ひろさちや わたしの歎異抄 すずき出版 1999 |
2016.5.6
ひろさんは、今の仏教はおかしいと嘆いて、この本を書きました。本のタイトルが「わたしの歎異抄」となっている所以です。
唯円さんの歎異抄の前半の10章の構成にのっとって、ひろさんの歎異抄が展開されます。
ひろさんは説きます。仏教は、本質的に、彼岸原理を教えるもので、私たちが生きているのは、此岸の娑婆世界です。
此岸では、怠け者であってはいけません。でないと、飢え死にしてしまいます。
しかし、この此岸の物差しだけを大事にすると、我々はエコノミック・アニマルになってしまいます。
経済原理だけで走ってきた日本という自動車は、ブレーキをかけ、大きくカーブを切らねばならないのです。
仏教の出番のはずなのですが、日本のお坊さんは仏法を説かずに、お葬式を専門にしているのです。
ひろさんは、マスコミのインタビューで、「仏教とは何か一言で言ってください?」という虫のいい質問をされたときに、
「仏教が何を教えているか、簡単にいえば、奴隷になるな ということです。」 と答えるそうです。
「あなた方は、欲望の奴隷になってはいけません。欲の奴隷になるのをやめなさい。」 というのが、仏教の教えです。
また、仏教は世間の奴隷になるなとも説きます。仏教で言う出世間は、世間で出世することではなく、世間から一歩飛び出すことです。
第一章 「南無阿弥陀仏」は感謝の言葉
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」は、こう始まります。「ある日の事でござゐます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。」
極楽は阿弥陀仏の浄土ですから、これは御釈迦様ではなく、阿弥陀仏なので、芥川の初歩的なミスなのですが、これが幸いしました。
御釈迦様は、地獄で苦しむ大罪人の犍陀多(かんだた)に蜘蛛の糸を垂らすのですが、
ほかの罪人も登ってくるのに気づき、「降りろ。降りろ。」と叫ぶと、彼の目の前で蜘蛛の糸が切れたというお話しです。
ひろさんは、地獄にいたのが親鸞聖人だったらどうしたかと設問します。下の者に、一緒に登りましょうと言って、登って来るでしょうか。
ひろさんは、親鸞聖人ならこう言うだろうと解答します。「御釈迦様、ありがとうございます。しかし、私は
この蜘蛛の糸を伝って登れる力量のある人間ではありません。わたしは地獄にいます。
きっと阿弥陀様が、私を救ってくださると思います。それを信じて、この地獄でお待ちいたします。」
そうです。阿弥陀様が垂らした蜘蛛の糸が、切れてしまっては困るので、ここは、御釈迦様でないといけないのです。
阿弥陀の教えは他力です。 阿弥陀の意志を私たちが信じたとき、
親鸞聖人が「阿弥陀様の救済を信じて、地獄で待ちます。阿弥陀様にお任せします。」と言った途端、そこが極楽になるのです。
そうすると、お念仏は称えなくてもいいのかもしれません。お念仏を称えるとしても、それは、
「阿弥陀様、助けてください。」ではなく、「阿弥陀様、ありがとうございました。」という感謝の言葉です。
それがお念仏、「南無阿弥陀仏」なのです。と、ひろさんは、結びます。
第二章 信じるか、信じないか
ひろさんは説きます。
キリスト教の「信ぜよ。さらはすくわれん」は、「信じなさい。そうしたら、神様が救ってくださいますよ。」という意味ではないと。
日本人には理解できないのですが、天国に行くか地獄に行くかは、神はすでに決めているので、
「救いが予定されている者は、神様を信じられるように造られている。大丈夫、あなたは信じられるように造られているので、
信じなさい。」という意味なのです。
仏教も同じです。みんなほとけさまが救ってくださると理解する。それが仏教の救いです。
第三章 悪人になりなさい
悪人正機とは、ありとあらゆる人をすべて救いたいという阿弥陀さまの心は、
社会的に成功し、世間の価値観に固執している善人より、落ちこぼれの悪人のほうが、よくわかるという意味です。
しかし、親鸞聖人の言う悪人は、法律に違反した人のことではありませんよ。
第四章 布施の心とお念仏の心
伝統的な仏教でである聖道門では、慈悲は人を助ける行為に向かいますが、浄土門では、ただひたすら念仏を称えます。
聖道門の慈悲の説明に、イソップの「アリとキリギリス」の話が使われます。
美談版では、飢えたキリギリスにアリは食べ物を与えますが、体が大きくてアリの125倍も食べるキリギリスに、そんなに気前よくあげることはできません。
1個のパンを二人で分ける場合でも、半分ずつ分ける以外にも、いろんなわけ方があり、必ずしも簡単ではありません。
仏教では、お布施という考えを使います。一度、仏様に供えて、所有権を放棄してから、分けるのです。
第五章 一切衆生に感謝する
第六章 阿弥陀さまから直接いただく
第七章 自分に賭ける
第八章 お念仏は称えられない
第九章 お浄土を信じる
第十章 はからいなきお念仏
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