動詞の活用 

2015.11.24

未然形と已然形

 動詞は、次の単語につながるときに、語尾が変化します。これを活用といいます。

古文では、未然形、連用形、終止形、連体形、已然形、命令形 の6つあると習います。

現代語では、未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形、命令形 の6あると習います。

 

 未然形とは、未だ然らず、まだそうなっていないという状態を指します。

 古文において、「行かず」は、行かないという否定形ですが、まだ行っていないので、未然形なのです。
 古文において、「行かぱ」は、行くならば、行けばという仮定形ですが、これも未然形です。
 古文において、「行かむ」は、行こうという意味ですが、これも未然形です。
 古文において、「行かす」は、行かせるという使役の意味で、これも未然形です。

 古文においては、「行かず」「行かば」「行かむ」「行かす」など、未然形の語幹は、すべて「行か」です。

 已然形は、已に(すでに)、然り という意味で、すでにそうなっていることを示します。

 古文において、「行けども」は、行ったけれどもという意味で、已然形です。
 古文において、「行けば」は、行ったのでという意味の已然形で、行ったとしたらという仮定法ではありません。

 古文における「行けども」「行けば」の已然形は、現代語では行ったけれども、行ったのように、連用形+過去の助動詞「た」の形となります。

 

 現代語では、古語の未然形の「行かず」「行かば」「行かむ」が、「行かない」「行けば」「行こう」と、語幹が異なります。

 現代語には、古語の已然形の活用はありませんので、已然形の位置に、古語にはない、仮定形の語幹「行け」を置いています。

 現代語では、未然形の語幹は、行かない、行かせるの「行か」と、行こうの「行こ」の二つあることになります。

 

整理

古文 「行く」は、四段活用 行か、行き、行く、行け

未然形 行かず、行かば    意味 行かない、行くならば
連用形 行きたり        意味 行った
終止形 行く
連体形 行くとき
已然形 行けども、行けば   意味 行ったけれども、行ったので
命令形 行け

現代文 「行く」は、五段活用 行か、行こ、行き、行く、行け

未然形  行かない  行こう
連用形  行きます
終止形  行く
連体形  行くとき
仮定形  行けば
命令形  行け

二段活用と一段活用

 現代語の動詞には、上記の五段活用以外に、一段活用するものがあります。
  起きない 起きます 起きる 起きるとき 起きれば 起きろ  上一段活用
  受けない 受けます 受ける 受けるとき 受ければ 受けろ  下一段活用

 ところが、これらの動詞は、古語では、終止形が「起く」「受く」となり、「き、く」「け、く」の二段活用となります。

 二段活用の終止形は、簡潔なため、詩歌に用いると、魅力的です。

 「古典文法ハンドブック」のコラムに、以下のエピソードが紹介されています。

 童謡の「春の小川」の冒頭は、もともと、「春の小川はさらさら流る」でしたが、
現代語の「流れる」にすると、一文字増えて、リズムがずれてしまうので、
「行くよ」に、変えたのだそうです。

 二段活用の動詞、「起く」「受く」などは、現代語では、一段活用「起きる」「受ける」となりましたので、
現代語には二段活用の動詞は存在しません。

連体形が終止形として多用されるようになったというような歴史的経緯があるのだと思いますが、別の項であらためて、問題にします。

 古語にも、「着る」「似る」「見る」「居る」のような上一段活用の動詞も存在していました。
また、下一段活用の動詞として「蹴る」の一語があります。

 以下に、上二段活用と、下二段活用の動詞の活用について、整理しておきます。

上二段活用

古語  起きず  起きたり  起く  起くる時  起くれども  起きよ
現代語 起きない 起きます  起きる 起きる時  起きれば   起きろ   上一段活用

古語  過ぎず  過ぎたり  過る  過ぐる時  過ぐれども  過ぎよ
現代語 過ぎない 過ぎます  過ぎる 過ぎる時  過ぎれば   過ぎろ   上一段活用

古語  落ちず  落ちたり  落つ  落つる時  落つれども  落ちよ
現代語 落ちない 落ちます  落ちる 落ちる時  落ちれば   落ちろ   上一段活用

古語  滅びず  滅びたり  滅ぶ  滅ぶる時  滅ぶれども  滅びよ
現代語 滅びない 滅びます  滅びる 滅びる時  滅びれば   滅びろ   上一段活用

古語  恨みず  恨みたり  恨む  恨むる時  恨むれども  恨みよ
現代語 恨まず  恨みます  恨む  恨む時   恨めば    恨め    五段活用

古語  恋(こ)ひず 恋ひたり 恋ふ  恋ふる   恋ふれ    恋ひよ
現代語 恋わず        恋う           恋い焦がれるのように複合動詞として用いられるが、単独で用いられることは少ない

参考
古語  乞はず  乞ひたり  乞ふ  乞ふ時   乞へども   乞へ   四段活用

下二段活用

古語  受けず  受けたり  受く   受くる時  受くれども  受けよ
現代語 受けない 受けます  受ける  受ける時  受ければ   受けろ

古語  逃げず  逃げたり  逃ぐ   逃ぐる時  逃ぐれども  逃げよ
現代語 逃げない 逃げます  逃げる  逃げる時  逃げれば   逃げろ

古語  捨てず  捨てたり  捨つ   捨つる時  捨つれども  捨てよ
現代語 捨てない 捨てます  捨てる  捨てる時  捨てれば   捨てろ

特殊
古語  得(え)ず 得たり   得(う)  得る時   得れば    得(え)よ
古語  寝(ね)ず 寝たり   寝(ぬ)  寝る時   寝れば    寝(ね)よ
古語  経(へ)ず 経たり   経(ふ)  経る時   経れば    経(へ)よ

 

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