浜崎洋介・與那覇潤 『安倍晋三回顧録』から読み解く『歴代最長総理』の虚と実 (2023)

2024.02.25

 安倍晋三回顧録は、安倍ファンにとっては、読んで楽しい本ですが、アンチ安倍の人たちにとっては、絶対に読んではならない禁書です。

 安倍ファンでない人が、この本を読んで、どういう感じになるのか知りたいと思っていましたが、
この対談を見るとよくわかります。

 最も単純化して言うと、安倍ファンは、ネアカで、反安倍の人は、ネクラなのです。

2023.03.13
浜崎洋介・與那覇潤 『安倍晋三回顧録』から読み解く『歴代最長総理』の虚と実

 この対談動画は、有料動画として、文芸春秋の下記のサイトで視聴できます。

https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h5733#video

 しかし、冒頭の30分は、下記のサイトで、無料公開されています。

【冒頭30分】浜崎洋介×與那覇潤「『安倍晋三回顧録』から読み解く『歴代最長総理』の虚と実」
https://www.youtube.com/watch?v=nMsu_thhUts

 文字起こししましたので、読解に、お役立てください。

 自動翻訳に頼りましたので、間違いは、多数残っていますので、ご注意ください。
 二人が同時にしゃべって、言いかけたことを途中で止めるということもありますので、
 文字にするときには、編集しています。
 不信な部分は、是非、動画をみて、ご自身でご確認ください。

●司 司会
●浜 浜崎洋介
●與 與那覇潤

●司 皆さんこんばんは文藝新宿ウェビナーのお時間です
  本日は文芸批評家の浜崎陽介さん
  評論家の與那覇潤さんをお迎えしています
  浜崎さん與那覇さんどうぞよろしくお願いします

●與 お願いします
●浜 よろしくお願いします

●司 今年2月8日に発売され早くも20万部超のベストセラーとなった安倍晋三回顧録
 新型コロナウイルス対策から岸信介、安倍慎太郎、晋三に至る
 政治家一族に生まれた来歴まで安倍氏の半生が綴られた時代になっています。
 本日は安倍晋三大回顧録から読み解く歴代最長総理の虚と実というテーマで
 約90分間お二人のお話を伺っていきたいと思います。
 ではまず最初に與那覇さんにちょっとご感想お伺いできないでしょうか。

●與 そうですね。非常に、私、別に、この帯のセンスが、
 いかにも安倍さんのファンの人たちに、買ってっていう感じになってるのは
 ちょっといかがなものかなと思ったんですけれども。
 別に、安倍ファンではなかった私も、非常に面白く楽しく読みました
 楽しくって言っていいのかちょっとわかんないですけれどもね。
 あの亡くなられてしまったので。
 ちょっと私こう気になってるのが
 とにかくあの部数としてはもう20万部を超えて大変な売れ行きであるわけなんですけど
 なんかそれに対してちょっとですね、
 ネットでいろんな方がいろんな評判とか評論とかされてるのを読んでいたら
 ある経済誌のサイトにオーラルヒストリーの専門家であるという政治学者の方が
 この本は取り扱い説明書が必要な本であると。
 なぜならこれは、オーラルヒストリーというのは
 政治家から距離を取ってる学者が聞き取りをするんだけれども
 これ安倍さんと、もともと顔見知りの読売新聞の記者さんが取材したものだから
 要は何て言うんですかその客観性に劣るというか
 ここで語られてるのはあくまでこう安倍の言い分にすぎないんだみたいな
 だからみんな真に受けちゃいけない的なことを
 ちょっとほのめかすような紹介をされていて
 ちょっとそれは僕はいかがなものかなというふうに正直思いましたですね。
 つまり大事なのは中身であって
 その聞き手が学者かジャーナリストかってこれ二次的な問題じゃないですか。
 で中身が、いやさすが、安倍総理、安倍総理みたいな中身だったら
 いやこれは単なる安倍の仲良しが作った本よって言ってもいいけど
 そうじゃないですよ、全然
 かなり聞きにくいことも、「安倍さん、国会でのあのヤジはどうなんですか」
 みたいな聞きにくいことも、ちゃんと聞いているわけだし
 逆に言うと、学者が聞き取るときだって
 政治家は学者が相手だったら本当のこと全部言うんですかって言ったら
 そんなことあるわけない。
 どんな人相手にだって、政治家として語りたいことを語るのであって
 これはあくまでも安倍さんの言い分ですよっていうのは
 これ聞き手が誰だろうが同じことじゃないですか

 もう一つ気になったのは、北村滋さんと言って、安全保障局長でしたっけ
 安倍時代にですね安倍政権の中枢で活躍した方が、監修ってことで名前が入ってるので
 これをですね、その政治学者の方だったり、
 あるいはもっと露骨に政治的なスタンスとしてこう反安倍みたいな人たちが、
 これはやばい本だと、安倍政権の中核にいた人間が監修してる安倍イデオロギの本なんだと
 言ったりする人もいるわけですけど

 ちょっとどうなんでしょうかね。そういう態度っていうのは。
 政治家である以上、たとえ引退した後であっても、言っていいこと言ってよくないことってあるわけですよ
 とにかく長期政権だったのでこういろんな外国の首脳とお付き合いがありましたから
 そのオバマ、トランプ、プーチン、習近平と、
 いろんなあの人。僕はこう見てたよって話が出てるわけですけど
 迂闊になんかしゃべって文字にしちゃったら、やばいことあるかもしれないです。
 なんだ、安倍、そういう目で俺を見てたのか、じゃあ対日制裁だってみたいなこととか起きる中身なわけで
 これは別に誰がその聞き手を務めようが、
 こういうゲラで安倍さんよろしいですかっていう風に、原稿を送ったら
 それは安倍さんの側でこれ出しても問題ないよねと、大丈夫だよねって
 安倍さんが信頼してる誰かを選んでチェックしてもらうものであって
 普通はそれって謝辞に書くぐらいだけど
 今回は安倍さん亡くなってて、
 これは安倍晋三の責任で出す本だっていう風に言いにくいところがあるから
 誰かが必ず監修してチェックしてるけど
 今回はそれを明示しましたっていうだけの話でしょ。
 どうも安倍政権自体が好きな人はとことん好き
 嫌いな人は嫌い、とことん嫌いっていう政権だったこともあるんでしょうけど
 ちょっとなんか明らかに本質を外した指摘で
 この本があたかも価値のない本とか、この本取り上げてるやつは安倍シンパだ
 みたいなようなこと言ったり、そんな僕はいかがなものかなと思ってますね
 浜崎さんは、いかがですか?

●浜 いやそうですね。あのこれ読んで非常に私はフェアな感触がありました。
 だからまあよく言われる、安倍マンセー本とかね、そういうのとは全く違う本だなという感じがしましたね。
 それで今おっしゃってくれたように、
 北村さんなり、なんなりがまとめるのも当然だし当たり前だし、
 あとまあおっしゃるようにその中で結構聞きにくい話も全部書いてると
 森友問題とか、加計問題も含めて、あるいは桜を見る会もいろいろこう聞いてるし
 安倍昭恵さんはどうだったんですかとか、そこら辺も聞いてるから
 そんな、なんか異様な本だっていう感じじゃないので
 まず私はいい感触を持ちましたね。それが最初の印象かな。
 でどうしようか、その上でじゃあ具体的に中身に入っていく感じでよろしいでしょうか

●司 そうですね、具体的に細かいところでも全然いいので、
 お二人が面白いと思ったところから最初お伺いしてもよろしいですか。

●與 そうですね、結構スイスイ読めますけど、分厚さとしてはそれなりにあるので、
 ここが面白い一番面白かった個人的には、みたいなところを聞かれたらどうしようかなと思って、
 いろいろ貼ってきたんですけど
 やっぱりこう一箇所だけあなたにとってここで一番面白かった事って言われたら、
 233ページ、これあの天皇退位の、生前退位のところですね、
 つまり明治以降は一世一元の制ということで、
 亡くなる形でしか退位しないって形でやってたわけですけれども
 今の上皇が生前退位という形にしてくれないかということで
 特例法を作ってそれを可能にして、今、令和になってるわけですが
 とにかくその特例として生前退位を上皇にしていただくということになった時
 安倍さんの回想ではですね、当時官邸で皇室を担当していた山崎重隆総務官には
 長州人である伊藤博文が考え出した皇位継承のあり方を
 同じ長州人の安倍さんの時代に変えていいのですかと言われました。
 でももはやそういう次元ではありませんでした。
 もはやも何も最初からそういう事件ちょっとこれはもうびっくりしましたね。
 我々も含めた外野の人間がいや安倍さんって結局は長州の人だから云々かんぬんみたいな事ってのは、
 安倍さんを持ち上げる側であったり、批判する側であっては、
 あの人長州だからみたいなこうよく言ってたわけですけど、
 政権の内部にいる人はこういう感覚で政治って動かしてるんだ、総理は長州の方ではありませんかみたいな、
 今の皇室の伝統は長州が作ったものなのではみたいなのか、
 そういう人が日本の政治って動かしてたんだってこう、まざまざと見せつけられて、
 僕はなんかこの本全体の本当の読みどころかここか、ここに一番びっくりしました。

●浜 なるほどいやそっか。そういう意味で言うとこれ今から言うことと関係するかもしれませんけど、
 これね育ちの良さがむちゃくちゃ前面に出てる本だと思いました。
 どういうことかというと、これは文芸批評家の特権で断言しますけど、この本、多分、相当嘘がないと思います。
 どういうことかというと安倍晋三という人間が何かを隠そうとしていたり、何か言い訳、言い訳はいっぱいしてるんですけど、とはいえその言い訳もね真正面からしてます
 全部、だから彼が思っていることを主観のレベルで全部、素直に書いてある。
 この素直さはね、本当にこいつ、こいつって言ったら・・・、この人本当に育ちがいいんだなと。
 でこの育ちの良さっていうのが、後でちょっと多分議論になると思いますけど
 戦前からあるいはもう前近代からずっとつながっている家系の中の一部であって
 その全体と部分の関係っていうのかな、全体に支持されてる自分っていうのかな
 それを微塵も疑ってない。
●與 あーなるほどなるほど。

●浜 そのことによって戦後というものも多分相対化しているし。それが天然にできちゃってる感じ
●與 天然な感じっていうのはあるんですね。
 でも、育ちがいいって言っていいか僕はちょっとためらいがあるんですけど
 そのこの本の特徴はそのそれこそ、ジャーナリスト、前から親しいジャーナリストの方が聞き書きしたってこともあるんですけれども、なんかこう本当に安倍さんがこの文字のまま喋ってても違和感ないみたいな喋り方で、そうするそのやっぱり天然なんですよ。
 俺は、権勢最長の大宰相だぞと、それにふさわしい人間として歴史に対して今この古典となるべき証言録を出してやるぞみたいな、気負ったた感じがあんまりなくて、
 そしてですねだからこの良くも悪くも、この素が出てるんですよね
 48ページとかも非常に印象に残ってて、アベノマスクが不評で
 星野源さんとコラボした、家で優雅にステイホームしましょう動画が大炎上したわけなんですけど、あれはどうだったんですかねって突っ込まれて、
 でも、悪評も評判のうちで再生回数はすぐさま100万回を突破しました
 批判した人たちには、それだけの再生回数の動画をあなたは取れるんですかと言ってやりたい
 「このままじゃん」みたいな、この人
 ふつうは、「俺も大宰相として歴史に残るんだから、なんかうむうむ、みたいなそのような批判を受け悩んだこともありましたぞ」とかなんかこうカッコつけるかと思いきや
 「じゃああなた100万回できるんですか」

●浜 そうなんですよでね。これはまあ後で、だからまあ後で後で言ってますけど、
 だから結局、明るいんですよ。全体的にこの方が明るい。陽性です。ネアカで、鷹揚
 何でもありみたいなところがちょっとある。
 でこれが後でちょっと具体的に言うと、私のその安倍晋三うつわ論とも関係してくるんだけども
 多分そこにおいて功と罪が出てくるんですが、
 ちょっと最初の冒頭だから與那覇さんがいっぱいこう具体例で出したので
 僕もちょっとだけ具体で出すと、
 287ページの、もと財務省の福田純一事務次官がですね、セクハラ報道からで辞任しましたよね
 女性記者に触ってとかどうのこうので、普通ねセクハラ報道でしかも辞任してるわけだから、褒めるとかいやまあそれはまた今度言いますよとか言ってもいいんだけど、なんと擁護してるんですよ。
●與 擁護っていうか、面白い人です、セクハラはダメだけどそれ以外は面白いだから

●浜 人間的に、評価っていうのかな、好きです言ってるわけ。
 つまりなかなか面白いところでしたと、財務官僚は。
 でしかも財務管理は真面目で暗い人が多いのだけど、彼は違いました、私は嫌いではありませんでした。
 財務官僚は結局、来ても全然議論しなくて、
 でも自分ところにレクしに来る経産省の人間は、結構議論するから明るくて俺好きだったとか
 じゃあなんでこの福田事務次官が好きだったかっていうと
 なんか来た時に、増税回避の話を安倍晋三がするとですね、その人は「総理それは困ります勘弁してください」みたいなそういう世間話ができると、こういう世間話みたいなものができる人みたいなものが安倍晋三の中でものすごく価値であって
 くらいとか何かを隠しているとかルサンチマンがあるとかいうものを彼はやはり嫌っているんだというのが全体的にこう流れてるんですよ

●與 ただ福田次官はあの時本当の問題はその公文書改ざんだったのに
 彼があそこまで恥ずかしい姿を晒して全てのマスコミの注目を集めることで結構政権と財務省を救いましたからね
 身を呈してなんかこう組織と政権を守れる次官ってすごいなあと僕は逆に感心ですけど

●浜 いやそうなんですよ、しかもそういうところがなんとかな今福田事務次官についての評価ですけど
 ドゥテルテとかねあとトランプとか
●與 いい感じの海外首脳の話も出てくるし
 これやばい人だよねそうな話も出てくるんですよ

●浜 今言っただってプーチンしろトランプにしろドゥテルテにしろずっとやばい系じゃないですか、型破り系とか。
 これに対する人間観察眼が結構あって、それを同情的にあるいは人間論的に拾おうとするところがあるんですよ
 普通だったらこれはもうちょっとやばい人なのでち、ょっとまあそういう人ですねっていう形で距離感むしろ出すところに
 寄っていくっていうのかな。私は実は好きなんです的な形でその必然性を拾うところがあるでしょ。
 こういうあたりがなんか安倍晋三の
ネアカぶりをね、
 でかつそのイデオロギーとか態度とかにあんまり囚われないところが、
 今いいこと言ってますから後で悪いこと言いますけど、
 そういうところがすごく出てる本だなという感じがあって。

●與 一方でとにかく、野党と野党よりマスコミに関してはそういう鷹揚さって発揮されないじゃないですか。
 その表裏一体性はどう見てますね。

●浜 僕は、こう見てますね。
 野党とか、彼が言うところの左翼ですか、というのは何かを隠してるって思ってるんですよ。
 自分は何も隠してなくてこんだけあけっぴろげなのに
 なんでお前らはそのあけっぴろのあそこにあけっぴろげに議論してこないんだという不満がすごく僕は入ってる気がする
 だからあいつらはっていう感じでもしょうがないよな人間としてって感じがすごくあって
 イデオロギーにとらわれるっていうのはそういう要するにしょうがないやつなんだと
 だからイデオロギーが嫌いってこともあるかもしれないけどイデオロギー以前に
 
イデオロギーにとらわれる奴ってもうそもそも嫌いなんだというのがすごく出てる本だと思いましたね

●與 確かに根暗な人をこの人バカにしてそうなんですよ
●浜 そうなんですよ。バカにしてるとかもう身体的に多分ダメなんでしょ。
●與 それこそ安倍政権に対する悪口としてよく反知性主義だ、安倍は、
 みたいなことがまあ政権の後半からがーっと言われた時期があったんですけど
 やっぱこう日本におけるインテリって基本的に根暗じゃん、やっぱそのフィーリングが合わないんですおそらく
 そうなのでついつい、ばかにしてしまう
●浜 そうそうそうそう。
●與 なるほどそういうことですか
●浜 こんな素直な人はいねえなと

●與 ただ一方で、もちろん最初にあのなんて言うんですか、
 あくまでも安倍さんの言い分なのはこの本もそうだし
 別に学者が企画したって同じで政治家の本っていうのはそういう風に接するべきでしょっていうことを
 最初申し上げたわけなんですけど

 やっぱり、かなりアケスケに書いてるんだけど
 私としてやっぱり2カ所、ここはちょっと気になったな、さすがの安倍さんもちょっとここはかっこつけてるな
 というふうに思ったのが、解散の話をするところがありますでしょう衆議院解散の

 野田佳彦さんが、民主党の政権最後の民主党の首相の野田佳彦さんが、
 解散して選挙やって安倍さんが返り咲くわけなんですけれども

 そこで僕ここは聞き手の記者さんが、102ページです、聞き手の記者さんがこう立派だなあと思ったんですが
 あの時そのそもそもあれ2012年ですが8月にまだ谷垣総裁の時
 増税、消費増税の法案を通したらなるべく速やかに解散しますよという約束をしてしかしなかなか解散しなかったんですね。
 その間にこう自民党の総裁も安倍さんに代わってでその解散するつったじゃんかみたいな批判もあって
 結局民主党はボロ負けするわけなんですけど、
 ここで記者さんが社会保障と税の一体改革が成立した直後に速やかに解散してたら
 ちょっと違う結果だったかもしれないんじゃないですかと、
 でそれなら野田首相の決断を評価する声もあったんかもしれないじゃないですかという風に言って、

 安倍さんも確かに速やかに本当に解散してたらもう少し違う結果だったかもしれませんねと、
 民主党のこと嫌いなんですけどこの人、根暗だから民主党は、民主党は大敗しなかったかもしれません結構素直に認めて、
 しかしその後いつならば勝てるのかとそれは時の首相の勝負勘ですとか、
 私は勝てるタイミングで解散して勝ってきましたとおっしゃるんだけど

 これやっぱり隠してるんですよね、これ文藝春秋から出していただいた平成史に書きましたけど
 このまさに消費増税の法案が成立した当日に韓国大統領が竹島に上陸してしまって、
 そしたらなんかタイミング合わせたかのような尖閣に上陸する中国の活動とかもうじゃうじゃ出てきて
 ものすごい外交危機になっちゃったんですよ

 本来だったら「はい成立しました、では解散の約束しておりますので解散いたします」だったらそもそもまだ安倍さんが総裁じゃない状態で解散総選挙してたかもしれないけど
 そんなすごい外交危機の時に解散とかできないですからね総理大臣だったら
 いやーちょっとなんか韓国なんかめちゃくちゃやってきているんだけどでも選挙するっちゃったんで選挙するんで政治止めますってていうわけにいかないじゃないですか
 だからまあここは本当はそういう事情があるんだけど
 おそらく多分安倍さんもいやいやあることわかってるとわかってるけどここは俺に花を持たせてくれよと
 ちょっとここは首相の決断論っていうとこなんだからさまあお願いみたいな感じで会話されたのかなと僕は思いながらここは読みました

●浜 忘れてる可能性があるっていう。かわかんないですよ
 わかんないですよわかんないけど、だからもう一方で言うとすごく自画自賛も甚だしいところがあります
 これも根あかに自画自賛なので、なんか憎しむ対象にはならないんだけども、とはいえ、
 そのさっきからあの與那覇さんがおっしゃってるようにあのなんだっけSNSのステイホームの動画だって自画自賛でしょ
 加計問題・森友問題についてはまあ僕もそれはある程度そうだろうと思うところあるんですけども
 基本的にまあ濡れ衣だと思っているというところで結構なこう自己弁護もまあ一応確かに入ってる
 だからまあここのあたりもだからどこまで忘れててどこまでその隠してるのかよくわからないところではあるかなという印象はありますね

●與 そういうところはもう一個よくわかるのは353ページなんですけどね
 どうもこのあんまりこれ知られてないように思うんですけどどうもこの聞き書きからすると安倍さんは政権の一番最後のあたりコロナと体調がかかってやめるんで本当はもっと続けたかったんですけどでも、
そのイランと欧米諸国の架け橋みたいなちょっと目指してたところがありますよね、
そので何でこうイランに日本が助け舟を出してあげるのかを語る時に、
百田尚樹さんのベストセラー海賊と呼ばれた男が出てくるあたりがこの根あかな安倍さんそれにつられましたって言っちゃっていいんですかみたいな
 ネアカな安倍さんなんですけど、ところがそのやっぱりなかなかうまくいかないわけですよね。

 でしかもそのあのホルムズ海峡を航行してた日本のタンカーが撃沈されるっていう事件がこの時あって、
 かなり暗礁に乗り上げるんですがそれを安倍さんは攻撃されたタンカーはパナマ船籍で日本の海運会社が運行していましたが、日の丸は掲げていなかったと、だから日本を狙った犯行で沈められたのかこれはわからないって言っていて、ただおそらくここもなんかちょっと怪しいなと私は思いましたですね
 おそらく北村さんと相談して例えば分かってるかもしれないぶっちゃけもうこれ対日テロですよ、でも対日テロですってこう断定しちゃったらいろんなことがもう大変なことになっちゃうので、ここは総理も分かりませんと日本が狙われたやったのはイランだみたいなことなのかもしれないけど、ここはもう分かりませんでどうしましょうみたいなところもあるのかな
●浜 それはそうですね

●與 政治家の回想録であるでしょ。そういう配慮って必要なわけですよね。
 その不用意な一言オープンにしちゃった結果大問題になるって事が起きるわけなので、そういう風に今もちろんあとは当然安倍さんとしても自分もかっこよく見せたいというところがあるから、そういう隠されてることとか語られてないこととかもちろんあるんですけど、しかしそのイランと日本はね百田尚樹さんの本に書いてあるよってこうスッと行っちゃうあたりは嘘がない、こんなんですよね
●浜 まあそうですよね。だからそうだな、だから今現役の政治家についてもまあ多くはないけどいくつか言及があって、一番多分みんなが注目するのは小池百合子さんへの言及であったり、

●與 結構小池さんのとこはなんか褒めてる人が多いけど小池さん見てる人はみんなそう思ってるでしょ
●浜 まあそう思ってるんだけど、その例えば一方でこういうことも言ってますよね、

 菅さんがね菅義偉さんが小池さんが大っ嫌いだとわざわざ言っていて絶対あれは許せないとと言ったんだけどよく許せますよく許せますねと言っているだから許してるというような文脈はまずあって、

 その上でしかしながらという感じで小池さんの描写をするそのあたりの描写の仕方がね、なんてのかな
 計算高く小池百合子という女をどうにかして潰してやるっていう感じの描き方じゃなくて
 むしろ小池さんの人生と必然性を拾うとこういう人なんじゃないかというような感じで
 ちょっと皮肉も込みでね、言っているっていうのは多分なんかこう本音で喋ってるのかなという感じは
 印象としてはしたんですよね。どこまで隠してるのかちょっと分かりませんけどもちろん
 なので全体的には素直な本だというような印象まず大きくは持ったと
 でどうしようかな、その上で入っていきますか具体的にで僕は今ちょっと結構褒めたので
●與 貶す方伺ってから、ちょっとだけそこから実はけなすというかねあの

●浜 まあ話が変わるんですけども、この本多分読むと僕はこう思います。
 読者の方はですね、僕が思ったような印象、まず最初に持つので、人間安倍晋三についての感情移入すると思います。
 人間安倍晋三への感情移入すると、だいたい文学ってそういうものですけど、好きになります
 好きになるつまり理解をするってことはそのまま好きになることだから
 安倍さんていい人だったねってことになると思うんですよ
 この本はそういう影響あると思います
 一方で、僕なんかもちろんそういう感情こっちにありますが
 その上で政策的なあり方、安倍晋三政権が、安倍政権が何をしたのかということも一応見てきたので、
 そこずっと僕は批判してきたんですが、それと安倍晋三というさっき言った明るい性格がどのようにしてドッキングし、だから
 ああいう作為って言ってもいいのかもしれないけどバラバラな矛盾に満ちた政策が出来上がったのかということが非常に僕はよくわかったんですよ。

 どういうことかというと、明るいということは多分最初に人を惹きつける上で非常に力があることだと思います、
 明るくないと人ついてこないし、ルサンチマンとか敵を作ってばっかりだと多分上に行けないので
 日本的な政治家はどっかやっぱりそれ必要だと思うんですよ
 それでやったんだけども核みたいなものがないので、安倍晋三さんには、ものすごい実は思想的なね僕にはそう見えると思うんですけど
 そうするとどうなるかというと、いろんな人が寄ってくるといろんな人がAといい、いろんな人がBという、こっちはCと言うんですよ、それ全部入れ込んでいくので、結局、引いてみた時あるいは時間が経った時に整合性がつかない政策体験になっちゃう。
 ということは何がしたかったのかよくわからない。

 正直に言うと僕も最初の1年か2年までは安倍晋三政権に対する支持派でした。
 なんだけど2年ぐらいからかな、これおかしいだろうと、そこは譲っちゃいけないでしょってギリギリの譲っちゃいけないところを結構譲り出すんですよ、つまりね妥協につぐ妥協なんです、ここで僕なんかは見放していくだけど、
 左翼の側っていうのかな左の側ずっと安倍晋三ってのは保守のなんか堅物で、なんか思いきり右翼的なやつだからっていうイメージなんだろうけど、僕からするとむちゃくちゃ譲りすぎてるほど譲ってるわけですよ。
 もうわけのわかんない曖昧な何かになってるわけ。
 それが実はその長期政権を成り立たせた一つの意味っていうかな力にもなったし、
 結果的にそこで7年間も引きずられたのかなって気は実はしているというのがちょっと最近に言う結論の部分かな。

●與 なんかこう浜崎さんとこの文春ウェビナーであるいはそれ以外の場所でも何度もご一緒させていただいているわけですけど
 面白いなあと思ったのは多分ちょうど僕、政治的な立場とか安倍さんに対するスタンスがちょうど浜崎さんと逆を描いてるんだろうなと思うんですよ
 僕は逆に、なんていったらいいのかなあの確かにこの人天然なのはよくわかるしなんか仲良しの記者さんに取材してもらったこともあって打ち解けで喋ってるのもよくわかるんですけど、
 僕はむしろ安倍さんっていうのは最初は本来それこそものすごいルサンチマンとか今の世の中を呪う気持ちってのに取り憑かれてた人だと思うんですよ。
 ところがこう長いこと政権を持たせててもらったこととかもいろんなことがあって
 だんだんそれはこう緩和されて、つまりその最初はものすごい怨念みたいなものをってる人だったの怨念が浄化されてくる、
 そうするとこうトラウマにとらわれているとどうしても性格にゆがみが出るんだけど、
 それが解消されるとなんか素が出てくるみたいなあれ素はいやつだったみたいな、
 そのいい奴っていうのはこう曖昧なこだわりがなくてなんかみんなにニコニコニコニコしてるっていう事でもあるので、
 そこはその浜崎さんの上から見るとこいつ期待してたけどダメになったなと思われると思うんですけど、
 僕は逆にものすごい警戒してすごいやばい人だと思ってたら、なんか意外に途中からいい人感は、全然逆の安倍政権っていうものを見てきたのかな気がしますね。

●浜 これ多分だからあれなんですよね、
 これ後で多分議論になりますけど第1次安倍政権の時にその結構理念的でその1年だけ切り取れば結構理念性が強いから、やばいやつだと、
 理念というのは間違いなくそれはルサンチマンの一つの発揮だから、実際に不満があるんじゃないかと、
 僕らはまあ勘ぐったということがあるんだけど、
 蓋を開けてみたら実はそうでもなかったと、この先にだから結論から言いますが、
 僕が彼を違うだろうそこは譲っちゃいけないだろうと思ったのは、加憲を言い出した時です。
●與 憲法改正ではなくて9条に第3条を足す考え方、公明党案でいかがでしょう、そうやつですよね
●浜 そこだけはちょっとってのと、あともう一つもう一度だけ言うと2回の増税なんですよ。

●與 浜崎さんは消費増税は、批判。
●浜 もちろん。これは僕の話で、しかもその反省がここには載ってないんです。
 自分で増税はまずいまずいまずいってこの本にはずっと書いてあるんだけど
 2回目の増税をしたことの動機はどこにも書いてないんですよ
 財務省のせいにはしてるけどもでも結局決定したのはこの人ですから
 それについての言及がこれないっていうのはねやっぱり何か逃げたなって感じはしてるんです
 僕はその2点、消費増税2回っていうのは後の話でしたけど、最初は改憲を掲げてたそれを加憲にした瞬間にそれは戦後レジームの完成なので、こっちの立場からするとね、それはないと、むしろそうだったら改憲なんかしない方がいいと思ってるんで、
 そういうところで與那覇さんとだから逆方向から

●與 逆から安倍晋三を、リアルタイムでも逆から見てたしっていう可能性
 この本もちょっと見方がちょうど逆からクロスして読むという形になりそうですね。

●司 冒頭30分経ちましたので一度ここでYouTubeの無料配信を終了します
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 上記の対談に関して、一つだけ、コメントします。

 浜崎さんは、「2回目の増税をしたことの動機はどこにも書いていない」と話していますが、

増税に反対であることに関する議論は、かなり詳しく書かれていると思います。

 民主党政権は、2012年8月10日に、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げ、社会保障の給付と財政健全化を両立を図るという消費増税法案を、民主、自民、公明の3党の合意のもとで成立させたのですが、

民主、自民、公明の3党で合意した社会保障と税の一体化には、反対だったのですか? (94頁)
と問われ、安倍さんは、こう答えました。

 一体改革には慎重でした。デフレ下に加え、震災の影響を受けている時に消費税を上げるべきではない。
一体改革は、税金を上げて社会保障に回すのではなく、むしろ借金の返済に充てるのが狙いでした。
(中略)
 社会保障と税の一体改革は、財務省が描いたものです。当時は、永田町が財務省一色でしたね。
財務省の力は大したものですよ。
 時の政権に、核となる政策がないと、財務省が近づいてきて、政権もどっぷりと頼ってします。
菅直人首相は、消費増税をして景気をよくする、といった訳の分からない論理を展開しました。
民主党政権は、あえて痛みを伴う政策を主張することが、格好いいと酔いしれていた。
財務官僚の注射がそれだけ効いていたということです。

 2012年12月の総選挙で、民主党が惨敗し、自民党が圧勝し、12月26日に第二次安倍政権が誕生しました。

安倍首相は、2013年10月1日に、消費税を予定通り5%から8%に引き上げることを決定し、2014年4月1日に実施されました。

増税見送りも考えたはずですが。 (120頁)
と問われ、安倍さんは、こう答えました。

 実は、8%への引き上げを覆すのは難しいと思っていました。
閣内には、民主、自民、公明の3党合意を決めた当時の総裁、谷垣法相と、幹事長だった石原伸晃環境相がいる。
当事者が閣内にいる中では、既定路線でやるしかないと。
財務省はこの時、「いったん景気は下がってもすぐに回復する。谷が深ければ、それだけ戻ります」と説明していたのです。
だけど、14年4〜6月期のGDPは年率で6.8%減となって、なかなか戻らなかった。
財務省不信は一層強まりましたね。

 安倍首相は、2014年11月18日に記者会見し、衆議院解散と、2015年10月からの消費税率10%への引き上の1年半先送りをセットで表明し、11月21日に解散しました。

増税延期という国民受けしそうな政策変更と、解散を同時にしたのは、ある意味では狡猾な手法と言えます。(148頁)
と問われ、安倍さんは、こう答えました。

 増税を延期するためにはどうすればいいか、悩んだのです。
デフレをまだ脱却できていないのに、消費税を上げたら一気に景気が冷え込んでしまう。
だから何とか増税を回避したかった。しかし、予算編成を担う財務省の力は強力です。
彼らは、自分たちの意向に従わない政権を平気で倒しに来ますから。
財務省は外局に、国会議員の脱税などを強制調査することができる国税庁という組織も持っている。
さらに、自民党内にも、野田毅(たけし)税制調査会長を中心にした財政再建派が一定程度いました。
野田さんは講演で、「断固として予定通り(増税を)やらなければいけない」と言っていました。
 増税派を黙らせるためには、解散に打って出るしかないと思ったわけです。
これは奇襲でやらないと、党内の反発を受けるので、今井尚哉秘書官に相談し、秘密裡に段取りを決めたのです。
経済産業省出身の今井さんも財務省の力を相当警戒していました。
二人で綿密に解散と増税見送りの計画を立てました。

 2014年12月14日の総選挙に、自民党は圧勝しました。

 2016年6月1日に、安倍首相は、2017年4月予定の消費税率10%の引き上げを、2019年10月までさらに2年半延期することを発表しました。

 その直後の、9月25日に、衆議院解散表明が行われ、2019年の消費増税時の使途を全世代型社会保障の財源にすると公約しました。

全世代型社会の柱である幼児教育・保育の無償化は、選挙で票にならないとずっと言われてきたため、自民党は慎重でした。政策を転換したのはなぜですか。(271頁)
と問われ、安倍さんは、こう答えました。

 幼児教育の無償化は、第一次安倍内閣の参院選の選挙公約に盛り込んでいたのです。
民主党が掲げた「子ども手当」に対抗するためにね。
その後、民主党の子ども手当は第二次内閣で児童手当に名称が変わりますが、
毎年の大規模な給付なので、とにかく財源が必要なのです。
だから消費税増税分の使途を変更して財源を確保することにしたのです。
増税分の使途変更は、普段ならば財務省や財政健全派の反対でできません。
解散と同時に決めてしまえば、党内の議論を吹っ飛ばせます。
選挙に勝てば、財務省を黙らせることができる。

  最終的に、消費税率は、2019年10月1日に、10%に引き上げられましたが、軽減税率が導入されました。
消費税率の10%への引き上げは、4年間延長されたわけです。

 これだけ詳しく書かれているのに、まだ、浜崎さんが、説明不足とおっしゃる意味がよくわかりません。

 安倍政権は、消費税を2回も上げた、ひどい政権だと批判する人がいますが、

2012年の消費増税法案は、民主党政権下で、民主、自民、公明の3党の合意のもとで成立したのに対し、

安倍さんが、孤軍奮闘して、それに対して戦ったのだということを、

完全に忘れ去ろうとする歴史修正主義的態度なのです。




 




 

 

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