音階

2011.8.30

●  はじめに

 音階とは、ある基準の音から、その1オクターブ上の音に、一気に進むのではなく、その間に、高さが少しずつあがる音をならべて登りやすくした音の階段である。

 ピアノをみると、1オクターブの間には、白鍵と黒鍵をあわせて12の階段がある。

平均律という考え方により、階段の高さが2の(1/12)乗(=1.059)と同じ高さに設定されている。

楽器の、もう一つの代表格であるギターも、フレットの位置は、平均律での調律を前提としている。

 しかし、歴史的に、ド、ミ、ソなどの和音を鳴らしたときに、それぞれの周波数が単純な整数比になるといいことが知られていて、ピタゴラス音律とか、純正律など多数の音律が考案されていた。

ドミソ、ファラド、ソシレといった和音は、平均律楽器であるピアノやギターで鳴らすわけだが、当然、整数比ではない。

ピタゴラス音律や純正律で整数比で鳴らしたときの和音の響きとどう違うのか、勉強したい。

 また、バイオリンのようにフレットの無い楽器では、平均律とは異なる音程となってしまう。

バイオリンの4つの弦をチューナーで合わせてはだめという話はよく知られているが、バイオリンでドレミファと弾くときの半音の取り方についても、勉強したい。

 ピアノの白鍵の、ド レ ミ ファ ソ ラ シ の7段は、全音と半音の階段高を組み合わせた、長音階とよばれている音階で、音階の代表格である。

何故、7段になったかの歴史は、まだよく知らないが、7段音階においても、短音階のように全音と半音の組み合わせを変えたいろんな音階が存在するし、5音しか使わない音階なども、存在する。これらについても、勉強したい。

● 12音階

  半音を#記号を使ってあらわすと、12音階は、

 (Do), ド#(Do#), (Le), レ#(Re#)、(Mi)、ファ(Fa), ファ#(Fa#)、(Sol), ソ# (Sol#)、(La), ラ# (La# ), ティ(Ti)

です。# 記号が、わずらわしいとき、Do#はDi、Re#はRi、Fa#はFi、Sol#はSi、La#はLi という名前を使って

 Do・Di・Re・Ri・Mi・Fa・Fi・Sol・Si・La・Li・Ti 

と、表記することがある。

ミ(Mi)とシ(Si)のうえに黒鍵がないので、母音をiにしたのだろうと思うが、

Sol#が、Siとなり、ドレミのシ(Si)のことをTiとあらわすことになっているので、混乱しないように注意が必要である。

英語圏では、広く、Si のかわりに、Ti が用いられているので、この問題は無い。

 

 せっかく便利な呼び方があるのに、普及しないのは、ド# は、レb でもあり、同音異名の問題があるからだと思う。

半音をb記号を用いて表すと

 (Do), レb,(Le b), (Le), ミb(Mi)、(Mi b)、ファ(Fa), ソb (Sol b), (Sol)、ラb (La b ), (La), ティb(Ti b), ティ(Ti)

 こちらにも、Do Di Re Mi のような読み方を考案することはできそうだけど、両立させることが難しいのではないかと思います。

 

● 高調波 (Harmonics)

 二つの音を同時に鳴らしたときに、周波数の間になんらかの関係がないと、気味の悪い音色になることから、心地よい和音となるような音探しが行われた。

 ある音と、その1オクターブ上の音を、同時に鳴らすと、完璧に調和することを、ご存知だろう。これは、次のように説明される。

(1) ある音を440Hzのラ(La)の音とする。このラの音は、440Hzの周波数だけでなく、
     その2倍、3倍の周波数の高調波も含んでいて、楽器の音色を作っている。

(2) 1オクターブ上のラ(La)の音は、440Hzの2倍の880Hzからなる。

 すなわち、ある音には、その1オクターブ上の音も含まれているため、同時にならしても、完璧にに調和して、新しい音色をつくる。

 では、3倍上の音は、どうだろうか。440Hzのラ(La)と、880Hzのラ(La)と、1320Hzのファ(Fa)の音を同時に鳴らすと、440Hzと880Hzの完璧な調和には負けるが、それでも、一応調和した和音となっている。

 440Hzのラ(La)はやめて、880Hzのラと、1320Hzのファ(Fa)の2音だけを鳴らしても、同じ調和がえられている。すなわち、周波数が1.5倍の音は、調和の関係にあることがわかる。

● ピタゴラス音律 (Pythagorean scale)

 ドから始めて、1.5倍の高さの音を続けて求めてみよう。

周波数を1.5倍ずつ上げていくと、急速に高音になってしまうので、2倍、すなわち1オクターブを越えると、2で割る、すなわち、1オクターブさげるという手続きをとる。例えば、3/2の3/2倍は、9/4=2.25となるので、2で割って、9/8=1.125という具合である。

 以下の表の真ん中の列が、その結果である。冪乗の記号として^を使っている。例えば 3*3は3^2となる。

ド (Do, C)の1.5倍は ソ(Sol, G)、
ソ (Sol,G) の1.5倍は レ(Re, D)、
レ (Re, D) の1.5倍は ラ(La, A)、
ラ (La, A) の1.5倍は ミ(Mi, E)、
ミ (Mi, E) の1.5倍は シ(Ti, B)、
シ (Ti, B) の1.5倍は ファ#(Fi, F#)、
ファ#(Fi, F#) の1.5倍は ド#(Di, C#)、
ド# (Di, C#) の1.5倍は ソ#(Si, G#)、
ソ# (Si, G#) の1.5倍は レ#(Ri, D#)、
レ# (Ri, D#) の1.5倍は ラ#(Li, A#)、
ラ# (Li, A#) の1.5倍は ファ(Fa, F)、
ファ (Fa, F) の1.5倍は ド(Do, C)
周波数比 3/2
周波数比 (3^2)/(2^3)=9/8
周波数比 (3^3)/(2^4)=27/16
周波数比 (3^4)/(2^6)=81/64
周波数比 (3^5)/(2^7)=243/128
周波数比 (3^6)/(2^9)=729/512
周波数比 (3^7)/(2^11)=2187/2048
周波数比 (3^8)/(2^12)=6561/4096
周波数比 (3^9)/(2^14)=19683/16384
周波数比 (3^10)/(2^15)=59049/32768
周波数比 (3^11)/(2^17)=177147/131072
周波数比 (3^12)/(2^18)=531441/262144
1.5
1.125
1.6875
1.265625
1.898438
1.423828
1.067871
1.601807
1.201355
1.802032
1.351524
2.027287

 周波数の1.5倍は、5度の音程に相当し、ド、ソ、レ、ラ、ミ、シと、ピアノの白鍵の音が続き、ファ#、 ド#、ソ#、レ#、ラ#と黒鍵の音が続いたあと、白鍵のファの音になる。ファの次はドに戻って、めでたしめでたしといいたいところだが、戻ってきたドの周波数比は、2.02729であり、1%ほど高い音になっている。

 音高順に並べ変えたは、下記のとおりである。一番下の行は、左の音高との比である。C→C#, D→D#, E→F, G→G#, A→A#, B→Cが1.067871で、C#→D, D#→E, F→F#, F#→G, G#→A, A#→B の1.053498よりも大きいことがわかる。

C C# D D# E F F# G G# A A# B C
1 1.067871 1.125 1.201355 1.265625 1.351524 1.423828 1.5 1.601807 1.6875 1.802032 1.898438 2.027287
  1.067871 1.05349 1.067871 1.053498 1.067871 1.053498 1.053498 1.067871 1.053498 1.067871 1.053498 1.067871

 さて、右端のCが、2.027287ではなく、丁度、1オクターブ上の2とし、その一つ前のFの音の周波数比を、4/3とする。 この操作を、A#, D#, G#まで繰り返すと、以下のようになる。

ド (Do, C)の1.5倍は ソ(Sol, G)

ソ (Sol,G) の1.5倍は レ(Re, D)

レ (Re, D) の1.5倍は ラ(La, A)

ラ (La, A) の1.5倍は ミ(Mi, E)

ミ (Mi, E) の1.5倍は シ(Ti, B)

シ (Ti, B) の1.5倍は ファ#(Fi, F#)

ファ#(Fi, F#) の1.5倍は ド#(Di, C#)

レ#(Ri, D#) の2/3倍は ソ#(Si, G#)

ラ#(Li, A#) の2/3倍は レ#(Ri, D#)

ファ(Fa, F) の2/3倍は ラ#(Li, A#)

ド(Do, C)の2/3倍は ファ(Fa, F)

1オクターブ上の ド(Do, C)


周波数比 3/2

周波数比 (3^2)/(2^3)=9/8

周波数比 (3^3)/(2^4)=27/16

周波数比 (3^4)/(2^6)=81/64

周波数比 (3^5)/(2^7)=243/128

周波数比 (3^6)/(2^9)=729/512

周波数比 (3^7)/(2^11)=2187/2048

周波数比 (2^7)/(3^4)=128/81

周波数比 (2^5)/(3^3)=32/27

周波数比 (2^4)/(3^2)=16/9

周波数比 (2^2)/(3^1)=4/3

  
1.5

1.125

1.6875

1.265625

1.898438

1.423828

1.067871

1.580247

1.185185

1.777778

1.333333

2

 音高順に並べかえると、下の表が得られる。赤字の部分が、変化した箇所である。追加した一番下の行に、セント値を示す。

C C# D D# E F F# G G# A A# B C
1 1.067871 1.125 1.185185 1.265625 1.333333 1.423828 1.5 1.580247 1.6875 1.777778 1.898438 2
  1.067871 1.05349 1.053498 1.067871 1.053498 1.067871 1.053498 1.053498 1.067871 1.053498 1.067871 1.053498
0 113.685 203.91 294.135 407.82 498.045 611.73 701.955 792.18 905.865 996.09 1109.775 1200

  上の表から白鍵のドレミファソラシドを抜き出して、音高順に並べると

             
1   9/8   81/64   4/3   3/2   27/16   243/128   2
  9/8   9/8   256/243   9/8   9/8   9/8   256/243  

 一番下の行は、隣り合う2つの音の周波数比である。

 C→D,D→E,F→G,G→A,A→Bの全音の周波数比は、9/8=1.125で、平均律の半音×半音=1.059*1.059=1.1215よりも少し大きい。逆に、E→F,B→Cの半音の周波数比は、256/243=1.0535で、平均律の半音1.059よりも小さくなっていて、1オクターブを形成している。

 スケール・ビジュアライザーという便利なソフトを使って、和音の波形を見て見みよう。指定した周波数のサイン波の和として、合成した和音の波形を表示してくれる。

 下図は、ドとソの二和音を鳴らしたときの波形で、左はピタゴラス音律、右は平均律である。ピタゴラス音律では、基本周波数ドの周波数を260.74とし、セント値0のドと、セント値702のソの合成波形である。平均律では、基本周波数ドの周波数を261.626とし、セント値700のソを合成した。どちらも、十分定常な波形である。

 下図は、ドミソの三和音を鳴らしたときの波形で、左はピタゴラス音律、右は平均律である。ピタゴラス音律では、セント値408のミの音を追加し、平均律では、セント値400のミを追加した。どちらもミの音が加わることにより、波形の定常性は、失われてしまうことがわかる。

 

● 純正律 (just intonation, just temperament)

 ピタゴラス音律は、周波数が3/2=1.5倍の5度の音程で定義したため、ミの音がドの81/64=1.26253倍の周波数となっていて、簡単な整数比とはなっていない。周波数が5/4=1.25倍の音をミとして定義した音律が、純正律である。

             
1   9/8   5/4   4/3   3/2   5/3   15/8   2
  9/8   10/9   16/15   9/8   10/9   9/8   16/15  

 ドとソの二和音を鳴らしたときの波形では、純正律では、基本周波数ドの周波数を264とし、セント値0のドと、セント値702のソの合成波形であり、上記のピタゴラス音律の場合と同じ波形となり、定常性をもつ。

 下図は、ドミソの三和音を鳴らしたときの波形で、左は純正律、右は平均律である。純正律では、セント値386のミの音を追加しているが、定常的な波形となっていることがわかる。平均律では、上図と同じく、セント値400のミを追加した。

● 平均律 (equal temperament, equally-tempered scale)

 

● ドレミファソラシド 7音階

(ピアノが、何故、7つの白鍵と、5つの黒鍵にわかれているのか、まだ、勉強不足のため、以下の文章は、大きく変わる可能性があります)

 12音から7音選んだ、長調の音階ドレミファソラシと、短調の音階ラシドレミファソを、全音階(ダイアトニック・スケール)と呼ぶ。

 7音階は、12音から7つを選んで短くしたけれど、一気に、1オクターブかけあがるのではなく、ドレミファ(全音、全音、半音)、ソラシド(全音、全音、半音)と二段階で、あがっているような気がします。
 たぶん、より正確には、ドレミファソ、ソラシドレ、レミファソラ、ラシドレミ、・・・というような5音の組が重なって、音階ができあがっていくのではないかと思います。

全全半全 ドレミファソ、ソラシドレ
全半全全 レミファソラ、ラシドレミ
半全全全 ミファソラシ、シドレミファ
全全全半 ファソラシド

7音階は、ドレミファソラシドが明るい感じの長音階、ラシドレミファソラが暗い感じの短音階とよばれているが、音階を2オクターブ、ドレミファソラシドレミファソラシドと駆け上がる間に、長音階も、短音階もふくまれるので、明るい・暗いの感じを与えるのは、もっと短い音列なのだろうと思います。

● 無限音階

 無限音階なるものを、ご存じだろうか。ドレミファとあがっていく音階が、無限に上昇していくように聞こえるというもので、シェパードトーンとも呼ばれていて、ネットで検索すると、いくつかサイトがみつかる。

 ドレミとあがっていく音列の強度をすこしずつ下げていくと同時に、1オクターブ下から小さくドレミと始めて、だんだんと強度をあげていくと、いつのまにか下からあがってきた音列に変わっていて、たどりついたドは、出発したときのドになっているというものである。

 midiファイルを作成してみたので、聞いてみてください。ドレミファを3回繰り返しています。1回目から2回目に移ってドレミが始まり、3回目が始まったときのドは、2回目のドと同じ高さです。

 infinite_scale.mid

 

● 5音階 ヨナ抜き、ニロ抜き

 

 ヨナ抜き(四七抜き)ドレミソラ

 ニロ抜き(二六抜き)ドミファソシ

 

 

     

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