デイリー新潮 週刊文春「韓国軍に慰安婦」記事は山口敬之の捏造か (2017.10.31) 

2023.10.01 

 山口敬之(のりゆき)さんは、TBSワシントン支局長だったとき、週刊文春2015年4月2日号に、

歴史的スクープ 韓国軍にベトナム人慰安婦がいた!:米機密公文書が暴く朴槿恵の"急所"

という記事を発表し、TBSから出勤停止処分を受けて異動となり、2016年5月にTBSを退社しました。

 韓国軍にベトナム人慰安婦がいたことは、産経新聞の記事

2017.04.30
韓国軍が数千人ベトナム女性を強姦し、慰安婦にしていた…米国メディア「日本より先に謝罪すべきだ」
https://www.sankei.com/article/20170430-PX3TUPJBMJNYVOGUN6K7MOGXDY/

もあり、事実かと思っていたのですが、デイリー新潮が、反対の論陣を張っているのに気づき、
その内容を検討するために、この頁を作成しました。

 以下に、公開されているデイリー新潮の記事を再録します。
図表などは、元サイトをご参照ください。

 元記事は、検証1 から検証4 まで、4つに分かれていて、読みにくいので、一つにまとめました。

2017.10.31
デイリー新潮 週刊文春「韓国軍に慰安婦」記事は山口敬之の捏造か 【検証1】
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/10310801/?all=1

週刊文春「韓国軍に慰安婦」記事は山口記者の捏造か(1)

 山口敬之・元TBSワシントン支局長にレイプされたと訴えてきた伊藤詩織さん。
彼女は10月18日、その全てを綴ったノンフィクション『Black Box』を文藝春秋から刊行した。
そんな折も折、山口元支局長が週刊文春に寄稿した
「韓国軍に慰安婦」というスクープに捏造疑惑が持ち上がったのである。

 この記事は、TBSワシントン支局長時代の山口敬之氏(51)が週刊文春に〈歴史的スクープ 韓国軍にベトナム人慰安婦がいた! 米機密公文書が暴く朴槿恵の“急所”〉(2015年4月2日号)というタイトルで寄せた記事の捏造を告発するものだ。

 表にあるように、韓国からの慰安婦問題に関する圧力は常軌を逸したもので、爆弾を抱えた膝をネチネチ攻められるレスラーのように安倍外交は立ち往生を余儀なくされていた。

 当然のことながら、韓国の欺瞞をひるむことなく突くジャーナリストの登場は、時代の要請であった。
だからこそ、
山口氏はこの記事を手に保守派の論客として頭角を現し、翌年に上梓した『総理』で安倍晋三首相に最も近い記者の“栄光”を勝ち得ることができたのだ。

しかし、その道の先達である本田靖春は、
「平凡な言い方にしかならないが、ジャーナリストの使命は、自らを権力と対置させるところから始まる」
と書いている。

だとすると総理べったり記者への道は、ジャーナリストの使命の始まりか、終わりかを云々するまでもないということになる。

「山口記事」の概略

 本記事の要旨は、安倍外交の援護射撃たるべく放たれた「山口記事」において、公文書を歪曲し、取材相手のコメントを捏造した疑惑が持ち上がっているということだ。

そして、山口氏からのレイプ被害を訴えてきた
伊藤詩織さん(28)が、警視庁刑事部長による逮捕状の差し止めなど、社会が包摂するブラックボックスに斬りこんだと謳う『Black Box』(文藝春秋)を本名で上梓したことと無縁ではない。
その関連については、後章に譲る。

 まず、山口記事の紹介から始めよう。全体7ページのうち彼の寄稿分は5ページ半。残りは編集部のベトナム現地取材によるもの。

 記事は、山口氏自身が見つけた公文書が、韓国軍にベトナム人慰安婦がいたと断定しており、裏付けの補強取材の対象となった人々もインタビューでそれを証言している――そんな内容である。

 もう少し詳しく見てみると、概略は以下の通りである。

(1)韓国では植民地時代に日本に協力した者を糾弾する法律が成立している。
日本軍(編集部註:正しくは満州国軍)の将校だった朴正熙元大統領を父に持つがゆえに、朴槿恵大統領はその親日イメージに苦しめられてきた。

(2)「ある外交関係者」が山口氏にこう告げる。
「日本批判を続ける事が朴大統領のレゾンデートルとなって、慰安婦問題が彼女自らの反日姿勢を証明するツールとなった」

「ベトナム戦争当時、韓国軍が南ベトナム各地で慰安所を経営していたという未確認の情報がある。
これをアメリカ政府の資料等によって裏付ける事ができれば、慰安婦問題において韓国に『加害者』の側面が加わる事になる」

(3)全米各地に眠る公文書から、「韓国兵専用の慰安所がある」と米軍当局が断定する文書を発見する。

(4)証言者のインタビューによって裏付けを得て、韓国の方こそ歴史を直視すべきだと山口記者は訴える。

 山口氏は(3)で発見した瞬間をこう記述している。

〈7月25日深夜。誰もいない支局の小部屋で、いつものように犯罪記録の公文書を一枚一枚剥ぐように読み込んでいると、一通の書簡に行き当たった〉

 彼の眼前に現れたのは、〈サイゴン(現ホーチミン市)の米軍司令部から韓国軍ベトナム指揮官に送られた〉文書で、米軍需物資の横流しに韓国兵が関与していることを指摘していた。

米軍などが捜査を行なって、その結果を、次のように記していた。
〈「
この施設は、韓国軍による、韓国兵専用の慰安所(Welfare Center)である
驚いて何度も読み返したが、米軍司令部がこの施設を「韓国軍の韓国兵のための慰安所」であると捜査に基づいてそう断定している〉

 一見、理路整然とし、綻びがないように映る原稿にはその実、嘘や勘違い、そして捏造が絡み合っている。ではここからは具体的な証言を基に、それを解きほぐしていくことにしたい。

発見はリサーチャー

 山口氏は自身が〈各地の米軍基地付属の図書館や資料館を訪れたり、リサーチャーを派遣した〉としているが、当のリサーチャーを務めたグリーン誠子氏は、

調査は私ひとりが担当しました。その歩みの中にすっぽりとご自分の姿を置き換えており、記事はひどいと思いました。文春が出た後に山口さんにお会いしましたけれど、“自分だけがやったように書きすぎた”と仰っていました

 と振り返る。だから、支局長が全米各地を回ったという記述についても、彼女の言葉を借りれば、

ふふふ。いつやったんでしょうね。山口さんが該当の公文書館を訪れたのは秋深まる頃(註:14年10月22日)で、彼はこの時に初めて『リサーチャーID』を作っております

 となるわけだ。

 ちょっと調べて頂きたいことがある――。こんな風に山口氏から彼女に連絡があったのは、14年の春さきのことである。話を聞くと、

「慰安婦問題じゃなくてベトナム戦争時に韓国軍がやった虐殺問題についてでした。本当に気が重かったですが、公文書館に行って国務省の資料に沿って調べてみたら突然、韓国兵がけしからぬ場所でいかがわしい行為に耽る、そういった情報関係のものが出て来た」

 これを基に文春記事のベースとなる公文書に行きついたのはその年の夏。
山口氏は日付まで挙げ、目を皿のようにして公文書を発見したことになっているが、発見したのはグリーン氏だ。

 つまり、ある外交関係者の示唆などではなく、リサーチャーが公文書を見つけたことで、山口氏は待望の慰安婦問題に図らずも辿りつけたという恰好なのだ。

「山口さんはこれを読み、韓国軍が経営している慰安所という理解でいいのかと私に聞きました。
これに対して“そう思います”とお答えしたのをはっきり覚えています。
同盟国の軍隊、しかも米軍の先を行き、一番危険な任務を帯びていたほどの国の司令部に、このような“手紙”を出すのは特殊なこと。
米軍側がそうせざるを得なかったのは、余程のことがわかったからではないでしょうか」(同)

 他方、彼女はこうも忠告していた。

「公文書を送った米国側の高官たちが生存しているなら取材のアポイントを取るべき。
それが無理なら現存する米政府内の担当省庁の高官たちに取材し、資料を示してその内容の深さを推し量ってもらいたい、とね」

 支局長が取った行動は後述するとして、公文書は何を伝え、何を語っていないのか、その顔かたちに迫っていかねばなるまい。

2017.10.31
山口敬之の「韓国軍に慰安婦」捏造疑惑 根拠となった米公文書を“意図的に読み換え”?【検証2】
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/10310802/?all=1

週刊文春「韓国軍に慰安婦」記事は山口記者の捏造か(2)

TBSワシントン支局長時代の山口敬之氏(51)が週刊文春に寄稿した「韓国軍に慰安婦」記事(2015年4月2日号)に浮上する捏造疑惑。
リサーチャーを務めたグリーン誠子氏が、記事のベースとなる米国公文書を発見したのは14年夏のことだった。

「山口さんはこれを読み、韓国軍が経営している慰安所という理解でいいのかと私に聞きました。
これに対して“そう思います”とお答えしたのをはっきり覚えています。
同盟国の軍隊、しかも米軍の先を行き、一番危険な任務を帯びていたほどの国の司令部に、このような“手紙”を出すのは特殊なこと。米軍側がそうせざるを得なかったのは、余程のことがわかったからではないでしょうか」(グリーン氏)

 他方、彼女はこうも忠告していた。

「公文書を送った米国側の高官たちが生存しているなら取材のアポイントを取るべき。
それが無理なら現存する米政府内の担当省庁の高官たちに取材し、資料を示してその内容の深さを推し量ってもらいたい、とね」

 ***

 グリーン氏が発掘したその文書は、ワシントン市街からシャトルバスで40分ほど走った米国国立公文書館2号館、通称「アーカイブII」に存在する。

 時期は1969年、宛先は韓国軍ベトナム指揮官・蔡命新中将。
全文とその邦訳は配信中記事「山口敬之の“韓国軍に慰安婦”捏造疑惑 米公文書を全文公開」にて紹介するが、中身は次のような米当局の捜査報告書だ。

・無許可で離隊した米兵が通貨不正取引に関わった。
調査すると、会合場所がサイゴンのトルコ風呂(註:公文書中では「ターキッシュバス」と表記)という施設だとわかった。

・手入れの結果、駐屯地売店で取扱う大量の免税品を押収。
韓国軍のトラックが駐屯地売店から横流しされた米国製ビールを荷下ろしするのも目撃された。

・トルコ風呂の所有者は、ベトナム駐屯韓国軍特別サービス補佐官の大佐の署名が入った文書を提出した。
そこでは、トルコ風呂は韓国軍のみに便益を提供する韓国軍福利センターだと述べられている。
また、押収された物品の返還を求め、韓国防諜部隊長の大佐が署名をした文書も提出された。

・米国側捜査官らは米軍関係者の施設への関与を明らかにしようと、ベトナム関税警察と協力して調査した。

〈調査の進展とともに明らかになった事実は、以下の通りである〉として、こう続く。

・トルコ風呂は韓国軍のみの便益のために営業していたわけではない。
むしろ一般に開かれたものであると思われ、ベトナム国籍を有する者は除くものの、一般大衆にもサービスを提供しているようである。

・ベトナム人ホステスが“サイゴンティー”を買うように薦め、夜は売春が行なわれている。料金は38ドル。

 そして文書は、違法行為に加担した韓国軍大佐ら6名、米兵ら3名を名指しして終わっている。

慰安所という言葉はない

 公文書に精通し、近著に『こうして歴史問題は捏造される』(新潮新書)がある、有馬哲夫・早大社会科学部/大学院社会科学研究科教授は一連の資料を実際に現地で確認して、

「大多数はブラックマーケットに関する文書でした。
当時、ベトナムにいたアメリカ軍を悩ませていたのは、兵士の薬物中毒と経済犯罪だったことが、他の文書からもわかりました」

 としたうえで、当該文書をこう解説する。

「このトルコ風呂経営者の言い分は“ウチのところは韓国軍専用なので基地の中と同じようにドルを使って兵士への支給品を売り買いしてもいいのだ”というものです。
それに対して、米捜査官は“調べたが、韓国軍専用ではなく、一般向けの売春施設だ。
だから韓国軍大佐が書類を作ってもサインしても、
韓国軍専用だったという事実はない”と指摘しています」 

 山口記事は、〈押収資料の中から、韓国兵の福利厚生を担当する特務部次長(註:「福利厚生を担当する特務部次長」についてのウェブ取材班訳は「特別サービス補佐官」)の任にあった韓国軍大佐の署名入りの書類が見つかり、その書類に韓国軍による韓国兵専用の慰安所であると示されている事〉が韓国の慰安所と指摘された根拠の1つだとする。

「公文書全文を読んでも慰安所(Military Brothels)や慰安婦(Comfort Women/Military Prostitutes)という言葉が出てきません。
トルコ風呂(Turkish Bath)や韓国軍福利センター(a Republic of Korea Army Welfare Center)を慰安所と、単なる売春婦(prostitutes)を慰安婦と言い換えてしまっています」(同)

 そうすると分かるのは、

「この公文書は、.▲瓮螢軍の物資が勝手に売り捌かれていたり、その取引にドルが不正に使われていたりしたという経済犯罪の捜査に関連したものであり、∩楮困亡慙△靴董▲戰肇淵狎粘愿局が不正取引の温床になっている『トルコ風呂』を捜索したことがわかる米軍当局の文書(韓国軍幹部に宛てた手紙)だということです。
確かに、文書にはその施設で売春が行なわれていた記述はあります。
しかし問題となるのは、それが慰安所なのか一般の売春宿(と変わらないもの)なのかという点です」(同)

 繰り返すが、公文書には慰安所という言葉はない。

「慰安所という言葉を使うのであれば、その施設に軍医や憲兵がいるなど、きちんと軍が運営管理していた実態を把握する必要があります。
しかし、公文書からはそうした事実は読み取れません。
逆に一般に開かれた施設であることを文書は証明しているので、軍事売春所、つまり山口氏の読み換えた慰安所ということも完全に否定されます。
一般大衆に開かれていては性病予防が徹底できず軍用にふさわしくない。
文書にそうあり、その要旨からもあり得ないのに、山口氏は故意に無視しており、捏造と言われても仕方がないでしょう。
旧日本軍の場合、慰安所の管理体制を示す資料がありますが、この公文書にはそうしたものは何もないのです」(同)

 山口氏は韓国軍の関与について、文書の前半の〈韓国軍のみに便益を提供する〉という部分を論拠に挙げている。
しかし、

「その後の文章で“そのトルコ風呂は韓国駐屯軍のみの便益のために営業していたわけではない”“大衆にもサービスを提供する一般に開かれた施設である”と記されている通り、公文書は施設が韓国兵専用であったことを否定しているのです」(同)

 煎じ詰めると、トルコ風呂が売春宿としても利用されていたことは確かだが、公文書からはそれが韓国兵専用であったとは読み取れないし、仮に韓国兵専用の売春宿であったとしても軍が施設を運営管理した事実が記されていない。

従って、
「この公文書から“韓国軍の慰安所がベトナムにあった”という事実を導くことはできません」(同)
と結論付けるのだった。

2017.10.31
「韓国軍に慰安婦」記事、証言者は山口敬之に憤り 「言っていないことを私の発言に…」【検証3】
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/10310803/?all=1

週刊文春「韓国軍に慰安婦」記事は山口記者の捏造か(3)

 TBSワシントン支局長時代の山口敬之氏(51)が週刊文春に寄せた「韓国軍に慰安婦」記事(2015年4月2日号)のベースとなったのは、韓国軍のベトナム指揮官に宛てられた米当局の捜査報告書である。これを“発見”した山口氏は〈韓国軍大佐の署名入りの書類が見つかり、その書類に韓国軍による韓国兵専用の慰安所であると示されている事〉が“韓国の慰安所”の根拠の1つだとしている。

 だが、公文書に精通する有馬哲夫・早大社会科学部/大学院社会科学研究科教授が文書を読み解くと、“トルコ風呂”や“韓国軍福利センター”を“慰安所”と、“売春婦”を“慰安婦”と言い換えていると指摘。「この公文書から“韓国軍の慰安所がベトナムにあった”という事実を導くことはできません」と結論付けるのだ。

 ***

 公文書には問題の施設が韓国軍専用ではないと明記されているが、山口氏はそう認識することがなかった
もともと彼はTBSでこの件の報道を目指していた。
しかし、後述するようにそれが叶わず、文春への寄稿となったのだ。

山口氏を中心とするTBS取材班は公文書の“裏取り”をすべく、69年以降にベトナムで従軍した人々に対象を絞って取材依頼のメールを送っていた。
結果、アンドリュー・フィンレイソン氏に辿りつき、14年11月25日に収録を行なっている。

 彼は44年生まれの73歳。66年に米海軍士官学校を卒(お)えた後、26年に亘り海兵隊の主に歩兵部隊で活動した。最終ランクは大佐である。
本誌(「週刊新潮」)はTBSによるインタビューなどの取材データを確認した。
そこではまず、韓国軍による大規模な売春や闇取引の存在について問われているが、フィンレイソン氏は〈私は直接存じておりませんので、お答えすることはできません〉とキッパリ話している。

 この応答だけで、インタビューにふさわしくない相手だというのがよくわかる。
いち早く取材を打ち切って他を当るべきだと元大佐は言外に、とはいえありありと訴えているのだ。

フィンレイソン氏に取材すると…
 ともあれ、本誌もフィンレイソン氏に接触した。TBSの取材データや山口記事の内容を彼にぶつけ、検証を進める。作成した比較表も参照のこと。

 山口記事には、〈サイゴンをはじめ南ベトナム各地を転戦。(中略)韓国軍の実情に詳しかった〉と経歴が披露されているが、

「そんなことは一度も言っていません。私はサイゴンでは戦闘に参加しておらず、現地をよく知っているわけではない。韓国軍海兵隊と過ごしたのも僅か2時間だったと思います」

 TBSの取材において「韓国軍の慰安所」について尋ねられた際に、〈これはサイゴンですね、はい、存じています。この場所について聞いたことがあります〉と答えている。しかし、山口記事だと〈「(中略)確かにサイゴンにありました。よく知っています」〉となってしまっている。今回その点を質すと、

「そんな風には言っていない。彼が私に見せたのは、『韓国軍の福利センター』に関する文書でした。それをなぜ私が覚えているのか。かつて南ベトナム軍事援助司令部から私は、『米国人は立ち入り禁止』の場所についての回覧状を受領したことがあり、そこに同じ名前の施設があったからです。とはいえ、その場所をよく知っていたわけではありません。そこは売春施設だったと思いますが、私は取材時に慰安所(Comfort Station)という言葉を使っていない。そういう用語が出ていたならば、発言に気を付けていたでしょう」

 加えて山口記事ではフィンレイソン氏のコメントとして、

〈「米軍司令官が指摘している韓国の慰安所とは、韓国軍の兵士に奉仕するための大きな性的施設です。韓国兵士にセックスを提供するための施設です。それ以外の何ものでもありません」〉

 と、慰安婦が存在したことを“断言”させているが、

「TBSの取材時に“もともと韓国兵専用として提供されていた”と話しましたが、これが困った点なのです。
そう聞いたことはあっても自分では知らないわけですから。誰がオーナーだったかもわかりません」 

 要するに、大部分は伝聞に基づいた推測なのだ。
だから、ディテールに踏み込むことなどできないのに、山口記事には、〈これらの施設は、内部が多くのブロックに分かれていて〉とか〈「(中略)当時南ベトナムでは性病が深刻な問題になっていて、特に梅毒が蔓延していました」〉などと、元大佐の証言が出てくるのだ。

「ブロックに分かれている? 馬鹿げている。そんなことは言っていない。梅毒とは決して口にしていません。そもそも流行していたのは淋病なのです」

 フィンレイソン氏はそんな風に証言する。更に山口氏は、フィンレイソン氏が一般論でしている話を無理に韓国軍の行状と結びつけ、すり替えている。

「彼のやり方にはとても失望している」
 もっとも、当該施設の利用実態について、元大佐はTBSの取材に対して大要、こう話している。

〈「韓国軍のために立ち上げられたが、サイゴンに彼らはあまりいなかった。保養休暇のために来ることはあってもさほど多くはなく、その売春宿は南ベトナム軍や米軍も使うようになった」〉

 その結果、山口記事ではこんな風になってしまったのだ。

〈「休息期間」でサイゴンに滞在する韓国兵の数は時期や季節によってばらつきがありました。このため、そもそもは韓国兵専用として設立された施設ですが、その数が少ない時期に、友軍の兵士も受け入れるようになっていったのです〉と都合よく利用されてしまっている。この点についても確認すると、

「それについては何も知りません。ただ、発言にはより注意すべきでした」

 と、自身の軽率さを認めたうえで、こう主張する。

「海兵隊の士官の仕事として、メディア対応も頻繁にやってきました。意図的に文脈から切り離したり、言っていないことを私の発言にしようとする人物には一度も遭遇したことがありません。私は取材の最中に何度も言いました。自分は、このことについて、自分の目や耳で確かめた情報を持っているわけではないということを。だから彼のやり方にはとても失望している。プロのジャーナリストがするとは想定外です」

 山口氏によって都合よく慰安所の証言者に仕立てあげられたフィンレイソン氏は憤るのだった。

 実は元大佐に先立って、山口氏は公文書の解釈を“補強”するため、ベトナム系米国人グエン・ゴック・ビック博士(アジア文学研究)のコメントを取っている。本来なら博士に取材を試みるところだが、博士は昨年3月、鬼籍に入っていた。従ってここでは、14年10月2日に行なわれたTBS取材の収録データと山口記事の比較で見て行く。山口記事は、

〈「犯罪や酷い行為が行われたのならば、それは日本人だろうが韓国人だろうがベトナム人だろうがアメリカ人だろうが、悪いものは悪いのです」〉でコメントを切っているが、実際の取材時には続きが大要こうある。

〈「このようなもの(当該公文書)をあなたは持っていらっしゃるわけですが、何人かの悪い奴による企みからではなく、それが実際に政府の政策であったと言えるようになるには、極めて多くの文書を調査しなければならないのは確実です。そしてそれが政策である場合、明らかにそれは許容されるべきではありません」〉

 これを素直に受け止めるなら、博士の言葉はむしろ山口氏自身に向けられていたのではなかろうか。更に悪いことに記事には、〈「韓国軍がベトナム人に対して酷い事をしたのであれば、ベトナム人はうやむやにすることは絶対にできません」〉などとあるが、博士はTBSの取材にそんなことは口にしていない。

報道するに足る裏付けなし
 いずれにせよ重要なのは、これも元大佐の映像もお蔵入りになったままという事実である。TBS関係者は、

“裏が取れた”ということで映像を東京に出稿したら物言いがついたんです。“これ、ちょっと問題があるんじゃないか”と

 そう背景を打ち明けるし、山口氏のリサーチャーを務めたグリーン誠子氏もこう述懐する。

「山口支局長と東京側の意見が合わなくて、怒鳴り合って電話を切るとか、喧嘩レベルの言い合いがあったと彼自身から聞きました。ちょうど14年秋あたりです」

 実際、TBSに聞くと、

報道するに足る十分な裏付けがないと判断し、放送はしていません

 報じなかった理由を説明するのは極めて稀なことで、再びグリーン氏によると、

「山口さんは“TBSで放送できないなら、また別の方法を考えてやりますから、あなたがしてくださったリサーチは無駄にしませんよ”と言っていましたね」

 その言葉の意味を彼女が知るのは、明くる年3月26日の文春記事掲載まで待たねばならなかった。

「記事を読んで頭に過(よぎ)ったのは、リサーチ結果を待っていたのは政府の人間だったかもしれない、ということでした」(同)

 彼女の鼻をついた政治的な臭いは、例えばあるメールボックスから放たれたものではなかったか。

2017.10.31
安倍総理を援護したくて虚報発信! 「韓国軍に慰安婦」記事 山口敬之と公使のメール公開【検証4】
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/10310804/?all=1

週刊文春「韓国軍に慰安婦」記事は山口記者の捏造か(4)

 ここまで見てきた通り、TBSワシントン支局長時代の山口敬之氏(51)が週刊文春に寄稿した〈歴史的スクープ 韓国軍にベトナム人慰安婦がいた! 米機密公文書が暴く朴槿恵の“急所”〉(2015年4月2日号)には、根拠とした米公文書の“言い換え”や、関係者が話していない内容をコメントとして使用した痕跡が見られる。

 当初は映像の形で報じられるはずであったが、「報道するに足る十分な裏付けがないと判断し、放送はしていません」(TBS)となり、文春に掲載された記事。公文書のリサーチャーを務めたグリーン誠子氏は「記事を読んで頭に過(よぎ)ったのは、リサーチ結果を待っていたのは政府の人間だったかもしれない、ということでした」と語る。「詩織さん」準強姦逮捕状の男の、もう一つの“罪”――。

 ***

 掲載の写真は山口氏が当時の山田重夫駐米公使と交わしたメールのやりとりで、時々【Cc欄】に佐々江賢一郎駐米大使も登場する。記事のゲラや公文書のコピーを山田公使宛に届け始めた3月24日午後(現地時間)からの流れは概略はこうだ。

公使:東京で官房長官記者会見で質問が出るなど、報道が出た段階で国務省に根回しするようにします。

山口:産経記者が明日の朝刊で展開してから、午前の官房長官会見で質問する事になりました。菅さんは、「20世紀に行われた人権侵害は、いつの時代のどの地域で起きたものでも、しっかり検証していくべきである」という昨年の安倍総理の国連演説に沿ったラインで答弁します。明日木曜日の国務省会見で聞いても大丈夫ですか?(25日朝)

答え、楽しみですね

 官邸とすり合わせが済んだことをメールは物語っている。
代わって公使はその日午後に関連資料を携えて国務省を訪れ、説明を済ませた。
文春発売当日26日午後、山口氏は国務省の広報官会見用に4つの質問を並べ、公使の指導を仰ぐ。
最後の【Q4】には、〈朴大統領は昨年の国連総会で「戦時の女性に対する性暴力は、時代や地域を問わず、明らかに人権と人道主義に反する行為だ」と演説したが、韓国政府の自主的な調査を期待するか?〉とある。

公使:これで良いと思います。Q4への答え、楽しみですね。

山口:頑張ります。大変お手数とご迷惑をおかけしている山田公使に喜んでいただける答弁が引き出せたら嬉しいのですが…

 その直後に国務省で行なわれた会見。サウジアラビアによるイエメン侵攻について各国記者が尋ねる中、支局長ではないTBSの人間が割って入った。

TBS:(文春)記事が言及しているベトナム戦争における韓国軍の慰安所に関する公文書は読んだか?

広報官:公文書があったことは承知しているが、まだきちんと読んでいないし、検証もしていない。

 TBS記者は山田公使期待の【Q4】を重ねたものの、広報官は「私の立場から何も言うことはない。他のテーマの質問は?」と倦(う)むように話題を打ち切る。

 直後の2人のやりとりは、

公使:先方の応答、ちょっと迫力が弱いですが、記事を確認するとともに、少なくとも本件と慰安婦問題が同じ種類の問題であると位置づけていることは、意味がありますね。

山口:会見が三番旗(略)だったので力弱いですが、少しは喋ってくれました。

 それは安倍外交を援護したかったが故の共同作業が成就せず意気消沈していた、ひとつの証明である。

文春、山口氏の回答は…

 ちょうどその頃、山口氏に対して、TBS本社からの“召還命令”が届いていたとされる。
それは、本社が認めなかったものを他媒体で紹介したことについて東京側は事情聴取を行いたかったからである。
彼が東京港区の「シェラトン都ホテル東京」に滞在したのは4月1日から4日午前まで。
帰国中の3日夜から4日未明にかけて詩織さんはレイプされた。
就職の相談のはずが飲食店に2人きりで誘われ、2軒目で詩織さんは意識を喪失。
下腹部の痛みで目覚めた時には、ワシントン支局長に組み敷かれていたのだった。
3月26日発売の文春記事がなければ召還も、望まぬ行為に巻き込まれることもなかった。
公文書捏造という“罪”が背徳行為を誘発したということになる。

 文春に聞くと、「真実性、少なくとも真実相当性があると判断し、記事掲載に至りました」とし、逆に、「戦時下のベトナムにおいて、ベトナム国民は使用を認められていない施設が〈一般大衆にサービスを提供する一般に開かれた施設〉との(新潮の)指摘には、無理があり」と主張する。
しかし、公文書そのものが〈一般大衆にサービスを提供する一般に開かれた施設〉と言っているのだ。

 他方、山口氏は、

「(公文書にあるのは)『当初は韓国軍専用の慰安所だったが、(調べてみたら)他の人も使えるようになっていることが分かった』という事です。
要するにアメリカ軍司令官は、週刊文春のタイトル通り『韓国軍の慰安所があった』と断定しているのです。
韓国兵のための慰安所を、他の友軍の兵士や関係者に使わせていたからと言って、そこが韓国軍の慰安所ではなかったということにはなりません」

 公文書の該当部分は、捜査対象となったトルコ風呂所有者の“主張”に過ぎない。
“事実”は、捜査の結果、そのトルコ風呂が韓国駐屯軍の便益のためだけに営業していたわけではなく、ベトナム国籍を有する者は除くが、一般大衆にもサービスを提供する開かれた施設であると思われるということだ。

 加えて「そこが韓国軍の慰安所ではなかったということにはなりません」と山口氏は言うが、問題は韓国軍の慰安所だったと証明する箇所がこの公文書に全く見当たらないことにある。
また、彼の回答には「他の人も使えるようになっていることが分かった」とあるが、公文書にそうあると元の原稿では1文字も触れていない。
元大佐らのコメント捏造問題については、確認に時間がかかるとし、期限内に回答しなかった。

韓国軍の問題を“利用”

 有馬哲夫・早大社会科学部/大学院社会科学研究科教授が断じる。

「最初に“韓国の軍隊も、実はベトナムで日本と同じように慰安所を運営していた”と見立てていたのだと思いますが、そういう先入観は抜きにして資料を読まなくてはなりません。
そもそも韓国軍はサイゴンを軍事占領していたわけではないので、現地に軍事売春所は作れません。
旧日本軍の慰安所は、レイプと性病を防ぐために戦地と軍事占領地に作られた軍専用のもので、軍の管理があったという点で内地の一般向けの売春所とは違うのです」

 次にベトナム戦争における韓国軍の問題に触れて、

韓国兵がベトナムの村に行って、多くの女性を監禁、レイプした問題こそ戦争犯罪、人道に反する罪として問われるべきだと私は思っています。
今でも、多くのベトナムの女性が私生児を抱えて苦しんでいる。
しかし山口氏は、韓国政府が過去の日本軍の慰安婦問題について繰り返し言及することに対して反論するためだけに、今回問題になっている話を報じたかったのではないでしょうか

 ***

週刊新潮WEB取材班

 本件について、まだ、詳細には理解できていませんので、コメントは、あらためてすることにします。

 

ご意見等がありましたら、think0298(@マーク)ybb.ne.jp におよせいただければ、幸いです。

 ホームページアドレス: https://think0298.stars.ne.jp