般若心経を読む |
2015.8.13 更新2022.06.09
般若心経は、日本に仏教が伝来して以来、千数百年にわたって、日本人に読みつがれてきました。漢字262文字の短いお経で、空の思想を説く重要なお経なのですが、あまりに短くまとめられていて、省略された部分があり、本文だけでは理解できないため、過去から現代にわたって、数多くの注釈本や、解説本が書かれています。
これから、それらの注釈本を読み進んでいきたいと思っていますが、まず、本文と、よみ、漢文書き下し文、直訳を以下に提示します。
摩訶般若波羅蜜多心経 (ま か はん にゃ は ら みっ た しん ぎょう)
偉大なる般若波羅蜜多心経
摩訶 (マハー)=偉大な、 般若 (パンニャー)=悟りに向かう智恵、叡智、 波羅蜜多 (パーラミター) 完成
観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 (かん じ ざい ぼ さつ ぎょう じん はん
にゃ は ら みっ た じ)
観自在菩薩 深なる般若波羅密多を行じし時
観音菩薩が、深い般若波羅蜜多 (智恵を完成するための実践) を行っていた時、
照見五蘊皆空 度一切苦厄 (しょう けん ご うん かい くう ど いっ さい く
やく)
五蘊は皆な空なりと照見し 一切の苦厄を渡す
五蘊 (色・受・想・行・識) は「空」と照見し(見極め)、一切の苦しみを取り除かれました。
五蘊 (パンチャ スカンダー、五つの集まり) 色 (ルーパ)=物質・肉体、受 (ヴェーダナ)=感覚、想(サンジュニャー)=表象、行 (サンスカーラ)=心の働き、識 (ヴィジュニャーナ)=外界の意識
「空」(シーニャ) あらゆる事物には永遠不滅の固定的な実体・自性がないこと
舎利子 (しゃ り し) シャーリプトラよ
色不異空 空不異色 (しき ふ い くう くう ふ い しき)
色は空に異ならず 空は色に異ならず
「色」(この世の存在や現象)は「空」(実体のないもの)に異ならず、「空」は「色」に異なりません。
色即是空 空即是色 (しき そく ぜ くう くう そく ぜ しき)
色は即ち是(これ)空なり 空は即ち是(これ)色なり
「色」は「空」であり、「空」は「色」です。
受想行識 亦復如是 (じゅ そう ぎょう しき やく ぶ にょ ぜ)
受想行識も亦(また)復(また)是(かく)の如し
残りの「受・想・行・識」も、同様に「空」です。
舎利子 (しゃ り し) シャーリプトラよ
是諸法空相 不生不滅 (ぜ しょ ほう くう そう ふ しょう ふ めつ)
是(こ)の諸法は空相にして、生ぜず滅せず
この世では、あらゆるものは空性という特性を持ちます。それらは生じることも、滅することもなく、
不垢不浄 不増不減 (ふ く ふ じょう ふ ぞう ふ げん)
垢(あか)つかず浄(きよ)からず 増えず減らず
汚れいてることも、浄いこともなく、増えることも減ることもありません。
是故空中無色 無受想行識 (ぜ こ くう ちゅう む しき む じゅ そう ぎょう しき)
この故に空の中に色は無く 受想行識も無く
この故に、「空」の中において「色」はなく、「受・想・行・識」もなく、
無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 (む げん に び ぜつ しん い む しき しょう こう み そく ほう)
眼耳鼻舌身意も無く 色聲香味触法も無し
眼・耳・鼻・舌・身・意(心)という感覚器官の働きにしても決まったものというものはなく、こうした器官が感じる色・声・香・味・触・法(精神)の現れにしても決まったものは存在しません。
無眼界乃至無意識界 (む げん かい ない し む い しき かい)
眼界も無く乃至意識界も無し
眼に映る世界は無く、心の認識する世界もありません。
無無明 亦無無明尽 (む む みょう やく む む みょう じん)
無明も無く また無明の尽くること無し
無明(迷い、煩悩)は無く、無明が無くなることも無く、
乃至無老死 亦無老死尽 (ない し む ろう し やく む ろう し じん)
乃至、老も死も無く また老と死の尽くることも無し
老いることも死ぬこともない。老いや死がなくなるということもありません。
無苦集滅道 無知亦無得 (む く しゅう めつ どう む ち やく む とく)
苦集滅道も無く 智も無くまた得も無く
苦悩、根源、抑制、道筋は無く、知ることも無く、また得ることもありません。
以無所得故 (い む しょ とく こ)
得る所無きを以ての故に
それは、得ることが何も無いからです。
菩提薩垂 依般若波羅蜜多故 (ぼ だい さっ た え はん にゃ は ら みっ た こ)
菩薩(ヴォディサットゥヴァ)は、般若波羅蜜多に依るが故に
菩薩は、悟りの完成への真の智恵に依っているので、
心無圭礙 無圭礙故無有恐怖 (しん む けい げ む けい げ こ む う く ふ)
心に圭礙無し、圭礙無きが故に恐怖有ること無し
心にわだかまりがなく、わだかまりがない故に、恐怖を抱くこともありません。
遠離一切転倒夢想 究竟涅槃 (おん り いっ さい てん とう む そう く きょう ね はん )
一切の転倒夢想を遠離(おんり)し 涅槃を究竟す
一切の間違った認識や考え方から遠離(解放)されることによって、涅槃を究め尽くします。
三世諸仏 依般若波羅蜜多故 (さん ぜ しょ ぶつ え はんにゃ は ら みっ た こ)
三世の諸仏も 般若波羅密多に依るが故に
過去・現在・未来のすべての仏は、悟りの完成への真の智恵に依っているので、
得阿耨多羅三藐三菩提 (とくあ のく た ら さん みゃく さん ぼ だい)
アノクタラ三藐(みゃく)三菩提を得たまえり
無上の真実の悟り(アヌッタラ・サムヤク・サンボーディ)を得られたのである。
故知 般若波羅蜜多 是大神呪 (こ ち はん にゃ は ら みっ た
ぜ だい しん しゅ)
故に知るべし 般若波羅密多は 是(こ)れ大神呪なり
故に知るべきです。悟りの完成への般若波羅蜜多の智恵は、偉大なる神聖な真言であり
是大明呪 是無上呪 是無等等呪 (ぜ だい じん しゅぜ むじょう しゅ ぜ む
とう どう しゅ)
是れ大明呪なり 是れ無上呪なり 是れ無等等呪なり
最上の真言であり、無上の真言であり、他とは比べることができない真言である。
能除一切苦 真実不虚 (のう じょ いっ さい く しん じつ ふ こ )
能(よ)く一切の苦を除き 真実にして虚(こ)ならず
この真言はあらゆる苦しみを取り除き、虚相ではない真実を示すものである。
故説 般若波羅蜜多呪 即説呪曰 (こ せつ はん にゃ は ら みっ た しゅ そく
せつ しゅ わつ)
故に般若波羅密多の呪を説く、即ち呪を説いて曰く
般若波羅蜜多の真言である呪をここに説く。すなわち、「空」の真言は、かく言う。
羯諦 羯諦波羅羯諦 波羅僧羯諦 (ぎゃ てい ぎゃ てい は ら ぎゃ てい はら ら そう ばゃ てい)
ギャテイ ギャテイ ハラギャテイ ハラソウギャテイ
「往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に完全に往ける者よ」
菩提薩婆訶 般若心経 (ぼ じ そ わ か はん にゃ しん ぎょう)
ボジソワカ(悟りの成就に幸いあれ) 般若心経
悟りよ、幸いあれ、般若心経
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