ去っていた」(ニューヨーク・タイムズ)
「福島原発の作業員は命令を拒否し、危機のさなかに逃げ去った」(英BBC)
「福島原発事故は"日本版 セウォル号"だった! "職員90%が無断脱出・・・初期対応できず"」(韓国エコノミックレビュー)
「日本版セウォル号・・・福島事故時に職員ら命令無視して原発から脱出」(韓国 国民日報)

 朝日新聞が、2014年5月20日にスクープ記事を書いたとき、門田さんは取材で台湾にいました。帰国後の5月31日に、「お粗末な朝日新聞「吉田調書」のキャンペーン記事」と題してブログに記事を書きました。このブログサイトは、有料のようで、読めないのですが、翌日blogosというサイトに転載されました。このサイトも、現在サービスを終了してして読むことができませんが、http://www.asyura2.com/14/genpatu38/msg/510.html にコピーがあり、読むことができます。

 週刊ポスト(6月20日号)に、「朝日新聞『吉田調書』スクープは従軍慰安婦虚報と同じだ」という記事を書いたところ、朝日新聞広報部から抗議書が届きました。

 7月末に、産経新聞から、吉田調書を入手しましたという連絡が入り、門田さんも読ませてもらいます。
 産経新聞が8月18日の朝刊で、「全面撤退」明確に否定 というスクープ記事を書き、門田さんも3面に「朝日は事実曲げてまで日本人おとしめたいのか」という記事を書き、事態は急展開します。読売新聞や毎日新聞も、同様の記事を書いたのです。

 朝日新聞は、9月11日に木村伊量社長の謝罪会見を開き、9月12日の朝刊に謝罪記事を出しました。
 門田さんにも、朝日新聞広報部の岡本順部長から謝罪文書が届きました。

96頁
 本社は9月11日、記者会見を開き、東京電力福島第一原発事故の政府事故調査・検証委員会が作成した、吉田昌郎所長に対する「聴取結果書」(吉田調書)について、5月20日付朝刊で「命令違反し撤退」と報じた記事を取り消しました。
 門田様が、週刊ポスト6月20日号、また、産経新聞8月18日付朝刊に執筆された記事について、小職から6月9日付と8月18日付で抗議書をお送りしました。しかし、いずれも前提となる事実を欠くものであり、抗議したこと自体が誤っておりました。
 二つの抗議書をいずれも撤回し、弊紙6月10日付朝刊「週刊ポスト記事に本社抗議」、8月19日付朝刊「産経新聞巡り本社が抗議書」の記事を取り消すとともに、門田様に心よりおわび申し上げます。

 第三章以降は、門田さんが吉田調書を読んでさらに理解を深めた内容について書かれています。 

 

 

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